第290話 終わり
王妃が倒れると、シルヴィが王妃に近づき、腰を下ろした。
「亡くなってます」
シルヴィが首を横に振りながら告げてくる。
「そうか……シルヴィ、お前はリーシャ達を宿屋に送れ。その後にイアンを連れてこい」
「かしこまりました」
リーシャとティーナは何も言わずにシルヴィの前に立つと、影に入っていく。
そして、シルヴィは秘密の抜け道がある部屋に入っていった。
俺は壁まで行き、背中を預けると、待つことにする。
かなり長い時間を待っていると、シルヴィがイアンを連れて戻ってきた。
イアンは俺をチラッと見たが、何も言わずに王妃のもとに行き、腰を下ろす。
「話は聞いたか?」
俺はそんなイアンに声をかけた。
「聞いたよ。実は今朝、母上に説明したんだけど、えらく混乱していた。そして、夕方になると、姿が見えなくなっていたよ」
「どうする?」
「どうしようもないね。陛下も王妃も死んだ。それだけさ」
イアンが立ち上がる。
「同時に死ぬのはさすがに怪しいだろ」
「事故死で片付けるしかない。2人で歩いている時に階段から落ちたとかそういうのでいい」
「遺体はどうする? 王妃はともかく、父上は灰だぞ」
「生前の遺言ということで葬儀はなし」
苦しいな……
「納得すると思うか? 簒奪を疑われるぞ」
「好きに思わせておけばいい。貴族共はカークランドとスミュールがどうにかするし、民衆はすぐに忘れる」
まあ、そうするしかないか。
「王妃の一族は?」
「私が適当に誤魔化す。重臣共もなんとかしよう。兄上はただ私を王と認めると言ってください。後はこちらでやります」
「苦労をかけるな」
「いえ…………私がはっきり言っておけば、こうなってはいなかったです」
イアンが王妃の亡骸を見る。
「イアン、あまり思いつめるなよ」
「わかっています。それどころではないでしょうからね。当分は兄上にも働いてもらいます」
まあ、仕方がないだろう。
「わかった」
「では、兄上達はスミュールの屋敷にでも待機してください。私が重臣達に話します。近いうちに使者を送りますので」
「任せてもいいのか?」
「兄上が話すよりかはいいでしょう。兄上達は廃嫡されたことに拗ねて、ウォルターに遊びに行っていたとでも言ってください」
アホだな。
まあ、それでいいか。
「じゃあ、後は任せるわ」
「遺体を回収できますか? どこかに埋めてもらいたいです」
「私にお任せを。イーストン家が責任を持って弔いましょう」
シルヴィがイアンに向かって跪く。
「イーストンか……任せる」
イーストンは信頼できる家だし、親族だ。
イーストンに任せておけば問題ないだろう。
「はっ!」
シルヴィは返事をすると、王妃の遺体と父上の灰を空間魔法に回収する。
「シルヴィ、帰るぞ」
「はい」
俺とシルヴィは後のことをイアンに任せると、秘密の抜け道を使って宿屋に戻ることにした。
◆◇◆
俺達が宿屋に戻ると、すでに遅い時間だというのに3人は起きて、待っていた。
「どうなった?」
テーブルについているリーシャが代表して聞いてくる。
「後のことはイアンに任せた。俺達は明日からお前の家で待機」
「そう…………確認だけど、今回のことは王妃様が黒幕という認識でいいのよね?」
「黒幕は教国の強硬派だ。王妃はたぶらかされただけ。あの人は箱入りだからな」
王妃は美しいと評判の令嬢であり、父上に見初められて嫁いだらしい。
だが、正直、頭はよくない。
王家に嫁ぐのにそれで大丈夫かという声もあったらしいが、父上が強行したことと側室だったことで重臣共も許可をした。
しかし、正室である俺の母親が死に、急遽、側室から王妃になった。
その結果がこれだ。
「正直に言えば、王妃に相応しくない人だったわね。妻としても……」
こいつらにとってはありえないだろう。
「だろうな。だが、故人のことは触れるな。運悪くそうなっただけだし、お前らはそうはならん」
リーシャもマリアも黒魔術に手を出すことはない。
手を出しても俺がすぐに感知するし、止める。
「やるならあなただものね。というか、メイドも含め、やってるわね」
「俺達はあんなことにはならん」
「どうだか……」
あれは魔力が低く、制御できない者がなる。
俺もシルヴィも問題ない。
「一番やりそうなのはお前だ。永遠の若さが手に入ると言われれば手を出しそうだわ」
リーシャの一番の自慢は見た目だし。
「失礼ね。私は年を取っても美しいわ」
そうだろうけど、加齢による劣化に耐えられないのが女だ。
うん……ラウラに見張らせておこう。
「殿下、これからどうなるんです?」
マリアが聞いてくる。
「予定通りだ。イアンが王となり、俺が副王だ。予定以上に働かないといけないがな……」
王妃が死んだことで王族が俺とイアンだけになってしまった。
「まあ、今は待機ね。今日は休んで明日、私の家に行きましょう。マリア、我慢なさい」
マリアは嫌だろうな……
側室だし、格下の家だし、針の筵だろう。
「はーい……」
可哀想だ。
「シルヴィ、何とかしろ」
「……と言いますと?」
「お前がヘイトを集めろ。マリアの盾になれ。得意だろ」
仲の悪いスミュールを挑発でもしてくれ。
「とんでもないことを言う……」
頑張ってくれ!
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