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廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~  作者: 出雲大吉
最終章

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288/292

第288話 狼男


「何これ?」


 目の前にいる狼男を見たリーシャが聞いてくる。


「魔法に捕らわれ、魔力が暴走した結果だな。もはや助からん」


 そう言うと、リーシャが剣を構えた。


「まあ、モンスターみたいなものか……シルヴィさん、ロイドをお願い」


 リーシャを見たティーナも剣を構えると、俺達に下がるように言う。


「ささ、殿下、犬退治は犬と盛りのついた雌犬に任せましょう」


 シルヴィがそう言いながら俺を後ろに引っ張っていった。


「誰が盛りのついた雌犬……よ!」


 リーシャが文句を言いながら踏み込み、狼男に向かって剣を振るう。

 だが、狼男はいとも簡単にリーシャの一閃を躱した。


「くっ! 速いっ!」


 リーシャが悪態をついていると、ティーナが避けた狼男に向かって突く。

 ティーナが放った突きは狼肉の胸に当たった。


「固っ! 刺さんないし! って、ひえっ!」


 突きを受けた狼男はティーナに向かって鋭い爪を立てて、切り裂くが、ティーナは躱し、距離を取る。


「ティーナさんの安物の剣では無理ですね」


 さっきのティーナの攻撃を見ていたシルヴィが頷いた。


「買ってやれば良かったな」


 ふさわしいのを用意するべきだった。


「どうすればいいのー? 私、また役立たずー?」


 そういやティーナって、ミレーでレナルド・アーネットとやった時も見てるだけで何もしてなかったな。


「あなたは下がってなさいっ!」


 リーシャが再び、狼男に向かって踏み込むと、すさまじいスピードで突く。

 狼男はリーシャの剣は警戒しているようで身体を捻り、躱した。

 だが、リーシャは突いた体勢から身体を回転させ、斬り上げる。

 すると、狼男の胴体から血が噴き出た。


「リーシャ様、凄すぎ。というか、私、何のために雇われたんだろう?」


 ティーナが俺達のもとに来ると、リーシャを称賛しつつ、落ち込む。


「剣を貸せ」


 俺はティーナに向かって、手を差し出した。


「ロイドじゃ無理だよ」

「知ってるわ! いいからさっさと貸せ!」


 怒鳴ると、ティーナが剣を渡してくる。


「ちなみに聞くが、これ、誰かの形見とかじゃないよな?」

「ただの安もんの剣。金貨3枚」


 安っす!

 今度買ってやろう。


「じゃあ、問題ないな」


 俺は受け取った剣を強く握ると、剣に魔力を込めた。

 すると、剣がぼんやり光り始める。


「え? 光ってる……何それ?」

「剣の威力を上げる魔法とでも思っておけ。ほら」


 ティーナに剣を渡した。


「すごい! そんなことができるの!?」


 剣を受け取ったティーナは興奮して聞いてくる。


「威力は上がるが、その分、もろくなる。確実にやれる時に振れ」

「わかった! 行くぞー!」


 ティーナは何をわかったかわからないが、狼男に突っ込んでいく。


「バカ犬……」

「尻尾を振ってますね」

『大丈夫ですかねー?』


 あ、マリアを忘れてた。


 突っ込んでいったティーナはリーシャの剣をバックステップで躱した狼男目掛けて斬りかかろうとする。

 すると、狼男はティーナをチラッと見たが、すぐにリーシャに目線を移した。


「とりゃー!」


 狼男はティーナが斬りかかっても動かない。

 すると、ティーナの剣が狼男の右腕に当たり、そのまま切り落とした。


「――グッ! グガーッ!」


 狼男は一瞬、怯んだが、すぐに立ち直ると、ティーナを残っている左手で払う。

 だが、すでにティーナは距離を置いており、空振りに終わった。


『なんでティーナさんの剣は避けなかったんですかね?』


 シルヴィの影にいるマリアが念話で聞いてくる。


「多分、リーシャというか、俺の剣を知っているからだろ。何しろ、あれは父上からもらったやつだし」


 自分で贈ったものだから上級品なことはわかっている。

 だが、ティーナの剣は安物。

 だから避けるまでもないと思って、受けたんだ。


「武器を強化する魔法を知らなかったんですねー」


 だと思う。


『そういう意識が残っているんですか?』

「いいえ。残っていません。ほぼ本能でしょう」


 シルヴィが言うように獣になって僅かに残っている記憶から引っ張り出したに過ぎない。

 そして、それがあだになった。


「よし、とどめを刺してやろう」


 俺は杖を狼男に向ける。


「まだ致命傷ではありません。普通に躱されますよ?」


 シルヴィが忠告してきた。


「お前、あの血を固めろ」


 リーシャと対峙している狼男の足元には血が溜まっている。


「なるほど……配下のメイドに黒魔術を使わせ、自分は良いとこ取りですか?」

「お前も王をやるのは辛かろう?」


 自国の王だ。


「はいはい……では、いきます」


 シルヴィは何とも思ってなさそうだが、素直に頷き、手をかかげた。


「やれ」


 俺が命令すると、狼男の足元の血がうごめきだす。

 狼男はそんな足元に気付き、跳ぼうとしたが、動き出した血が狼男の足に絡みつく方が速かった。


「グッ! グルッ!」


 狼男は必死に脱出しようと暴れているが、血の拘束から逃れることができない。


『…………なんで普通に黒魔術を使っているんですかね?』


 マリアがポツリとつぶやく。


「私はプロフェッショナルだから問題ないのです」

『なんか殿下やアシュリー様と同じようなことを言っていますね…………あ、3人共、血が繋がっている』


 又従姉だからかなり離れているがな。


「今はそんなことはどうでもいいでしょう。殿下、拘束しましたのでどうぞ」


 俺はお膳立てされたので杖を暴れている狼男に向ける。


「リーシャ、下がれ!」


 暴れている狼男の隙を窺っているリーシャに指示をすると、リーシャはバックステップで狼男から距離を取った。


「さようなら、父上…………あんたが飲み屋のねーちゃんと宿屋にしけこんでいたのは黙っておいてやるからな……フレア!」


 俺が魔法を放つと、杖の先から火の塊が狼男に向かって飛んでいく。

 動けない狼男ではこれを躱すことができず、身体に直撃し、爆発した。

 そして、狼男は膝をつくと、前のめりに倒れる。


「ロイドの魔法は本当にすごいねー」


 ティーナが感心しながら頷いた。


「まあな…………」


 俺はドヤ顔をしようと思ったのだが、やめた。

 何故なら、狼男が立ち上がったから。


「グッ……」


 狼男は片腕もなく、黒い毛だから焼けているかはわからないが、フラフラしながらも立ち上がった。

 そして、俺を見てくる。


「ロ、ロイド……!」


 狼男が俺の名をつぶやきながら腰を落とした。


「あ」


 シルヴィが声を出す。

 理由はわかっている。

 拘束していた血が俺の炎で焼けてしまっているのだ。


「チッ!」


 俺は慌てて杖を構えるが、それと同時に狼男が突っ込んでくる。

 どう考えても向こうの方が速そうだった。

 だが、狼男が俺に到達することない。


 理由は簡単。

 狼男の後ろには金色に輝く絶世の女が跳んでいたからだ。


「私に背を向けるとはいい度胸ね」


 リーシャはその美しい顔でニヤリと笑うと、剣を横に振る。

 すると、狼男の首が横に飛んでいき、狼男は動きを止め、崩れ落ちた。


「リーシャ様、かっこいい!」

『すごいですー!』


 ティーナとマリアの称賛を受けたリーシャは床に着地すると、剣を振り、血を落とす。


「ふっ! このリーシャ様に敵う者はないわ」


 リーシャが決めゼリフを言いながらかっこつけた。


「良いとこ取り……」

「いや、旦那様の詰めが甘いのかと……」


 お前が室内で火魔法を使うなって言うから威力を落としたんだよ!


いつもお読み頂き、ありがとうございます。


本作のコミカライズ第2巻が明日、発売となります。

地域によってはもう書店に並んでいるかもしれません。

ぜひとも読んで頂ければと思います(↓にリンク)


また、同日に同レーベルから私の別作品である『35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい』のコミック1巻も発売となります。(↓にリンク)

こちらも面白いので読んで頂ければと思います。(もっと↓に1話のリンクあり)


よろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
なんてこった…ロイドが頭おかしいのは黒魔術のせいだったんだ!! エーデルタルトの女がおかしいのも黒魔術のせいに違いない おのれ黒魔術…
肉親だから全力で戦えなかったんだよ。 そしてリーシャはそんな夫にやらせるのは 酷だからと自分がトドメをさしたんだよ。 と後世には語り継がれるだろう。
王様の、に、が気になります。なんて言おうとしたんだろう。他の悪者とか思いつかないよ。
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