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廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~  作者: 出雲大吉
最終章

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第282話 シルヴィの秘技


 イアンと夜に会うことに決めた俺はゆっくりと過ごすことにし、部屋で本を読みながら夜になるのを待った。

 そして、夕食を食べ終え、しばらくすると、窓から見える町から灯りが消え始めたのを確認すると、出かけることにした。


「旦那様、私の影にお入りください」


 シルヴィにそう言われたのでシルヴィの前に立つ。

 そして、テーブルにいる留守番する3人の方を見た。


「いつ戻るかわからんし、お前達は先に休んでていいからな」

「そうするわ。眠いし」

「いってらっしゃい」

「頑張って」


 俺は3人に見送られながらシルヴィの影に入っていった。


「旦那様、よろしいですか?」


 俺がシルヴィの影に完全に入ると、シルヴィが見下ろしながら聞いてくる。


「いいぞー」

「では、参りましょう」


 シルヴィは頷くと、部屋を出て、宿屋からも出ると、イアンの別邸とやらに向かう。


「シルヴィ、イアンの別邸ってどこだ? というか、あいつ、別邸なんて持ってるのか?」

『城の近くですね。それとイアン殿下の別邸というよりかは王妃様の別邸になります』


 王妃が別邸?


「なんでそんなのがあるんだ?」

『旦那様もご存じでしょうが、王妃様は元々、側室です。あと、正直に言いますが、王妃様は前王妃様、つまり、旦那様のお母様とはあまりいい関係とは言えなかったらしいので陛下が気を遣って、城の外に別邸を建てられたのです。王妃となった今でも息子のイアン殿下が使っておられるんです』


 そういや、母上とイアンの母親は仲が悪かったな。

 というよりも、外国から嫁いできた母上とエーデルタルト生粋の貴族の出のイアンの母親では価値観なんかが合わなかったぽっかった。


「ふーん、そうなのか……あいつ、別荘みたいなものを持っていたんだな。羨ましい奴だわ」


 俺よりも恵まれてないか?

 俺はそんなもんは持ってないぞ。


『まあ、殿下が別邸を持っていれば、リーシャ様との愛の巣になるでしょうね』


 うっさいわ。


「王妃は倒れているんだったな? 死にそうか?」

『そこまでではないです。おそらくは陛下の近くにいたせいで黒魔術に当てられたというのが父の推測です。魔力が低い者はたまにそうなりますから』


 情けない奴だと思うが、まあ、王妃は完全な箱入りだからなー。

 俺の母親ほどではないが、体力もなさそうだったし。


「父上は弱そうなのを嫁にしたんだな」

『殿下は逆に強そうなのを選びましたね。リーシャ様はもちろんですが、マリア様も十分に図太いです』


 図太い言うな。

 リーシャはまったくもってその通りだけど。


「だから生き残れたんだよ。森に遭難して、海で漂流だぞ」


 自分で言うのも何だが、すごいわ。


『そうですね。強いのはとても良いことだと思います。だからこそ、私は旦那様が王位に就かれるべきだと思うんですけどねー』


 図太さが王に関係あるのかね?


「就かない」

『そんなにマリア様が良いですか?』

「当たり前だ」

『ふふふ、リーシャ様は私やヘレナさんを敵視する前にちゃんと後ろを見ないといけないでしょうね。足元をすくわれそうです』 


 シルヴィが心底楽しそうに笑う。


「マリアはそんなことせんし、別にマリアのことをリーシャ以上に好んでいるということではないぞ」

『どうでしょうかねー? 一つアドバイスをしますと、いくらマリア様が好きだからと言って、マリア様の子を次の王に指名してはいけませんよ?』

「大丈夫。正直なことを言えば、その辺はまったく興味がない。俺が王位に就かない時点で誰が王になろうとどうでもいい。イアンの子でいいじゃんとすら思っている」


 あくまでも、うるさい貴族共を納得させるために考えて提案しただけで、そこに俺の気持ちは一切入っていない。


『それはそれでどうなんです?』

「俺はリーシャとマリア、そして、その子供達が幸せなら何も思うことはない。いいか? 俺を煩わせるな。俺は魔法の研究をして、遊んで暮らすんだから」

『後半は言わない方がよろしいかと……』


 はいはい。


「俺はリーシャとマリア、そして、その子供達が幸せなら何も思うことはない。家族が幸せならそれ以上は望まない」

『さすがは旦那様。大変ご立派でございます…………さて、旦那様、前方に見えるのがイアン様の別邸でございます』


 シルヴィがそう言うので前を見ると、そこまで大きくない屋敷が見えてきた。

 ただし、見張りと思われる兵士が10人近くいる。


「多いな……」

『多いだけではありません。あれは近衛隊です。もちろん、精鋭ですね』

「いけるか?」

『お任せを。かなりの魔力を使いますが、私の秘技をお見せしましょう』


 秘技?


「まだあんの?」


 お前の魔法はほとんどが秘技だと思うが……


『とっておきです。旦那様、これは他言無用でお願いします。奥様方にも私の父にもです』


 絶対に黒魔術じゃん。


「わかった」

『ありがとうございます。では、失礼します』


 シルヴィがそう言うと、シルヴィが俺の目の前に落ちてきた。


「ん? お前、自分の影に入れるのか?」


 シルヴィの顔が目の前にある。


「もちろんです」

「これが秘技? このまま動けるのか?」

「これは秘技ではございませんし、隠れる用の魔法なので動けません」


 姿を消す魔法と併用したら便利そうだな。

 いや、そういう使い方をしているのか。


「秘技は?」

「少々お待ちを。準備がいるんです」


 シルヴィはそう言うと、俺の目の前でメイド服を脱ぎだした。


「………………」


 エプロンを取ると、ワンピースも脱ぎ、下着姿になる。


「…………リーシャリスペクトか?」


 今朝の話で対抗しようと思ったのかね?


「違いますよー」

「ふーん……恥ずかしくないのか、公爵令嬢?」

「旦那様なら問題ありません」


 シルヴィはそう言うと、下着も取り、完全に裸になった。

 暗くて微妙に見づらいが、良い身体だと思う。


「何してんだ?」

「準備です。それにしても、まったく視線を逸らしませんね。浮気です」

「何を言ってんだ? 俺は何もしていない。お前が勝手に脱いだんだ」


 俺は悪くない。


「良い言い訳ですね。そうです。旦那様は何も悪くありません。すべては私が悪いのです。これをよく覚えておきましょう…………では、旦那様、私の秘技をお見せします」


 服を脱いだのが秘技でーすって言われるかと思った。

 色仕掛け的な。


「どうすんだ?」

「こうします」


 シルヴィがそう言うと、シルヴィの姿がぼやける。

 それどころか、シルヴィの身体が薄っすらと透け始めた。


「ん?」


 俺が首を傾げると、シルヴィが煙のように歪んでいく。

 いや、煙になっているのだ。


「これが私の秘術です。己の身体を気体に変えます」

「へー。そりゃすごい」


 マジですごい。

 見たこともないし、聞いたこともない。


「吸血鬼みたいだな」

「それを意識しております。なお、旦那様は絶対にマネしないでください。これはミスをすると、二度と戻れません」


 危ない魔法だな……

 こいつ、相当、黒魔術をやってるぞ……


「確かに秘技だな」

「そういうことです。では、行きます」


 シルヴィは頷くと、完全に姿が見えなくなった。

 そして、気が付くと、影が浮き上がり始める。


「何これ?」

『影はあくまでも私の異空間です。気体であろうが、私が移動したら一緒に移動するのです』


 この魔法、ヤバい気がする……

 物や人を入れたままどこにでも侵入できるぞ。


「すごいな……」

『はい。ですので、他言無用でお願いします。では、イアン殿下の部屋に参りましょう』


 シルヴィが念話でそう言うと、影が動き始め、あっという間に屋敷の2階の窓まで到達する。

 もちろん、下にいる警備の兵はまったく気が付いていない。


 シルヴィはそのまま窓を通り抜けていき、部屋の中に入った。


「え? 何をしたんだ?」


 窓を開けてすらないぞ。


『気体ですのでちょっとの隙間があれば、侵入できます』


 ヤバすぎる……


「怖いな、おい」

『では、弱点を教えておきます。水をかけてください。それで魔法が解けます。ですので雨天は使えません』


 あ、対処は結構楽だわ。


「わかった」

『はい。旦那様、この部屋のベッドを見てください』

「イアンが寝てるな」


 部屋に入ってすぐに気が付いていた。

 愚弟がスヤスヤと寝ている。


『では、失礼しますねー』


 シルヴィがそう言うと、俺がいる影に素っ裸のシルヴィが現れた。

 そして、シルヴィは服を着だす。


「外でやれよ」


 狭い……


「イアン殿下が起きたらマズいでしょ。起きたら、自分の部屋で変なメイドが着替えているんですよ? シュールすぎます」

「ここでも十分にシュールだ。この魔法の最大の弱点は服を脱がないといけないことだな」

「そうなります。服は気体にできませんからね。あと冬は使えません」


 冬に使えない……


「……寒いからか?」

「はい」


 それは我慢しろ。


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― 新着の感想 ―
みんな黒魔術大好きだな
風吹いたら意識バラバラになりそう
ん?同じく気体になれる魔法使いがいたら混ざるのか?
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