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廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~  作者: 出雲大吉
最終章

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262/286

第262話 絶対に女王にしてはいけない女


 馬車がそのまま進んでいくと、ふいに馬車が止まった。


「何だい?」

「どこの者だ?」


 馬車の外から声が聞こえてくる。

 門番の兵士がこの馬車を止めたのだろう。


「…………マリア、行け」


 俺は小声でマリアに指示をした。

 すると、マリアが頷き、前の方に行く。


「ラウラさん、どうしました?」


 マリアが布越しにラウラに声をかけた。


「マリア様、申し訳ございません。ちょっと兵士に止められまして……」


 さすがにこの辺は元Aランクのラウラはわかっている。


「私の馬車をですか?」

「はい。どうしましょう?」

「少し待っててください。私が話します」


 マリアはそう言うと、腰を上げる。


「いえ! 大丈夫です! フランドル家のマリア様でしょうか?」


 兵士が布越しに止めてきた。

 どうやらマリアを知っているらしい。

 まあ、隣の領地だしな。


「そうだよ。マリア様は教国の修行からお戻りになり、実家に帰るんだ。私はその護衛。ほら」

「…………ふむ、Bランクの冒険者か」


 どうやらラウラが冒険者カードを見せたようだ。


「そういうわけだから怪しい者じゃないよ……通ってもいいかい?」

「もちろんです。むしろ、護衛がいるかと思いましたが、Bランクの冒険者が一緒なら問題ないでしょう……どうぞ。お気をつけて」


 兵士がそう言うと、馬車が動き出した。

 そして、しばらくすると、馬車の前の幕が開く。


「もう大丈夫だよ」

「そうか」


 俺は閉じていた後ろの方の幕も開けた。

 すると、気持ちいい風が入ってくる。


「いやー、懐かしきエーデルタルトの風だなー」

「そうねー」

「わかるんですか?」


 ティーナが聞いてきた。


「お前は風情や情緒を知らんのか?」

「あ、別にわかるわけじゃないんだ……」


 当たり前だ。

 風なんてどこも一緒だろ。

 ましてや、南部なんて数えるくらいしか来たことがないわ。


「殿下、私はやっぱりエーデルタルトが怖いよ」


 ビビりなラウラ(ジャック談)が変なことを言ってくる。


「何かあったか?」


 特に問題はなかったと思うが……


「あの門番達、いきなり槍を向けてきたくせに、ちっちゃい嬢ちゃんの名前を聞いた瞬間に直立不動になってたよ」

「槍を向けた? はい、死刑」


 貴族の馬車を止めただけでも重罪なのに槍を向けるとは……


「死刑なの!?」


 俺の言葉を聞いたティーナが驚く。


「俺ならその場で殺す。火刑だ」

「私も絞首刑を命じる」


 当たり前だな。


「怖っ!」


 ティーナは振っていた尻尾を引っ込める。


「いや、御二人と他の貴族を一緒にしたらダメですよ……この人達が乗る馬車は豪華だし、護衛もたくさんいますからね。一目でわかるので兵士も止めてきません。というか、それでも止めるのは暗殺者ですから殺して当然です」

「あー、なるほど。王子様とその婚約者だからか……」

「そうです。まあ、他の貴族も似たようなものなんですけど、この馬車では止められるのも仕方がないです」


 馬は良いけど、普通の馬車だもんな。

 とてもではないが、貴族が乗っているとは思えない。


「マリアさんも死刑を命じるの?」

「するわけないじゃないですか…………あ、いや、しないといけないのか」


 マリアは俺の妻であり、王族だからな。


「というか、ティーナ、お前が行くんだよ。何のための侍女だ。暗殺者が来たら死んでもリーシャを守れ」

「あ、そうなるのか……」


 ティーナが微妙に納得した。


「今はコソコソしてるからせんが、シルヴィなら槍を向けた時点で殺しているぞ」


 いや、あいつは殺さずに眠らせるか……

 その後、捕まえて拷問のフルコース。


「な、なるほどー……」

「あー、早く帰りたい。とんでもないところに来てしまったよ。噂通りじゃないか…………あ、いえ、なんでもないです」


 文句を言っていたラウラだったが、リーシャと目が合うと、すぐに目を逸らし、前を向いた。


「…………あいつ、リーシャにびびりすぎじゃないか?」


 俺はちょっと気になったので小声でマリアに聞いてみる。


「…………経緯を説明しましょう。まず、魔法に疎いリーシャ様はこれまでの旅で魔法の有用性と共に危険性を認知されました。そこで、自らの身を守るために魔法のスペシャリストを雇うことにしたんです」


 あ、それがラウラか。

 伯父上の呪いも治したし、知識と魔法の腕はすごいもんな。


「…………ラウラは承知したのか?」


 あいつがエイミルから離れるとは思えんが……


「…………断りました。すると、『私を断ってロイドに仕える気?』と言って詰め寄りました。嫉妬女はラウラさんがお婆さんの姿をやめ、若くて美人になっていることに非常にご立腹だったようです。何せ、そうするように指示したのは殿下ですからね」


 下水……


「…………いや、そうはならんだろ」


 ラウラは確かに美人だし、女としても魅力的だとは思うが、どうしても婆さんの姿がチラつくから嫌だ。

 無理、無理。


「…………忘れたんです? リーシャ様は元からお婆さんの姿でも嫉妬してたじゃないですか」


 そういやそうだった。


「…………でも、ラウラはエイミルを動かないと思うぞ」

「…………ジャックさん曰く、ラウラさんは権力とお金に弱く、しかも、押しに弱いから殿下が強く出れば、断れないだろう、と」


 いやまあ、そんな気がしないでもない。

 ラウラはなんだかんだ言っても基本、断らない。

 というか、断れないんだな。

 エイミルにいるのもそれだろうし。


「…………それでこんな状態?」

「…………ですね。リーシャ様お得意の無言の圧力です。あとは扇を折れば、扇と共にラウラさんの心がぽっきりです」

「…………そうか」


 うーん、俺的にもラウラは有能だから欲しかった。

 でも、無理強いをするつもりもなかったし、今回のことが終われば、謝礼を払ってエイミルに帰らせるつもりでもあった。


「…………どうします? リーシャ様を止めます?」


 うーん……


「…………いや、知らんぷりしよう」


 悪いのはリーシャ。

 俺は悪くないし、有能な魔術師であるラウラも手に入る。

 うん、これしかない。


「…………私もそうするつもりでした」


 だよなー。


「どす黒い……」


 俺とマリアの内緒話を自慢の耳で聞いていたティーナが引いていた。


「じゃあ、お前が言え。時には苦言を呈し、主を諫めるのも大事なことだぞ」


 俺はイエスマンが好きだけどな。


「あ、リーシャ様、靴が汚れています」


 ティーナがリーシャのもとに行き、靴を拭きだす。


 逃げた……

 お前も俺達と一緒だろ。


いつもお読み頂き、ありがとうございます。

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本作共々よろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
こんな一行に命運を握られた祖国が哀れすぎるw
お似合いの夫婦ですね!
ティーナも誰が主かしっかり理解してるな。
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