表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

26/279

第026話 初仕事


「殿下ー、朝ですよ。起きてください」


 まだ眠いよ……


「……朝の稽古はパス」


 剣術より魔術だよー。


「寝ぼけないでください。ここは王宮じゃないですし、私はメイドではありません」


 ん?


 俺が目を開くと、マリアが俺を覗いていた。


「マリアか…………お前の顔を見ると、落ち着くな」


 なんでだろう?


「どうせ田舎娘ですよ。それよりも朝です。リーシャ様は起きてくださいませんし、殿下が起こしてください」


 俺はマリアにそう言われて、隣のベッドを見ると、リーシャがスヤスヤと寝ていた。

 しかも、布団からきれいな足が見えており、多分、あの中は全裸だ。


「あいつ、マジであのまま寝たんか?」

「殿下待ちだったんじゃないです?」


 いや、マリアがいるから違うと思う。


「まあいい。起きるか……」


 俺は上半身を起こすと、マリアを見る。


「しかし、お前、早いな」

「ええ。夢で地面に激突して目が覚めました」


 夢にまで出てきたのか…………


「お前、もしかして、それであの時も起きてたのか?」


 熊さんにおはようって言われた時、マリアの方が早く起きていた。


「はい。あの時も地面に落ちて目が覚めたんですけど、良かったー、夢かーとホッとしたら目の前に熊です」


 最悪すぎる…………


「怖かったら一緒に寝てやるぞ?」

「一緒に落ちる夢を見るだけですよ」


 それは嫌だな……


「完全にトラウマだな。俺も空を飛べなくなった」

「あんなことがあったら仕方がないですよ」

「だなー……さて、人の心を持ち合わせていない幸せそうな冷徹姫を起こすか」


 俺は立ち上がると、リーシャのもとに行く。


「リーシャ、起きろ」

「あとちょっと……」


 リーシャが掛け布団を被った。


「いいから起きろ」

「私は人の心を持ち合わせていないから起きない」


 聞いてやがった……


「いいから起きろ。さっさと仕事してこんな国からおさらばしようぜ」

「ハァ……マリアと先に行ってて。私は服を着てから行くわ」

「マリア、俺は先に食堂に行くが、お前は残って、こいつを急かせ」


 絶対にこのまま二度寝する気だ。


「……わかりました」


 俺はこの場をマリアに任せると、先に食堂に行くことにした。


 食堂に行くと、他の宿泊客も朝食を食べており、昨日見た若い女やおばさんがせわしなく、動いていた。

 俺は空いている席に座ると、周囲を見渡す。

 他の宿泊客は商人っぽい者から冒険者まで色んな人がいた。

 中には女性冒険者もおり、本当に女も冒険者をやるんだなって思った。


 俺が周囲を観察していると、おばさんが俺のテーブルにやってくる。


「他の2人はどうしたんだい?」

「すぐに降りてくるよ。一人寝ぼすけがいるんだ」

「そうかい。じゃあ、食事を持ってくるよ」


 おばさんはそう言って奥に引っ込むと、すぐに3人分の朝食を持ってきてくれた。

 俺は先に朝食のパンと卵とスープとサラダを堪能していると、すぐにマリアが眠そうなリーシャを連れてやってくる。

 もちろん、服は着ている。


 リーシャとマリアが食堂に来ると、他の客(主の男)がリーシャとマリアをチラチラと見だした。


 さすがは絶世。

 眠そうな顔をしても目を引くんだな。


「眠いわー……」


 リーシャは眠そうに俺の対面に座った。

 マリアもまたリーシャの隣に座る。


「いいから食え。そこそこ美味いぞ」

「……そうね。食べましょう」

「美味しいですぅー」


 マリアはリーシャを待つ気はないらしい。

 まあ、俺もない。


 俺達は朝食を堪能すると、部屋に戻り、準備を整えた。

 そして、受付に行き、鍵を昨日の若い女に返す。


「お客さん、今日はどうされます? 今日も泊まるんだったら予約しときますけど……」


 今日か……

 さすがに今日出発することはないだろうし、予約がいいかもしれん。

 この宿は悪くないし。


「頼むわ」

「では、予約しておきますね。前金の銀貨6枚をお願いします。食事やワインはチェックインの時に言ってもらえばいいんです」

「わかった」


 俺はカバンから金貨1枚を取り出し、渡す。


「はい、確かに。では、銀貨4枚のお返しです」

「ああ。じゃあ、夕方か夜に来る」


 俺はおつりの銀貨4枚をしまうと、女に手を上げる。


「はい、いってらっしゃいませー」


 俺達は朝から元気な女に見送られ、宿屋を出た。

 そして、ギルドに向かう。


「良い宿でしたね」


 マリアが嬉しそうに言う。


「そうだな。ブレッドの勧めは正解だった」

「仕事も期待できそうですねー」


 きっと楽で儲かる仕事を用意してくれるだろう。


 俺達は期待感を持って、ギルドに向かい、ギルドの扉を開いた。


 ギルドに入ると、結構な数の冒険者が受付に並んでいた。

 ただし、若くて美人の受付嬢のところだけに……


「男性はどこの国も身分も関係ないですねー」


 この光景を見たマリアが呆れたように言う。


「俺は違う」

「絶世を娶ったロイドさんが一番ですよ」


 うーん、そう言われると、否定できない。


 俺はまあ、空いているならいいかと思い、ブレッドのところに行く。


「よう、暇そうだな」

「おはようございます。まあ、気持ちはわかりますからね」


 ブレッドが隣を見ながら苦笑する。


「俺的には空いててありがたいわ。それで仕事はどんなのがある?」

「はい。いくつか見繕わせていただきました。どうぞ」


 ブレッドはそう言って、受付に複数の紙を置いた。

 俺はそれを手に取り、リーシャとマリアと共に一枚一枚見ていく。


【医療現場の手伝い 金貨10枚】

【オークの討伐 金貨1枚】

【ビッグボアの討伐 金貨5枚】

【魔法研究の手伝い 金貨20枚】


 ふーむ…………


「最初のは私ですね。最後のはロイドさんでしょう」


 だと思う。


「オークとビッグボアで差があるのはなんでだ?」


 俺は討伐依頼が気になったのでブレッドに聞いてみる。


「オークの討伐はここの領主が出している依頼で常時出ています。オークはこの辺りに多いんですよ。ですので、1体当たり金貨1枚です。ビッグボアは目撃情報がありましてね。そこまで危険ではないんですが、毛皮や肉が重宝されますんでこの価格です。もちろん、毛皮や肉は別料金で支払います。ただし、火魔法で焼き尽くすと金貨5枚までです」


 オークは駆除でビッグボアは素材目的か。


「お前らはどう思う?」


 俺はリーシャとマリアに意見を求める。


「あの、医療現場の手伝いっていうのは日給です? それと依頼元は?」


 マリアがブレッドに聞く。


「はい。日給です。依頼元は教会ですね」


 マリアは教会と聞くと、嫌そうな顔をした。


「これはなしだな……」


 ウチの貴族を使い潰そうとするところは信用できん。


「オークとビッグボアは同時に受けられるの?」


 今度はリーシャがブレッドに確認する。


「はい。ただし、ビッグボアは早い者勝ちになります」


 まあ、1匹しかいないんだろうからそうだろう。


「魔法研究の手伝いは具体的に何をするんだ?」


 俺も自分の分野になるであろう依頼の詳細を確認することにした。


「これは単純に魔力供給です」


 要は俺の魔力を使って研究したいわけだ。


「誰であろうと一律金貨20枚か?」


 雑魚魔術師と一流魔術師が同じ値段?


「出来高が入っていますね」


 となると、悪くないな。

 魔力には自信があるし。


「どうする? 魔法研究の手伝いは儲かりそうだし、討伐系もありだが……」

「二手に別れましょう。あなたが魔法研究の手伝い。私とマリアが討伐をする」


 効率的と言えば効率的だが……


「大丈夫か?」

「何も問題ないわ。私を誰だと思ってるの?」


 下水のリーシャ。


「ブレッド。ジャックから聞いたが、解体の出張っていうのはあるのか? 俺達は解体ができない」

「ございますよ。もしよかったらウチの解体専門をつけましょうか? 日当で金貨1枚になりますけど……」


 うーん、オーク1体分か……

 リーシャが1体も倒せないとは考えにくいし、マイナスになることはない。


「そいつは男か?」

「女性もおります」


 いるのか……

 すごいな。


「じゃあ、それでいこう。リーシャ、お前のことだから問題はないだろうが、モンスターだけでなく、他の冒険者も気を付けろ」

「わかってるわ。なます切りにしてあげる」


 さすがは下水のリーシャだ。

 これなら問題ないだろう。


「あの、ウチの職員をつけるからその辺は大丈夫ですよ……」


 リーシャはそんな常識をも壊すから絶世って呼ばれているんだよ。

 あと、悲運のマリアもいる。


 …………やっぱりやめた方が良いかも?


お読み頂き、ありがとうございます。

この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。


よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新作】
宮廷錬金術師の自由気ままな異世界旅 ~うっかりエリクサーを作ったら捕まりかけたので他国に逃げます~

【新刊】
~書籍~
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(1)
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(2)

週末のんびり異世界冒険譚 1 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~
週末のんびり異世界冒険譚 2 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

【販売中】
~書籍~
廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~(1)
廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~(2)

~漫画~
廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 1 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~

【現在連載中の作品】
その子供、伝説の剣聖につき (カクヨムネクスト)

週末のんびり異世界冒険譚 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~

バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~

最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~

【漫画連載中】
地獄の沙汰も黄金次第 ~会社をクビになったけど、錬金術とかいうチートスキルを手に入れたので人生一発逆転を目指します~
がうがうモンスター+
ニコニコ漫画

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~
カドコミ
ニコニコ漫画

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~
カドコミ
ニコニコ漫画

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~
ガンガンONLINE

【カクヨムサポーターリンク集】
https://x.gd/Sfaua
― 新着の感想 ―
26話以降ギルドのブレットがブレッドになってます。 ブレット:20話、22話、23話、 ブレッド:26話、28話、29話、30話、38話、72話、73話
[一言] ぶどうから悲運にジョブチェンジしてる…
[一言] 常識外の絶世と貧乏くじ係を組ませて別行動はなかなか怖いですね
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ