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廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~  作者: 出雲大吉
最終章

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256/286

第256話 ジャックの説明


 俺とマリアは必死に空路ではないエーデルタルトに行く方法を考えていた。


「陸路はないですよね?」


 マリアが聞いてくる。


「陸路の場合はテールを通るから無理だ。テールを迂回できないこともないが、とんでもない時間がかかる」


 テールは国土が無駄に広いのだ。


「そうなると、海路しかありませんね」

「そうだな。ウォルターから海路か……」


 それでも遠い……

 アシュリー号ならともかく、普通の魔導船ならかなりの時間がかかってしまう。

 そうなると、また別の事件に巻き込まれる可能性が高い。

 それはこれまでの経験でわかっている。


「空路よ、空路。他にないでしょ」

「それはない」

「無理無理」


 俺とマリアはリーシャの案を断固拒否した。


「ハァ……」


 リーシャがため息をつく。

 すると、部屋にノックの音が響いた。


『旦那さまー、お連れしましたよー』


 シルヴィだ。

 さすがは仕事が早い。


「入れ」

「はーい」


 シルヴィが明るい声で部屋に入ってくる。


「やあやあ。元気かー?」

「なんで私まで……」


 シルヴィが部屋に入ると、軽そうなジャックと嫌そうな顔をしたラウラも入ってきた。


「ん? ラウラ、お前も来たのか?」


 しかも、若作りモードだ。

 ホント、美人。


「酒場に行ったらジャックさんと一緒に飲んでいたんでついでに連れてきました」

「ついでで呼ぶんじゃないよ」


 ふーん……

 仲直りというほどでもないが、ちゃんと話すようになったのかね?


「まあいいや。立ち話もなんだから座れ」


 俺はジャックとラウラに座るように促した。

 すると、2人はこちらにやってきて座る。


「よっこらせ……さっき、メイドの嬢ちゃんから話は聞いたが、教国に行ってきたんだって? どうだった?」


 椅子に座ったジャックが聞いてくる。


「つまらん。腐っているし、面白みがゼロだった」

「だろうな。俺も仕事で何回か行ったが、ギルドもねーし、何をすればいいかわからなかった」


 つまり密偵の仕事で行ったのね。


「黒魔術のことは知っていたか?」

「いや、それは知らなかった。というか、俺が行ったのは何年も前だからな。教皇がまだ元気な時だ」


 ふーん……

 まあ、あの感じだと黒魔術やりだしたのは教皇が危篤になってからっぽいしな。


「ラウラ、お前も話は聞いたな?」


 俺は次にラウラを見る。


「聞いたよ……聞きたくなかったし、巻き込まれたくなかった」


 こいつはそうだろうな。

 めんどくさがりだし、厄介ごとに首を突っ込むのを嫌がる。


「率直な意見を聞きたい。話を聞いてどう思った?」

「腐ったエーデルタルトが余計に腐っただけだろ」


 これが外の人間の意見か……


「参考になったわ。ジャック、お前はエーデルタルトでシルヴィに俺達のことを教えたそうだな?」


 今度はジャックに確認する。


「ああ、それな。実を言うと、テールでお前さん達と別れた後にエーデルタルトに行ったんだわ」

「何しに?」

「俺はお前が廃嫡になった理由が気になった。確かにお前は剣士ではなく、魔術師だが、それだけで廃嫡されるとはどうしても思えなかった」


 まあ、どう考えても魔術師だろうが、剣士だろうが、王に相応しいかどうかなんて関係ないからな。


「俺が傲慢で無能だからとは思わんか?」

「いや、お前さんは確かに傲慢だが、けっして無能ではない。王の資格があるかないかで言えば、確実にある」


 どうも。


「それで調べに行ったわけか?」

「そういうことだ。それで調べている最中にメイドの嬢ちゃんに会ったわけだな。一発でエーデルタルトの暗部だってわかったわ」

「よくわかるな」


 コツとかあるのか?


「まあ、同業者みたいなもんだから」


 密偵と隠密か……

 よく考えたら差がわからんし、ほぼ一緒だろう。


「なるほどね。それで話したわけか」

「そういうこと」

「エーデルタルトを調べた結果はどうだ?」


 大事なのはそこだ。

 俺はそれを話してもらおうと思って、ジャックを待っていたのだ。


「まず、悪いんだが、城には入れなかった。ただでさえ、厳重な城がより厳重になっていて無理だ」

「まあ、そうだろうな。そこはいい」


 そこは無理だろうと思っていた。


「ああ、次に貴族共だが、ロイド殿下派閥とイアン殿下派閥で分かれている」

「それは聞いた。俺の派閥が抗議して、イアンの派閥が静観だろ?」

「そうそう。俺が噂を流したんだぜ? イアン殿下が絶世の嬢ちゃん欲しさにロイド殿下を暗殺したってよ」


 お前かい……


「普通に王位を狙って、でいいだろ」

「こういうのは悲恋とかそういうのを混ぜた方が盛り上がるし、噂が広がりやすくなるもんなんだよ。おかげでどんどんと尾ひれがついていったぞ。わはは」


 ジャックが楽しそうに笑った。


「他には? マリアはどうなっている?」

「ちっちゃい嬢ちゃんは特に何も……普通に教国に行っていると思われている」

「あ、そうですか……」


 マリアがちょっと落ち込む。


「いやまあ、他の話題がすごくてな……特にロイド殿下の廃嫡と失踪が大問題になっている」

「リーシャの放火は?」

「ロイドね、ロイド」

「どっちもですー。このやりとりも何回目でしょうか?」


 マリアが呆れながら訂正していきた。


「お前さん達に悪いが、あれはたいした問題になっていない。というか、ただの失火と思われている」

「え? だって、着火の魔法陣だぞ?」

「エーデルタルトはマジで魔法が遅れているな。そういう調査をしてない。すぐに消し止められたし、ただの火の不始末による事故で片付けられた」


 えー……逃亡した理由は?


「いくらなんでもそれは警戒心がなさすぎんか?」

「そういう風に国王陛下が片付けたそうだ」


 城を詳しく調べられたら困るからか。


「それで俺とリーシャの失踪が問題になっているわけか」

「そうそう。王太子を廃嫡しました。そして、その王子が婚約者と消えました。そりゃ、誰だって怪しむ」


 どう見ても何かがあったと思うわな……


「庶民はもちろんのこと、貴族共も状況を理解できていないわけか……」

「そうだな。何しろ、宰相の爺さんもパニックだぜ?」


 思ったより、大事になっているな……


「そうなると、テールが動きそうだな……」


 この混乱を静観するほど、テールは甘くない。


「問題はそこよ。俺がお前さんに伝えないといけない最大の出来事だ」

「なんだ?」


 ものすごく嫌な予感がする。


「エーデルタルト王はテールへの侵攻を決めた」


 …………は?

 何を言ってるんだ?

 バカ?


お読み頂き、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
盛り上がってきたー!!!
まあ、戦争になればヤバい魔法も使えるし贄にするにも敵国捕虜の方が都合がいいもんね 巻き込まれた周辺カワイソ しっかし絵に描いたように堕ちてるな。これが黒魔術の力...
暗君を討伐して終わりかと思いきや大ごとになって盛り上がってきましたね。
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