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廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~  作者: 出雲大吉
最終章

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255/286

第255話 頑張ったシルヴィ


「シルヴィ、エーデルタルトはどうなっている?」

「リーシャ様のスミュール家を始めとするロイド殿下の派閥が猛抗議しております。一方でイアン殿下の派閥は静観ですね」

「静観? どういうことだ?」


 なんで静観する?

 チャンスだろ。


「実は殿下が行方不明になったことが国中で噂になっているのです。そして、もう1つの噂が流れています。イアン殿下が暗殺したんだと……」

「あー……そう来たか」


 確かに俺が死んで一番利益があるのは弟のイアンだ。


「はい。ましてや、絶世と謳われるリーシャ様も行方不明です。もう、あることないことが貴族、平民に問わず、錯綜しています。イアン殿下はこの噂の火消しのために殿下やリーシャ様を捜索している状況です。とてもではないですが、敵対派閥の目もありますし、今は動けません」


 あちゃー……

 悪いな、イアン。


「イアンはここで動けるような性格ではないからなー……」


 あいつは基本、大人しいんだ。


「そのようです。今は派閥の貴族達を纏めるのに必死なようですね。しかも、王妃様が心労で倒れました」


 イアンの母親か……

 俺の母親が王妃だったが、若くして死んだため、側室だったあの人が王妃に繰り上がったのだ。


「大混乱だな」

「そうなります。私は殿下を捜索しました。すると、王都の東にあるゲルクの町で足取りが消えていました。しかも、何者かが飛空艇を奪っていました」


 うん……


「それで?」

「私は確実に殿下とあたおか女……失礼。リーシャ様の犯行と思いました。ですが、そうなると殿下はすでに国外に逃亡したということです」

「まあ、合ってるな」


 テールに墜落……じゃない、不時着したけど。


「私がどうしようかと思っていると、ジャックさんと会ったのです」


 出た、ジャック……

 あいつにエーデルタルトのことを調べさせようと思っていたが、すでに潜入してやがったわけだ。


「あいつは何て?」

「殿下達がテールに墜落……いえ、不時着したことを聞きました。そして、海路でエイミルに行くだろうと……」


 時系列的には俺達とジャックがテールで別れた後か……

 あいつはあの後、エーデルタルトに行ったんだ。

 …………いや、再会した時に言えよ。


「エイミルね……」


 こいつが教会の手先として暗躍していた時か。


「そうです。私は教国での調査をしつつ、部下にエイミルを張らせました。しかし、殿下達はまったく来ませんでした」

「悪いな。漂流してギリスにいたわ」


 すまん。

 俺が錨を下ろし忘れたばっかりに……


「そのようですね。私はしびれを切らし、エイミルに向かいました。そこであのアホに協力をしながら殿下達の到着を待つことにしたのです」


 ユルゲンな。

 確かにアホだったけど、名前で呼んでやれ。


「お前がやっていたエイミルとジャスの離間ね」

「レノーの指示ですね。エーデルタルトとは関係ない国なので興味がなかったです。そうやって待っていると、港町のレイルで殿下を見つけたのです。あの時はびっくりしましたね。なにせ見たことある船に見たことある人が乗っていたんですから」


 アシュリー号と死んだはずの叔母上か……


「あれは放っておけ」

「まあ、そういうわけにはいかないですけどね。主に例の件で……」


 ヘレナ……

 結局、いい案が浮かんでいない。


「まあ、大体わかった。その後は俺達と合流したわけだな?」

「そういうことです」


 なるほどねー。


「あのー、シルヴィさんはなんでこんな回りくどいことをしたんですか? 普通にこの事を殿下に話せばいいじゃないですか」


 マリアが書類を手に取りながらシルヴィに聞く。


「絶対に信じないからです……マリア様、とうの昔に死んだ人間がこんな大事を伝えてきて、それを信じますか? ましてや、疑り深い殿下とリーシャ様が信じると思いますか?」


 絶対に信じない。


「……そうですね。むしろ、不敬者って思うか、追手の罠だと思って殺しにかかると思います」


 俺はシルヴィを殺しはしないぞ。

 リーシャは殺すだろうけど。


「そういうことです。私としては殿下に教国の姿を見せたうえでこの書類を見てもらわなければいけなかったのです」


 確かにあの姿を見れば、納得するわ。


「なるほど……」

「私からは以上です。そして、これを踏まえて、殿下に言っておきます。我らイーストン家の総意として、陛下は黒と認定し、すべてはロイド殿下の判断にゆだねることとしました」


 イーストン家は陛下を見限り、俺につくということか……


「今の王太子はイアンだろう?」

「関係ありません。どう考えても正当な次期王はロイド殿下です。正直なことを言えば、スミュール家から正室を娶った殿下に思うことはありますが、それを踏まえてもロイド殿下以外にありえません」


 ホント、スミュール家と仲が悪いな……


「だそうだ。これを踏まえてお前らに聞きたい。俺はどうするべきだ? 1つは無視して、このままウォルターで過ごす。もう1つは陛下を討つ。どっちがいい?」


 俺はリーシャとマリアに聞く。


「どうもこうもあなたの中で結論は決まっているじゃないの…………ジャックを待っているって、そういうことでしょ」


 まあね。


「あのー、質問なんですが、陛下を討つってことは自分の親を殺すってことですよね? いいんですか?」


 マリアが聞いてくる。


「国家の大事と親子の感情ではどちらが重視される? 俺は王族だぞ」


 王族は情なんかに流されてはいけないのだ。


「…………本当は?」

「くだらん理由で俺を廃嫡にし、御前試合でイアンなんかに負けるという屈辱を味わった。しかも、高所恐怖症になるわ、くだらん事件に巻き込まれるわで最悪だわ。死ね、クソ親父」


 邪悪な黒魔術師なんぞ、地獄に送ってやるわ! ぺっ!


「そ、そうですかー……私は殿下にお任せします」


 マリアは俺にゆだねるらしい。


「リーシャは?」

「私が温めていたクーデター計画がついにお披露目ね。まずはイアン殿下を亡き者にしましょう」

「お前はいいや……黙って俺についてこい」


 やっぱりそんなもんを考えてやがった。

 しかも、最初の手段から暗殺だし。


「私はついていく人を間違えた……」


 過激なリーシャの言葉を聞いたティーナが落ち込む。


「シルヴィ、結論は出た。エーデルタルトに戻るぞ」

「かしこまりました。すべては殿下の思うままに……」


 シルヴィが恭しく頭を下げた。


「ジャックを呼べ」

「はい。すぐに呼んでまいります…………ですが、一つだけ、考えておいてほしいことがあります」


 ん?


「なんだ?」

「どうやってエーデルタルトに行くかです。ここから遠いですよ? では、私はこれで……」


 シルヴィはそう言い残し、退室していった。


「どうやってって……?」

「えっと……」


 俺とマリアが顔を見合わせる。


「飛空艇しかないでしょ」


 心ないリーシャが恐ろしいことを言ってきた。


「嫌」

「嫌です」


 何回でも言ってやるわ。


 人はね?

 空を飛ばないの!


コミックを購入してくださった方、ありがとうございます。

まだの方は是非ともご購入頂けると幸いです。


これからも本作を更新していきます。

最終章となりましたが、引き続き、よろしくお願いいたします。

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