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廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~  作者: 出雲大吉
第6章

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252/285

第252話 なんか惹かれる


 ウォルターに帰って数日が経った。

 俺は基本、自室にこもり、考え事をしている。


 今も自室でシルヴィが淹れてくれたお茶を飲みながら考えていた。


「旦那様、お気持ちはわかりますが、根詰めすぎでは? 息抜きでもしません?」


 シルヴィが後ろから腕を首に回し、耳元で囁いてくる。

 当然だが、この場にはリーシャもマリアもいない。

 2人は伯母上に誘われて、お茶会をしているのだ。


「息抜きねー。今はそういう気分ではないな」

「ざーんねん。せっかく奥様方がいないから『いけません、旦那様。旦那様には奥様がおられますー』って言おうと思ったのに」


 なんだそのよくわからないのは……


「今後のことを考えていた」

「エーデルタルトを捨てるかですか?」


 シルヴィは俺から離れると、正面に回り、椅子に座りながら聞いてくる。

 メイドのやることではないが、こいつの言動を気にしてもしょうがないから無視だ。


「そうだ。伯父上もヒラリーもよくしてくれるし、ここでも幸福は十分に掴める」

「でしょうねー。マイルズ殿下が王位を継ぎ、旦那様がそれを支える。悪くないと思います」


 そうだな。

 悪くない。

 悪くないが……


「うーん……」

「まあ、ゆっくりと考えてください。旦那様がどういう選択を取ろうと、奥様方はついてきてくださいますし、このシルヴィも支えましょう」

「そうだな……」


 俺が考え事を再開すると、コンコンというノックの音が部屋に響いた。


「なんだ?」

「旦那様、私が……」


 俺が顔を上げると、シルヴィが扉の方に歩いていく。

 そして、扉を開けると、外にいたメイドと話し始めた。


「わかりました…………旦那様、城の正門に獣人族の女の子が来ているらしいです。なんでもリーシャ様に会いたいと」


 あ、ティーナだ。


「ここに通せ」


 リーシャはいないが、外で待たせるのはかわいそうだし、ここで待ってもらおう。


「剣を持っているそうですけど……」

「そいつはリーシャのもとで働きに来たんだ。問題ないから通せ」

「かしこまりました。では、私が迎えにいってきましょう」

「頼むわ」


 俺がそう言うと、シルヴィが部屋を出ていった。

 そして、しばらくすると、シルヴィがティーナを連れて戻ってくる。


「こ、こんにちはー……」


 大きな荷物を背負って、部屋に入ってきたティーナはおずおずと俺のもとに近づいてきた。


「どうした?」

「いやー、あなたって本当に王子様なんだね。すごいお城じゃないの」

「いや、ここは俺の城ではないぞ。ここは客室だし」


 というか、エーデルタルトの城はここの比ではない。


「そ、そうだよね。でも、すごいよ。そして、私の場違い感がすごい」


 ティーナは俺の前で立ったまま、犬耳と尻尾をしょぼんとさせる。


「どうでもいいけど、荷物を置いて座れ」

「あ、うん」


 ティーナは荷物を床に置くと、椅子に座る。

 すると、シルヴィがティーナの分のお茶を淹れ始めた。


「ほえー……これが侍女? 私、こんなことをするの? というか、すでにいるじゃん」

「仕事は少しずつ覚えていけばいい。最初からできる奴はいないからな。それと、こいつは俺の専属の侍女だ」


 もう専属の侍女ってことでいいや。


「そ、そうなんだ……あ、あのー、このメイド服は何? 足が……」


 ティーナがシルヴィの短いスカートを見て、頬をちょっと染める。


「そいつの趣味だ」

「ふふっ、旦那様の趣味でございます」


 シルヴィはうっすらと笑いながらお茶をティーナの前に置いた。


「えー……やっぱりそういう仕事じゃん」

「違うっての。それにお前はリーシャに仕えるんだよ。シルヴィ!」

「はいはい」


 シルヴィは笑うと、その場で一回転する。

 すると、シルヴィの格好はそのままだが、顔が本来のかわいい顔に変わった。


「あれー? スカートが長くなった!」


 当然だが、幻術でそうしただけである。

 俺の目には短いスカートときれいな足が見えている。


「いいからお茶を飲め」

「あ、どうも……」


 ティーナがお茶を飲み始める。


「それにしても随分と早かったな。もう少し時間がかかると思っていた」

「うん。私の両親が反対をしなかったからね」

「そうなのか? 人族だぞ」


 人族と獣人族の軋轢を考えると、反対しそうなもんだが……


「ララが良い人達って言ってたから」


 さすがはララ。

 実にかわいい奴だ。


「そうか。それで両親も安心したわけだな」

「うん。けっして、良い人達ではないけどね」


 一言多い奴……


「旦那様、この方は?」


 シルヴィが聞いてくる。


「テールやミレーで会っていた獣人族のティーナだ。リーシャがえらく気に入って、自分の侍女にするって言ったんだよ」

「あー、なるほど。強そうですもんね」


 まあ、獣人族っていうだけで強そうだ。


「そういうこと。そういうわけでお前でもいいし、他の者でいいから適当に仕事を教えてやってくれ」

「かしこまりました。メイド服でいいです?」

「当たり前だろ」


 他に何を着るんだよ。


「尻尾は出します?」

「当たり前だろ。俺が唯一評価しているところだ」

「なるほどー。確かにいい毛並みですね」


 シルヴィがティーナの尻尾を見る。

 すると、ティーナは尻尾を動かし、背中に隠した。


「今、すごいぞくっとした……刈られるかと思った」

「そんなことをしませんよー……旦那様、リーシャ様とマリア様を呼んできましょうか?」

「頼むわ」

「はーい」


 シルヴィはラフな返事をすると、部屋から出ていった。


「あんな感じでいいの?」


 ティーナがシルヴィが出ていった扉を見つめながら聞いてくる。


「俺にはあんな感じでいい。俺は堅苦しいのは嫌いなんだ。だが、リーシャはうるさいからしっかり覚えろ」

「が、頑張る…………あ、それとロイドに渡す物があるんだった」


 ティーナは立ち上がると、自分の荷物を漁り始めた。

 そして、カバンを取り出すと、俺に渡してくる。


「なんだこれ?」

「カサンドラさんから。果実酒とはちみつ酒だね。要求したのに忘れるな、だってさ」


 あー、ティーナに託したのか。


「悪いな」

「確かに渡したからね」

「ああ。観光はしたか?」

「まだ。この荷物であの小さな船に乗る勇気はない」


 確かにひっくり返りそうだ。


「後でリーシャとマリアの3人で行ってこい。せっかく来たんだから観光くらいはしろ」

「そうする」


 そう言って、お茶を飲むティーナの尻尾は嬉しそうに動いていた。


「尻尾を掴んだら怒るか?」

「めっちゃ怒る」


 尻尾はまたもやティーナの背中に隠れてしまった。


いつもお読み頂き、ありがとうございます。


東京などの早いところではもう並んでいるかもしれませんが、いよいよ明日、本作のコミック1巻が発売となります。

電子は明日の0時から読めます。


また、私の別作品である私の別作品である『左遷錬金術師の辺境暮らし』の書籍1巻も発売となります。

天才錬金術師の辺境スローライフをぜひとも読んでいただければと思います。(↓にリンクあり)


よろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
久しぶりの登場ですっかり忘れてたわ
ここまで悩む廃嫡理由って何なんだろう?
金貨20枚さん久しぶりだな こういう純粋なキャラは貴重だわ
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