表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~  作者: 出雲大吉
第6章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

250/284

第250話 悪夢


 シルヴィの影に入り、大聖堂を脱出した俺達はシルヴィの超人的な動きで建物の屋根を飛び移りながら移動していた。


「………………」

「………………」

「やっと静かになったけど、ただただ涙を流す2人は怖いわね……」


 リーシャがつぶやくが、怖いのはこっちだ。


「すみませーん。でも、後は陸地でーす」


 シルヴィはそう言うと、最後にくるくる回転しながら地面に着地した。


「殿下ー、大地です!」

「おー、地面だ!」


 すごい!


「申し訳ないです……でも、町中を進むわけにはいかないのです」

「地面っていいなー」

「ですねー」

「私の旦那と友人が壊れた……」


 人は空を飛ばない。

 もう一度、言う。

 人は空を飛ばない。


「本当にごめんなさーい」


 シルヴィは謝ると、そのまま歩いていった。

 すると、町の門までやってくる。

 門の近くには数人の兵士と見覚えのある影の薄い男が待っていた。


「シルヴィア、待っていたぞ」


 影の薄い男であるマルコが近づいてきたシルヴィに声をかける。


「お待たせしました。馬車は?」

「あそこだ」


 マルコが門の外を指差すと、大地をかける偉大なグローリアスが馬車を引いて、待っていた。


「よろしい。マルコさん、これを」


 シルヴィが書類をマルコに渡す。


「これは……本当に黒魔術をしていたのか。なんということを……」


 マルコが書類を読んで、俯いた。


「私達は実際に使うところを見ました」

「そうか……ならば間違いないな。それで他の3人はどうした?」

「私の影にいます。今はちょっと……」


 俺とマリアは抱き合いながら震えている。

 リーシャがそんな俺達の背中をさすってくれていた。


「ケガでもしたのか?」

「いやー、心にちょっと……それよりも、レノーは仕留めましたし、司教のパスカルの部屋には痺れ罠を仕掛けました。それと実験の場所は地下です。後はお任せします」

「そうか! レノーが死んだか!」


 マルコが喜ぶ。


「はい。旦那様の敵ではありませんでした。後はあなたが思うようにしてください。ただし、エーデルタルトを敵に回すとどうなるかをよく覚えておきなさい」

「わかっている。それにお前の報告を聞いて気付いた。他国のことではなく、まずは腐っているここをどうにかしないといけない。私にはそこまでの才がないが、なんとかしてみせる」


 マルコがなんか良いことを言っている気がするが、俺の心には何も響かない。

 何故なら、震えが治まらないから。


「その辺はお任せします。では、私はここまでです」

「エーデルタルトに帰るか?」

「さあ、どうでしょう? 私は旦那様の専属のメイドですから旦那様次第ですね」


 今の俺の気持ちはお前を断頭台に送りたい、だ。


「そうか……わかった。世話になったな。感謝する」

「いえいえ、お気になさらずに。こちらは火の粉を振り払ったにすぎません。もし、感謝の気持ちがあるのならば、テールと戦争をしてください」

「それは無理だよ」


 マルコが苦笑いを浮かべた。


「いえいえ、やってください。では!」


 シルヴィはそう言って手を上げると、門を抜け、馬車に向かう。


「皆の者! 残念ながら強硬派が黒魔術に傾倒していたのは事実だった! すぐに大聖堂を押さえ、関わった者を捕らえろ!」

「「「はっ!」」」


 この地を去ろうとしている俺達を尻目に教国は内乱状態に突入しようとしていた。

 まあ、後は好きにしてくれ。


 シルヴィが馬車の前まで来ると立ち止まったため、俺達はシルヴィの影から出る。


「マリア、地面だぞー」

「本当ですねー」


 影から出た俺とマリアは地面を触った。


「いいから馬車に乗ってよ。早く帰りましょう」

「ホント、すみません……」


 リーシャが俺達を急かし、シルヴィが申し訳なさそうに謝ってくる。


「シルヴィ、覚えておけ。俺は空が嫌いだ。次やったらはるか上空に飛ばしてやるからな」

「申し訳ございませんでした……以後、そのようなことをしないように努めます」


 シルヴィが丁寧に頭を下げ、謝罪した。


「ほら、ロイドもマリアも馬車に乗りましょう。いつまでもここにいるわけにはいかないでしょ」


 リーシャが再び、急かしてきたため、俺達は馬車に乗り込む。

 すると、シルヴィも荷台に乗り、出発した。


「帰りも3、4日かかります。馬車の中は暇でしょうが、ゆっくりとしてください」


 というか、今は夜だな。


「そうだな……辺りが暗いがこのまま進むのか?」

「おそらく争いになりますから少し教国から距離を取ります。ウォルターの関所前で野営ですかね?」


 確かに離れた方が良いだろう。


「わかった。さすがに夜は関所も開いてないだろうし、そこまで行って野営しよう」


 俺が無理を言えば、通してくれるだろうが、それをすると、伯父上や伯母上の耳に入る可能性が高い。


「では、そのように……とはいえ、皆様はお休みください。後は私にお任せを」


 というか、若干、一名はすでに寝てるな。


「そうするか……何かあったら起こせ」

「かしこまりました」

「マリア、こっちに来い。寝よう」


 俺は横になりながらマリアを誘う。


「はい!」


 マリアが俺のところに来ると、横になり、抱きついてきた。


「殿下ー……」

「よしよし……良い夢を見ような」

「無理な気がします……」


 俺もそう思う……

 せめて、1人ではなく、2人で落ちよう。


お読み頂き、ありがとうございます。

この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。


よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新作】
宮廷錬金術師の自由気ままな異世界旅 ~うっかりエリクサーを作ったら捕まりかけたので他国に逃げます~

【予約受付中】
~漫画~
廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 2 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~(1)

【新刊】
~書籍~
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(1)
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(2)

【販売中】
~書籍~
廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~(1)
廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~(2)

~漫画~
廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 1 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~

【現在連載中の作品】
その子供、伝説の剣聖につき (カクヨムネクスト)

週末のんびり異世界冒険譚 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~

バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~

最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~

【漫画連載中】
地獄の沙汰も黄金次第 ~会社をクビになったけど、錬金術とかいうチートスキルを手に入れたので人生一発逆転を目指します~
がうがうモンスター+
ニコニコ漫画

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~
カドコミ
ニコニコ漫画

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~
カドコミ
ニコニコ漫画

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~
ガンガンONLINE

最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜
カドコミ
ニコニコ漫画

【カクヨムサポーターリンク集】
https://x.gd/Sfaua
― 新着の感想 ―
> 俺の心には何も響かない。 何故なら、震えが治まらないから。 上手い例え。確かに元から振動していれば響きようが無いな。
段差くらいなら玉ヒュンたけど、 トラウマ物なら魂ヒュンだよね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ