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廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~  作者: 出雲大吉
第6章

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第248話 俺ね


「何あれ? 目が光って気持ち悪いんだけど?」


 リーシャが影の中から怪しく笑っているレノーを指差しながら聞いてくる。


「あれは催眠魔法だな…………ディスペル!」


 俺はマリアの影から指を出し、解除の魔法をマリアにかけた。


『マリア様ー、レノーの目が光っていますけど、決して、反応しないでくださいねー。催眠魔法です』


 俺がディスペルをかけると、シルヴィが念話でマリアに伝える。


『……え? 催眠ですか!?』

『旦那様がディスペルをかけましたから大丈夫ですよー。向こうが何かを聞いてくるまでは黙っててくださーい』

『わ、わかりました』


 油断を誘うわけだな。


「ふぅ……パスカルなんぞに任せんで最初からこうすれば良かったか……」


 レノーがそう言って立ち上がり、マリアに近づいてきた。


「さて、マリア、正直に言え。何故、私達の申し出を断る?」

「……スコールズ家にメリットがないと判断したからです」


 マリアが抑揚のないしゃべり方で答える。


「ハァ……やはり貴族か……メリット、デメリットしか頭にない」


 当たり前だろ。

 別に貴族に限ったことではないし、庶民も商人もそうだ。

 そして、こいつらもだ。


「さて、どうするか……このまま催眠状態にするわけにはいかんしな……」


 考えもなく、魔法を使ったのかよ……

 アホだな。


「少し時間がかかるが、催眠を深くし、忠実な奴隷とするか……」


 はい、死刑。


「ふぅ……」


 レノーはため息をつくと、ベッドの方に行き、腰かけ、目頭を押さえる。


「さすがにきついか……しかし、最近、まったく疲れが取れない」


 あー……これ、黒魔術のやりすぎだわ。

 生命力が減っているから疲れたままなんだ。


「休むか……マリア、服を脱いでこっちに来い」

「死ね」


 マリアがものすごい低い声で即答した。


「……何?」


 レノーが顔を上げて聞き返すと同時にシルヴィが影から飛び出した。


「ロイド、何してんの!? 行くわよ!」


 いや、俺は奇襲を考えていたんだが……

 行くならもっと前に行ってるし。


「行くか……」


 俺は立ち上がると、リーシャと共に影から出る。

 すると、マリアがすぐに俺の背中に隠れた。


「シルヴィア!? それにお前達は誰だ!?」


 急に出てきた俺達を見て、レノーがうろたえる。


「よう、レノー大司教。俺の妻に服を脱げと言ったか? それはどういう意味だ?」


 俺は先に飛び出たシルヴィより前に出て、聞く。


「なっ!? き、貴様、ケビン・スコールズか!?」


 バカだ……


「俺はケビンではないぞ」


 ケビンはもっとごついし、背も高い。


「何!? 貴様、何者だ!?」

「口を慎め、庶民。不敬であるぞ。このロイド・ロンズデールに何という口の利き方をするんだ」

「ロイド・ロンズデール……エーデルタルトのバカ王子か!」


 なんでこんな奴にバカ呼ばわりされなきゃならんのだろう……


「下郎に口の利き方を説いても無駄だったな」

「おのれ! 部下を守りにきたか!」

「アホ。部下じゃなくて妻だと言っただろう。お前は王族に服を脱げとほざいたんだ。死刑だ」


 まあ、貴族に言っても死刑だが……


「チッ! 貴様がここにいるということは裏切ったかシルヴィア!」


 レノーが今度はシルヴィを睨む。


「裏切るも何も仲間になった覚えはありませんよー。エーデルタルト最高貴族のイーストン家の私が何故、あなた程度の人間の仲間にならないといけないんですー?」


 なお、最高貴族云々のくだりで自称最高貴族のスミュール家長女が睨みつけた。


「貴様もエーデルタルトか! 本当にロクなのがおらん国だ!」


 そりゃここだろ。


「お前は伯父上を狙い、俺に刺客を向け、そして、マリアに服を脱げと言った。死ね」

「死ぬのは貴様だっ!」


 レノーはそう叫びながら手を俺に向けてくる。

 すると、レノーの手のひらが裂け、血が飛び出てきた。


「ディスペル」


 俺が解除の魔法を使うと、飛んできた血が床に散らばる。


「なっ!?」

「自傷行為は一人でいる時にやれ。汚らしい血を見せるな」

「おのれ! 魔術師め!」


 レノーの目が血走ってきた。


「ほら、どうした? 神の奇跡とやらを見せてくれ」

「黙れっ! 神に見放された魔術師め! 神の力を思い知るがいい!」


 レノーが怒鳴りながら黒い火球を浮かび上がらせる。


「しょうもない……炎はもっと赤く美しいものだぞ」


 俺はレノーが出した黒い火球よりも大きな火球を出した。


「クソッ!」


 レノーは自棄になって、火球を飛ばしてくる。

 だが、俺が同じように飛ばした火球に消し飛ばされ、そのまま火球がレノーのもとに飛んでいった。


「ぐっ!」


 レノーは火球が当たる寸前、手のひらから血を出し、俺の火球に当てる。

 すると、俺の火球が跡形もなく、消滅した。


「はぁ、はぁ……」


 俺の火魔法を防いだレノーは息も絶え絶えだ。


「俺の魔法を消すなんて素晴らしいじゃないか。次は何を見せてくれるんだ?」


 俺がそう聞くと、レノーが片手で頭を押さえながらふらつく。


「くっ! こんな時に頭痛か!」


 ホント、バカだな……


「どうした? ヒールがいるか?」

「神を舐めるな!」


 レノーがまたもや怒鳴りながら俺に向かって、手をかかげた。

 だが、何も起こらない。


「なんでだ!?」

「相手の血を操作し、爆発させる魔法だな? あれは周囲が汚れるからおすすめせんぞ」


 残念ながら血の操作の魔法は俺も使える。

 前に解体が楽になるかもってウサギに使ったことがあるのだ。

 なお、その日はウサギが罠にかからなかったということにした。


「な、何故!?」

「実は俺も神から奇跡をもらったんだ」


 俺はさっきレノーが出したと同じように黒い火球を浮かび上がらせる。


「く、黒魔術師だったのか。私の奇跡を打ち消したか!」


 自分は奇跡で俺は黒魔術かい。


「頑張って躱せよ。まあ、お前はもう無理だろうがな」

「黙れ! その程度の魔法を防げないはずがない!」

「そうか、そうか。では、やってみせてくれ」


 俺は黒い火球をレノーに向かって飛ばす。

 すると、レノーが手をかかげた。


「え? か、身体が……」


 何かの魔法を使おうとしたレノーは頭がふらつき、足元もおぼつかない状態になる。

 そうこうしていると、黒い火球がレノーに直撃し、黒炎がレノーを包んでいった。


「がっ! 熱いっ……」


 レノーは短い言葉を言い残し、炎に焼かれると、前のめりに倒れ、黒い物体へと姿を変えた。


「たいした魔力もないのに魔法を使いすぎだ、アホ」


 血液や生命力を媒体にしていたため、どんどんと弱っていき、勝手に自滅しただけだ。


「身の程知らずめ」


 マリアに服を脱げだ?

 それを言っていいのは世界に一人しかいないのだ。


お読み頂き、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
皇子…。カッコいぃ!! なんか久々にめっちゃカッコ良かった気がする!!
これも面白いです。出雲さんの作品は私の好みです。
マリアの服を脱がせれるのはロイドだけでなく、リーシャも正妻だから権利がないかな!? ほら夜のお相手のときに二人同時とかなら脱がし合いをしないかな?
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