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廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~  作者: 出雲大吉
第6章

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第245話 作戦


 俺とシルヴィは地下から戻ると、パスカルの部屋に向かう。


『旦那様、申し訳ございません。しゃべり方を変えますが、お気になさらないでください』


 そういえば、俺の目にはシルヴィの本当の姿が映っているが、周りからは黒づくめの男に見えているんだったな。


『問題ない。そのまま行け』


 女のままが良い。

 別に女が大好きというわけでないが、こいつの男の姿の方は敵という印象が強いのだ。


『では、このままで……』


 シルヴィは頷くと、扉をノックする。

 そして、パスカルの許可を得る前に扉を開けた。


「うおっ! 急に入ってくるな! というか、鍵はどうした!?」


 少し腰を浮かしていたパスカルが驚く。


「鍵は開けた」

「お前なー……なんでいちいち驚かせるんだ?」


 パスカルが呆れる。


「有能性をアピールしているんだ。給料を上げてくれ」

「それは大司教様に言え。私は知らん」


 どうでもいいけど、シルヴィって、給料をもらっているのか……


「そうか……それで? 何の用だ? 俺も穏健派共の調査だったり、マリアの世話だったりで働きっぱなしだから眠いんだが……」

「すぐに終わる。話を聞いたマリア嬢はどうだ?」

「微妙だな……エーデルタルトは武の国だから魔法自体があまり好まれない。その辺を気にしているようだ」


 魔法が好まれないのは事実だ。


「そうか……無理そうか?」

「このままでは無理かもな……」

「うーむ……しかし、黒魔術を知られた以上は絶対に引き入れんとマズい。無理なら殺すか?」


 おい!

 お前を殺すぞ!


『旦那様ー、落ち着いてくださーい』


 わかってるよ。


「それはやめた方がいい。エーデルタルトの貴族は身内を重視するから絶対に復讐に来るぞ」

「この教国とエーデルタルトの間にはテールがあるから簡単には来れんだろ」

「ウォルターを忘れたか?」


 エーデルタルトは教国に面していないが、エーデルタルトの同盟国側であるウォルターは隣国だ。


「クソッ! そうだったな……本当に邪魔な国だ」

「こうなった以上は引き入れる他にない。上手くいけば、スコールズ家だけでなく、同じ派閥の貴族にも売れるぞ」

「そうだな……しかし、私では無理そうだな。大司教様に頼むか」


 シルヴィが誘導する前に自分でその結論に至ったか……


「いいかもな。大司教様に説いてもらえば頷くかもしれん。マリアは貴族だが、男爵家の令嬢だからそこまで押しに強くない」


 ちなみに、別にそんなことはない。

 大司教が教国でどんなに偉かろうと、自国の貴族ではないから絶対に自分の考えを変えることはない。

 そもそも、エーデルタルトの女子は高潔を重視するから権力に屈しはしないし、逆にどんな大貴族だろうが、王族だろうが、令嬢に強くは出られない。

 だって、あいつら、すぐにナイフを取り出すんだもん。


「わかった。このことは大司教様に報告しよう。明日はお前もマリア嬢も休みにするから部屋にいろ」


 明日か……


「了解した」

「うむ。以上だ。帰って寝ろ」

「そうさせてもらう。じゃあな」


 シルヴィはそう言うと、踵を返し、普通に扉を開けて、部屋から出ていった。


『今回は消えんのか?』

『いつもやったら飽きちゃうじゃないですかー。たまにやるからいいんですよ』


 サービス精神が旺盛だな……


『まあいい。戻るぞ。腹減ったわ』

『ですねー。では、戻ります』


 シルヴィはそう言うと、歩いて寮に戻っていった。


 俺とシルヴィは寮の部屋に戻ると、遅くなった夕食を食べながらリーシャとマリアに地下のことと先程のパスカルとの会話を伝える。

 なお、シルヴィは寮に戻る前にカトリナの顔に戻していた。


「人体実験ねー……一応、聞くけど、ロイドはそんなことをしてないわよね?」


 リーシャが聞いてくる。


「するわけないだろ。そんなもんは才能のない奴がやることだ。俺はエーデルタルト一の魔術師なんだぞ」


 というか、そんな王太子なんか最悪だろう。

 王になっても暗君まっしぐら。


「まあ、そうよねー……あなたは派手なのが好きそうだし」


 そうだよ。

 だから火魔法が好きなのだ。


「殿下、明日は休みということですが、明日に大司教から連絡があるということですか?」


 今度はマリアが聞いてきた。


「そうなるだろうな……シルヴィ、それまでにマルコに伝えておけ。俺達はレノーを討ったらすぐにこの地を去る」

「それが良いでしょうね……わかりました。脱出の手配も頼んでおきます。馬車を置いておく訳にはいかないですしね」


 そりゃそうだ。

 ラウラが怒るし、こんなところに置いていかれるグローリアスが可哀想である。


「頼むわ。そういう訳で明日は待機な」

「了解です」

「明日はゆっくり眠れるわねー」


 マリアとリーシャが頷く。


「旦那様、私は少し出てきますのでお先にお休みください」


 夕食を食べ終えたシルヴィが立ち上がった。


「頼むわ。ボーナスは出してやるから」


 ヒラリーが……


「あれは本心ではないんですがね……お金のためにやっている訳ではないので」

「もらえるもんはもらっとけ。どうせ、俺の金じゃない」

「ふふっ、忠誠心が下がりそうなセリフですねー。では、私はこれで……」


 シルヴィは笑いながらそう言うと、部屋から出ていく。

 俺達は明日に備えて、早めに休むことにし、さっさと風呂に入ると、就寝した。


いつもお読みいただきありがとうございます。

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よろしくお願いします!

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