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廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~  作者: 出雲大吉
第6章

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244/284

第244話 闇


 俺とシルヴィが地下にある別の部屋に入ると、そこには解体された死体があった。


「心臓、脳、そして、血液を採取していますね」

「手慣れているな。俺のウサギの解体より上手い」

「お医者様ですからねー」


 やはりやったのはエドモンか……


「病死や事故死した者か?」

「そう思いますか?」

「いや、まったく思わない。これは子供だな……」


 解体された死体は小さく、とても大人とは思えない。


「でしょうね。男の子です」

「そういえば、スラムで子供がいなくなったって訴えていた母親がいたな」


 兵士と揉めていた女だ。


「この子でしょうね」


 なるほどね。


「あいつらがスラムを解体しない理由がわかった」


 いなくなっても問題ない人間が集まっているからだろう。


「黒魔術は自身で使うのは危険ですからね。実験や材料のためにスラムから仕入れているのでしょう」


 神の名を言い訳にやりたい放題だな。


「これもマルコは知らないわけか……」

「ですね」

「教えんのか?」

「教えたら激高して勝てない戦いを仕掛けます。ただでさえ、穏健派は少数なのに相手は黒魔術ですよ? 勝ち目はゼロです」


 確かに無理か……

 マルコは7対3で負けると言っていたが、これは9対1もあればいい方だな。


「ここまでするか……同じ神に祈る信者だろうに」

「おそらくですが、自分達の信仰がいつまで経っても浸透しないことに焦ってこうなったんでしょう」

「自分達の政治能力のなさを棚に上げたか……」

「神が邪魔でしたね。神を信仰する自分達が絶対的に正しいと思っていますから」


 失敗は各国の王侯貴族達にまったく響かなかったことだろう。

 貴族や王族は恵まれているから神にすがることはほとんどない。

 だから利益がなければ動かないのだ。

 それを理解しなければ何も変わらないのは当たり前だというのに……

 とはいえ、その信仰が第一だから仕方がないことではある。


「何とかしようと思って、黒魔術にすがったわけか……シルヴィ、あいつらは精神がやられてしまったのか?」

「パスカルはどうでしょうね? ですが、旦那様もご覧になったからわかっているでしょうが、神父のエドモンは完全に黒魔術に犯され、狂っていますね」


 エドモンは人柄も良く、優しそうな爺さんだった。

 医者になったくらいだし、人の命を救う気持ちもあるだろう。

 だが、さっきの姿は魔法に取り憑かれた末期の黒魔術師の姿そのものだった。


 それに何より……


「この子供だけではないのだろう?」


 俺は解体された子供の死体を見ながら聞く。


「はい。スラムで何人いなくなろうと、誰も気にしませんから。まあ、次はあの母親でしょうね」


 俺もそう思う。


「シルヴィ、強硬派は潰すぞ。あいつらはそのうち、神の降臨とかほざいて、悪魔でも召喚しかねん」

「ありえますねー。信仰と黒魔術の相性の悪さが出てます。早急に対処する必要があるでしょう」


 黒魔術を神の奇跡とし、躊躇しなくなってるからなー。

 このままでは何をやりだすかわからん。


「一番良いのは穏健派のマルコにやらせることだな」

「そうですね。大司教レノーを仕留めましょう。トップを失えばそれで終わりです。あのパスカルには人を纏める能力はありませんし、黒魔術を知っているのは過激派の中でも一部だけです。トップを失い、黒魔術を知れば、ほとんどの者がマルコさんにつくでしょう」


 確かにあのパスカルでは無理だろうな。


「シルヴィ、マルコにこのことを伝えろ」

「かしこまりました。レノーはいかがします? 私がやりましょうか?」


 シルヴィに任せるか……


「難しいか?」

「正直なことを申せば、私は戦闘タイプの魔術師ではありません。暗殺もやろうと思えばできますが、方法がナイフになります。レノーは黒魔術ですので、難しいかと……もちろん、命じられればやりますし、刺し違えても仕留めることは約束いたしましょう」


 たかが、教国のバカ相手にシルヴィを失うわけにはいかんか……

 有能だし、これからも働いてもらわなければならない。

 それに一応、親戚だしなー……


「いいだろう。俺がやる。黒魔術ごときに頼る雑魚など、俺の敵ではない」

「不甲斐なくて申し訳ありません」

「いい。お前には別の仕事がある」

「そうですね。旦那様のお世話係が私の本業です」


 いや、隠密……まあ、いいか。

 ジャックがいるし。


「シルヴィ、パスカルのもとに行くぞ」

「かしこまりました。どうやって、レノーに近づきましょうか?」


 そうだなー……


「やはりマリアが悩んでいることを伝えることだな。むしろ、あまり前向きではないという感じのことを言え」

「パスカルでは説得が無理そうだと思わせればいいのですね?」

「ああ。多分、それでレノーが出てくる」


 強硬派からしたらマリアは金を持っているエーデルタルトの大貴族に近づく大事な駒だ。

 絶対に諦めないだろう。


「わかりました。そのように話します……では、旦那様、私の下にお戻りください」


 そう言われたのでシルヴィアの正面に行くと、身体がゆっくりと沈んでいく。


「これ、もっと速くできんか?」


 徐々に沈んでいく感じは地獄に堕ちるとは思わないが、沼に沈んでいくみたいで微妙に嫌だ。


「できますけど、危ないですよ。落とし穴みたいなものです。あたおか女は大丈夫でしょうけど、旦那様はちょっと……」


 俺がそんなに運動神経がないと思ってるのかね?

 確かに剣術の才能はないが、訓練は積んできたし、そこそこ強いんだぞ……多分。


 俺の身体が完全にシルヴィの影に沈むと、シルヴィが部屋を出て、階段を昇る。

 そして、そのまま歩いていき、パスカルの部屋に向かった。


お読み頂き、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
そろそろ終わりが見えてきたけど、ロイドを連れて来ないといけなかった理由はなんだろう? エーデルタルト本国との関わりも分からないし、遠方の宗教国家が腐っていたってエーデルタルトは関係ないよね?
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