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廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~  作者: 出雲大吉
第6章

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第242話 エーデルタルトの王族は黒魔術師ばかり


 マリアはパスカルの提案を聞いて、悩むフリをしながら下を向く。


『殿下、どうしましょう?』

『大体の話はわかった。とりあえずは保留にしろ。マリアは答えを濁すんだ。シルヴィ、お前が助け舟を出せ』

『はーい』

『お任せを』


 俺が指示を出すと、2人が答えた。

 そして、マリアが顔を上げる。


「司教様、正直、いきなりのことで頭が混乱しています」

「そうでしょうなー……ショックなことが多かったかもしれません。ですが、あなたやスコールズ家にもメリットがあることだけは理解してほしい」


 そんなもんねーよ。


「パスカル様、マリア嬢はすぐには答えを出せないでしょう。仕事終わりで疲れているでしょうし、一晩、ゆっくり考えさせては?」


 シルヴィがパスカルに助言した。


「確かに答えを急いだかもしれんな……マリア殿、一晩とは言わず、いくらでも考えてくだされ。お疲れのところを申し訳ない」

「いえ。すみません……」


 マリアが申し訳なさそうな顔をする。


「シルヴィア、マリア殿と共に寮に戻りなさい」

「はい…………では、マリア、戻りましょう」

「わかりました」


 マリアが頷くと、2人は部屋から退室した。

 そして、すぐそばの階段を上がると、そのまま歩いて大聖堂を出る。


 2人はまっすぐ寮には戻らず、4人分の食料を買ってから寮の自分達の部屋に戻った。

 部屋に戻ると、俺とリーシャはマリアの影から出る。


「あー、疲れた」

「本当よねー」


 俺とリーシャは影から出ると、すぐにテーブルについた。


「マリア様もお疲れでしょう。お座りください」


 シルヴィがそう言って、椅子を引くと、マリアも座る。


「さて、面白い話だったな」

「全然、面白くないですよ! なーにが神の奇跡ですか! ただの黒魔術だし、それを使うのに神の名を利用しているだけじゃないですか!」


 マリアが怒鳴った。


「まあ、そうだな」

「聞いてて、気持ち悪かったわね。同じ黒魔術を使っていたロイドやアシュリー様とは違う怖さがあったわ」


 こら、俺と叔母上を危険視するな。


「旦那様もアシュリー様も自信家ですからね。御二人共、自分の魔法が最高で絶対と思っておられますからあそこまで黒魔術に妄信していません。それに実は黒魔術は限定的にしか使えませんから黒魔術に傾倒する魔術師はあまりいないのです」


 まあ、俺はエーデルタルト一の魔術師だからな。


「あれ? そうなんです? 規制が緩かった昔は黒魔術に傾倒する悪い魔術師が多かったって聞いてますけど……」


 マリアがシルヴィに聞く。


「それは魔法を使えない者が黒魔術にハマってしまったケースですね。魔法の使い方もロクに知らない者が魔法を使えばそうなります。私もですが、旦那様はちゃんと魔術の基礎を学ばれていますからそういうことにはなりません」

「そうだぞ。俺達魔術師は最初に魔力のコントロールを学ぶんだ。これがないと魔力が暴走し、精神に異常をきたすんだよ」


 ……と言われている。

 実際は知らん。


「あー、なるほど。だからクリフさんやヘレナさんに熱心に魔力のコントロールを学ばせていたんですね」


 マリアが納得した。


「そうだ。叔母上は絶対に教えてないと思ったからな。昔、俺が魔法のことを聞きにいった時も『こうやってこう!』って言ってきた人だから……」


 天才肌は指導者に向かないという典型だった。


「ロイド、教国のイカレっぷりはわかったけど、これからどうするの?」


 リーシャが聞いてくる。


「そうだなー……シルヴィ、このことをマルコは知っているのか?」

「いえ、知りません。あれは強硬派の独断ですのでね。もちろん、教皇も知りません」


 強硬派が暴走しているだけか……


「これをマルコに伝えて、背信者として強硬派を穏健派に討たせるべきだな……そうなると、やはり邪魔なのはレノーとかいう大司教か……マリア、少し、危険な橋は渡れるか?」

「大丈夫です。殿下やリーシャ様がおられますし、問題ありません」


 そうなると、マリアを餌にレノーを引きずり出すか……


「シルヴィ、マリアが悩んでいることをパスカルに伝えろ」

「かしこまりました。早速ですが、パスカルのもとに行ってまいります。実は先程、来るようにと合図がありました」

「ふーん……」


 見てなかったな。


「旦那様も来られますか?」


 こいつはわかっているな。

 俺も確認したいことがあるのだ。


「そうする。リーシャ、マリア、お前らは先に夕食を食べて、休んでいろ」

「わかったわ」

「了解です」


 2人が頷くのを見ると、立ち上がり、シルヴィを見る。


「では、旦那様、私の影にどうぞー。えーい!」


 シルヴィの変な掛け声と共に俺の身体が沈みだした。


「そういや、一応、聞いてみるが、お前は黒魔術を使えるのか?」

「これが黒魔術ですよ」


 やっぱり……

 空間魔法らしいが、聞いたことがないと思ったわ。


「大丈夫か?」

「問題ありません。たいした負荷はないですし、易しい方ですよ」

「ならいいが……」


 まあ、こいつの魔術師としての実力を考えると、問題ないか。


「リーシャ様、私が知っている魔術師って皆、黒魔術を使っているんですけど……」

「ロイドにアシュリー様に媚び女…………多分、ラウラも使えるでしょうね」


 だと思うわ。


「黒魔術はそんなに悪い魔法ではないんですよ。薬と一緒で用法と容量を間違えなければ、普通の魔法と一緒です」

「そうそう」


 シルヴィは正論を言うなー。


「詳しくないけど、魔術師ってロクなのがいない気がするわね…………」

「全世界の魔術師を代表して言うが、お前に言われたくない」


 シルヴィもうんうんと頷いている…………

 ついでに俺達を非難していたマリアも頷いていたが、リーシャに睨まれ、誤魔化すようにお茶を飲み始めた。


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