表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~  作者: 出雲大吉
第6章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

239/284

第239話 いじめをしそうな女


 シルヴィとマリアが寮を出ると、すでに夕方になっていた。

 2人はそのまま大聖堂の方に行くと、パスカルの部屋に向かう。

 そして、パスカルの部屋の前まで来ると、シルヴィが扉をノックをした。


『誰だ?』


 部屋の中からパスカルの声が聞こえる。


「シルヴィアです。マリア嬢をお連れしました」

『そうか……入ってくれ』


 入室の許可を得たシルヴィが部屋に入ると、マリアも後に続く。

 マリアが部屋に入ったことで俺とリーシャも部屋に入ったのだが、部屋の主であるパスカルはデスクにつきながら後ろの窓を見ていた。


「何をしているんです?」

「あ、普通にそっちから来るのか」


 あ、シルヴィの奴、リーシャにやったことと同じことをパスカルにもしたな……


「当たり前じゃないですか。普通は扉から来ます」

「…………そうだな」


 パスカルは何を言いたそうな顔をしているが、追及はやめたようだ。


「司教様、お呼びとのことですが、何用でしょう?」


 マリアが2人のやりとりを無視して、パスカルに聞く。


「うむ。実は大切な話があるのだ」

「大切、ですか……?」


 マリアはこういうのが上手いんだよなー。


「そうだ。マリア殿、あなたは結婚するという話だが、相手はスコールズ家で合ってるかね?」

「はい。エーデルタルトのスコールズ伯爵家に側室として、輿入れします」

「側室かね?」

「そうですね。私の家は男爵家であり、家柄的には身分が低いです。それでも側室に迎えてくれるのはケビン様のご厚意でしょう」


 なんかちょっとケビンを殴りたくなったな。

 まあ、俺が作った設定なんだけど。


「なるほど……私は貴族のことには詳しくないが、あなたのような美しく清らかな方でも側室止まりなのかね?」


 ん?


「過分な評価、ありがとうございます。ですが、こればかりは致し方ありません」

「ふーむ……」


 パスカルが何かを考え始めた。


『マリア、側室が不満なことを少しだけ出せ。正室の性格が悪いとかでいい』

『わかりました』


 俺が影から念話で指示をすると、マリアが答える。


「男爵家から伯爵家に嫁ぐのは大抵、妾です。ですが、学生時代から恋仲だったケビン様が無理を言ったのですよ。本当は正室だったんですけど……」


 マリアが最後だけ声のトーンを落とした。


「そうなのかね? しかし、なんでまた正室から側室に?」


 パスカルが食いつく。


「政略結婚というやつですね。そして、正室の方は公爵家なんですよ。とてもではないですが、私とは身分が違いすぎます」

「それは…………苦労するのでは?」

「そう、ですね…………いえ、なんでもないです」


 こいつ、マジで上手いわ。

 さすがは聖女を自称する賄賂娘。


「マリア殿、ここは神聖なる神のもとである大聖堂だ。神に守られているし、愚痴をこぼすのも悪くないものだぞ。もちろん、私もシルヴィアも他言せん」

「はい……実は正室の方は同じ貴族学校の同級生だったんですけど、いじめられていたんです」


 なんかモデルがいそうな嘘だな……


「それは大変ですなー……」

「身分の差がありますし、当時は今だけだと思ったので耐えました。ですが、同じところに嫁ぐとなると…………」

「それは…………」


 パスカルが言葉を失くす。


「あの方は自分勝手でわがままな人なんです。ですが、美しさだけは持っている腐った女です」


 俺はなんとなくリーシャを見た。


「私のことを言ってるわよね?」

「多分……」


 他にいないだろ。


「私、いじめてないわよ」


 まあ、唯一の友達だし、そうだろうよ。


「嘘だから。それを言うならケビンも嘘だし、学生時代に恋仲だったのも嘘だ。気にするな」

「まあねー……」


 リーシャは微妙に納得できないようだ。

 気持ちはわかる。


「マリア殿、正室に取って代わるという気持ちはないですか?」


 パスカルが本題に入った。

 それにいつのまにか言葉使いも丁寧になっている。


「取って代わる? それは無理です。エーデルタルトでは身分が絶対なんです。ましてや、正室の家は絶対的な権力を持つ大貴族です」

「功績があればできるのでは?」


 こいつ、本当に何も知らんな。

 どれだけ美人であろうが、実力があろうが、貴族の結婚は家柄が絶対だ。


『マリア、こいつの話に合わせろ』

『了解です!』


 別に本当のことを話す必要はない。

 要はパスカルから提案を引き出せばいいだけだ。


「功績ですか……ですが、そのような功績は私には……」


 マリアが俯く。

 すると、マリアが下を見ていることをいいことにパスカルがニヤリと笑った。


「実は私はスコールズ家と取引をしたいと思っています。あなたにはその橋渡し役をお願いしたい」

「取引ですか? 私が言うのも何ですが、スコールズ家は大貴族でお金は豊富にあります。それにあまり信心深くは……」

「もちろん、それはわかっています。こちらはある商品を売り込みたいと思っているのですよ」


 商品?


「売り込む商品があるんですか? 失礼ですけど、町を見る限り、そんなものは…………それにここからエーデルタルトは遠いですし、何より、エーデルタルトと教国の間には我らの敵国であるテールがあります。ですから輸送が難しいかと……」

「ははは。そうですな。確かにそうです。それが物ならばですが……」


 パスカルが自信満々に笑う。


「物ではないのですか? それは一体……」

「実はそれを見てほしくてお呼びしたのです。ついてきてくれますかな?」


 パスカルはそう言って立ち上がった。


『殿下、どうしましょう?』

『シルヴィは知っているはずだから問題ない。それにもしもの時はお前をいじめる極悪正室が動く』

『それもそうですね…………いや、私が言っていたのはあくまで空想上の人でリーシャ様ではないですよ!』


 マリアが慌てて否定した。


「私よね?」


 リーシャが聞いてくる。


「うん」


 お前だ。


お読み頂き、ありがとうございます。

この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。


よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新作】
宮廷錬金術師の自由気ままな異世界旅 ~うっかりエリクサーを作ったら捕まりかけたので他国に逃げます~

【予約受付中】
~漫画~
廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 2 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~(1)

【新刊】
~書籍~
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(1)
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(2)

【販売中】
~書籍~
廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~(1)
廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~(2)

~漫画~
廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 1 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~

【現在連載中の作品】
その子供、伝説の剣聖につき (カクヨムネクスト)

週末のんびり異世界冒険譚 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~

バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~

最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~

【漫画連載中】
地獄の沙汰も黄金次第 ~会社をクビになったけど、錬金術とかいうチートスキルを手に入れたので人生一発逆転を目指します~
がうがうモンスター+
ニコニコ漫画

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~
カドコミ
ニコニコ漫画

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~
カドコミ
ニコニコ漫画

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~
ガンガンONLINE

最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜
カドコミ
ニコニコ漫画

【カクヨムサポーターリンク集】
https://x.gd/Sfaua
― 新着の感想 ―
リーシャからすると、他の女どもはマリア以外眼中にない状態だっただろうからやってないって言いたいだろうね マリアはいつかやられるかって思ってただろうからホントっぽく言えるんだろうね
たまに出るヒロインズのこのドロドロとした感じ好き シルヴィも混ざっていいのよ
真実の中に一部嘘を紛らせるのと効果が高いのは、古事記にも書かれてるからね しょうがない # 孫氏にもあるとか言うと、本当に書かれてそうで困るw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ