表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~  作者: 出雲大吉
第6章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

228/285

第228話 犬猿の仲


 俺はリーシャに足を掴まれ、引っ張られると、沈んでいくスピードが速まっていく。


『早く来ーい……』

「離せー!」


 亡霊めー!


「なんか楽しそうですね」

「仲が良いんですよ」


 シルヴィとマリアが呆れていると、俺は完全にマリアの下に沈んでいった。

 すると、目と鼻の先にリーシャのクソ美人な顔があった。


「急にお前の顔を見るとびっくりするな」

「なんでよ?」

「いや、顔面100点だなーっと」

「ふん! あなたって顔しか褒めないわよね!」


 リーシャが頬を染めながらぷいっと横を向く。


「マリア様ー、下でイチャついてますよー」

「そうなんですか? 抜け駆けです!」


 マリアが憤慨する。


「いや、あなたは昨日、ロイドと寝てたでしょうが……」


 リーシャが見上げながら睨んだ。


「こっちの声は聞こえないらしいぞ」

「そうなの?」


 リーシャが俺を見てくる。


 うーん、近い……


『シルヴィ、リーシャが近いんだけど、もう少し空間を広くできないか?』

『できますよー。でも、近い方が良いでしょ? なお、この念話は私と旦那様のみです』

『まあ、このままでいいわ』


 うん、美人だ。


「らしいぞ。リーシャ、上がろう」

「そうね。だいたいわかったわ」


 俺達は順番にマリアの影から出る。


「奇妙な体験だったわ」

「だろ?」

「あのー、私は寝てもいいですかね? 目が痛いんですけど……」


 俺とリーシャがマリアの影から出ると、シルヴィが聞いてきた。


「寝ろ」

「そうね。ご苦労様」


 俺とリーシャが許可を出すと、シルヴィが俺のベッドに行き、メイド服のまま横になる。


「方針が決まったら起こしてください。それではおやすみー」


 シルヴィはそう言うと、掛け布団を被った。


「さて、リーシャ、どうだった?」


 俺は椅子に腰かけながら聞く。


「そうねー……これならいけるかもね。影に潜りながらマリアと念話できるのは良いわ。アドバイスもできるし」

「じゃあ、この案で良いな?」

「マリア、大丈夫?」


 リーシャがマリアに確認する。


「はい。私もそれでいいと思っています。さっさと終わらせて、平和な日々を過ごしましょう」


 マリアは良い子だなー。


「わかった。じゃあ、その案でいきましょう……シルヴィ!」


 いや、寝かせてやれよ……


「寝てまーす。昼まで起こさないでくださーい……」


 布団の中からくぐもったシルヴィの声が聞こえてきた。


「情けないわねー……」


 お前が言うな。


『旦那様ー、いびりですよー。助けてー』


 シルヴィから念話が届く。


『いいから寝ろ』




 ◆◇◆




 俺達が話を終え、お茶会を再開すると、昼になった。

 すると、俺のベッドで寝ていたシルヴィが掛け布団をどかし、上半身を起こす。


「おはよう」


 俺はまだ眠そうなシルヴィに声をかけた。


「おはようございます……」

「シルヴィさん、メイド服で寝ると、シワになっちゃいますよ」


 マリアが忠告する。


「あー、そうねー……後で着替えるか」


 どうでもいいけど、こいつ、完全に素だな。


「親父さんは元気か?」

「何を言っているんですか、殿下。お父様は…………よいしょっと」


 シルヴィは途中でしゃべるのをやめ、ベッドから降りた。


「さてさてー、皆さん! 結論は出ましたかー?」


 シルヴィが何事もなかったかのように笑顔で聞いてくる。


「俺とリーシャがマリアの影に隠れて、マリアを潜入させる。お前はマルコに話して、上手い具合に調整しろ」

「かしこまりー!」


 シルヴィは服や髪を整えながら慌てて、部屋から出ていった。


「殿下、シルヴィさんやシルヴィさんのお父さんを知っているんですか?」


 マリアが聞いてくる。


「もちろん知っている。シルヴィ・イーストン……俺の又従姉だな」

「イーストン…………ひえ! イーストンって先々代の王妃様を出した公爵家じゃないですか! 何をしているんですか!?」

「あそこはああいう家なんだ。エーデルタルトの暗部だな」


 ちなみに、同じ公爵の位を持つスミュール家とは死ぬほど仲が悪い。

 先々代王妃、つまり俺の祖母を王家に嫁がせたことが原因だ。

 本来ならスミュール家から王妃を出す予定だったのに色々あって、なくなってしまったのである。

 それらが尾を引いて、今でも両家は非常に仲が悪い。


「うわー……リーシャ様が嫌っている理由がよくわかりました」

「あれはイーストン家の者ではないわ。イーストン家のシルヴィはとっくの前に死んでいるもの。だからあれはシルヴィを騙る偽者でしょう。殺すべきね」


 殺したいらしい。

 本物だってわかっているくせに……


「落ち着け、リーシャ。そんなに嫌いか?」

「前も言わなかった? あの媚び女がロイドを見る目は泥棒猫よ。それに子供の頃に会ったことがあるけど、クソ女だったわ。人のことを頭がおかしいって言ってきたし」


 それは今でも言っている。

 いっつもあたおか女って呼んでるし。


「あのー、スミュール家とイーストン家の仲が悪いのは私も存じていますが、ここはひとまず置いておきましょう。それよりも、そもそもなんでシルヴィ様がここにいるんですかね? 陛下が送った?」


 マリアが話を逸らしつつ聞いてくる。


「さあな。あいつがそれを言う気がないっぽいからわからん。でも、わざわざここまで連れてくるくらいだからな」

「うーん…………まあ、イーストン家のシルヴィ様が殿下に害をなすことはないか…………陛下の命による追手だったらとっくの前に連行されているでしょうし」


 どうかねー?

 イーストンの命か、シルヴィの独断か……

 まあ、わからんわ。


「そこはいいわ。今は潜入して、敵の排除だ。それとマリア、シルヴィに様付けはいらんぞ」

「え? でも、公爵家ですし」

「お前は王族だ。マリア・ロンズデール」

「そうよ、マリア。あんな媚び女は呼び捨てでもいいくらいよ」


 リーシャも俺と同意しているが、ちょっと私怨が入っている気がする。


「公爵家をかー……身分差の結婚が難しいのってこういう時に感じますよ」

「そんなもんはすぐに慣れる」

「ですかねー……」


 うーん、マリアは無理かもな……


お読み頂き、ありがとうございます。

この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。


よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新作】
宮廷錬金術師の自由気ままな異世界旅 ~うっかりエリクサーを作ったら捕まりかけたので他国に逃げます~

【予約受付中】
~漫画~
廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 2 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~(1)

【新刊】
~書籍~
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(1)
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(2)

【販売中】
~書籍~
廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~(1)
廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~(2)

~漫画~
廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 1 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~

【現在連載中の作品】
その子供、伝説の剣聖につき (カクヨムネクスト)

週末のんびり異世界冒険譚 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~

バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~

最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~

【漫画連載中】
地獄の沙汰も黄金次第 ~会社をクビになったけど、錬金術とかいうチートスキルを手に入れたので人生一発逆転を目指します~
がうがうモンスター+
ニコニコ漫画

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~
カドコミ
ニコニコ漫画

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~
カドコミ
ニコニコ漫画

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~
ガンガンONLINE

最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜
カドコミ
ニコニコ漫画

【カクヨムサポーターリンク集】
https://x.gd/Sfaua
― 新着の感想 ―
マリアからすぐにバレそう
なるほど……つまりは……三号?……いや、四号か?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ