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廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~  作者: 出雲大吉
第6章

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第224話 どうしよう


 俺達が馬車の中で待っていると、シルヴィが馬車の裏から馬車の中をそーっと覗いてきた。


「なんだよ」

「ラブの匂いがしたからお邪魔かなと思ったんです」


 どんな嗅覚をしてんだ、こいつ。


「そんなことなんか起きていない。それよりも宿屋は空いていたか?」

「いや、そんなくっついておいて…………失礼。宿屋は空いており、3人部屋を確保いたしました。今日はごゆるりとお休みください」


 くっついているというか、マリアが抱きついているだけだ。


「お前はどうする?」

「私はお邪魔ですし、少し探ってみようかと思います。ご用件があれば呼んでください」


 どうやって?

 いや、こいつのことを深く考えるのはやめよう。


「そうか……馬車を頼むわ」

「馬車はマルコさんの家に置かせてもらうことにします。では、明日の朝…………いや、昼前にお迎えにあがります」


 シルヴィがリーシャを見て、言い直した。


「わかった。任せたわ」


 俺達は馬車から降りる。

 すると、シルヴィが荷台に乗り、馬車を操縦し、来た道を引き返していった。


「あまり期待はできそうにない宿屋ねー」


 リーシャが民家っぽい宿屋を見上げる。


「清貧だからなー」

「まあ、贅沢を言うもんじゃないわね。屋根があるだけでもマシなんだから」


 リーシャも成長したなー……

 これが成長なのかはわからんが。


 俺達は期待をせずに宿屋に入ると、受付にガタイの良いおっさんが座っていた。


「いらっしゃい」


 俺は内心、女じゃない受付は初めてだなと思いながら受付に近づく。


「さっきの修道女が3人部屋を取ったと思うんだが……」

「ああ。わかっている。部屋は2階の奥だ」


 おっさんが近くにある階段を指差した。


「わかった。夕食は?」

「時間になったら持っていく。悪いが、あまり期待はしないでくれ」

「わかっている」


 一切、期待していない。


 俺達は階段を上がると、奥にある部屋に入る。

 部屋はとても豪華とは言えないし、質素ではあったが、最低限の清潔さはある部屋だった。


「こんなものでしょう」

「悪くはないが、ここが町一番と言われると、程度が知れるな」

「普通の宿屋ですね。まあ、いいじゃないですか。きれいですし、ちゃんとベッドもあります」


 まあ、野営のテントよりかはマシか。


「さて、無事に教国に着いたわけだが、シルヴィやマルコの話を聞いてどう思った?」


 俺は備え付けのテーブルにつきながら聞く。

 すると、リーシャとマリアも座った。


「微妙ね。正直、今回のことがなかったら無視よ。放っておいても自滅しそうな組織だもの」

「私もそう思いました。やってることに一貫性がないですし、教国と各地の教会との連携がまるで取れてないことがわかりました。私はエーデルタルトの教会にいましたが、教国の情報がまるで違う感じで伝わっています」


 リーシャもマリアも俺とほぼ同意見だな。


「マリア、まるで違うとは?」

「教国は煌びやかで豊かと聞いていました。でも、実際に来てみたらこれですもん。もし、この町の状態を聞いていたら行こうとは思いませんでしたね。実家に帰ります」


 フランドルも反対するだろうしな。

 スラムがある町に自分の娘を行かせるわけがない。


「国として成り立っていないのが痛いな……多分、税収もないだろうし、他国も自国の教会に援助するだけだろう。そして、その教会も教国には援助を送っていないんだろうな」

「でしょうね。多分、周辺国が国になることを認めていないんだと思うわ」

「俺が周辺国の王でも認めないな。邪魔だし、力をつけられたら厄介だ」


 自国の国民にも当然、信者がいる。

 そいつらが国を裏切り、教国につくことも考えられるし、非常に困るのだ。


「だから強硬派とやらが周辺国で暗躍しているんでしょうね。仲違いを起こして、戦争になれば、どさくさに紛れて国を興すんでしょう」

「できると思うか?」

「テールがいなかったらね」


 そうなのだ。

 エイミル、ジャス、アダム、ウォルター、ミレー辺りはまだいい。

 そこまで大きな国というわけではないし、軍事力もそんなにないから。

 だが、テールは違う。

 大国であり、野心に溢れる軍事国家だ。


「そう考えるのが穏健派か。どうやってもテールには敵わないのを理解している」

「テールが滅ぼされても同じことね。次はエーデルタルトが立ちはだかる」


 まあ、そうなるわな。

 テールが滅ぶ場合はエーデルタルトが滅ぼした時だろう。

 他にテールに対抗できる国はないし。


「そうだなー。まあ、鬱陶しい強硬派とやらには退場してもらって穏健派のマルコに大人しくしてもらうのがベストかね?」

「じゃない? あれはまさしく穏健派ね。本人も言っていたけど、人の上に立つ器じゃないわ。維持が精一杯」


 少なくとも、王族に暗殺者を送るだけの度胸はなさそうだ。

 適当な援助で操るのが一番かね?

 まあ、その辺はヒラリーの仕事だろう。


「問題はどうやって強硬派を排除するかだな。このままいけば、強硬派が勝つわけだろ?」

「そんな感じよね。シルヴィに殺させるのが一番でしょ」

「マルコはそうさせたいが、できないって言ってたな」

「言ってたわね。でも、あの媚び女ならできるでしょ」


 そんな気がする。

 あいつの魔法は潜入に特化しているし。


「あいつは俺に見せたいものがあると言ってたからな」

「ふーん、まあいいけど……じゃあ、どうするの?」

「考え中」


 どうするかねー?


「言っておくけど、媚び女が考えている案は却下よ」

「わかってるよ」


 俺は頷きながら会話に加わらずに考え込んでいるマリアを見た。


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― 新着の感想 ―
国家樹立を黙認するの代わりにロイドの廃嫡をさせるという約束? うーん、いくらロイドが傑物とはいえ王太子の段階でそこまでするのは、釣り合わないでしょうし、なんとも言えませんね。
…廃嫡の理由の追求はどこへ?
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