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第022話 冒険者ギルド


 到着したリリスの町は石造りの壁に囲まれたそこそこの大きさの町だった。

 とはいえ、昨日の名前すら知らない村からすれば天と地だ。


 俺達は早速、町の中に入ろうと思い、門に近づいた。


「待て」


 俺達が門を通ろうとすると、門番が俺達を止める。

 門番は昨日の門番と違い鉄製の鎧を着ており、装備は充実している。


「何か?」

「いや、見かけない顔だと思ってな」


 門番はチラッとリーシャを見る。


 あー……絶世だもんな。


「旅をしている冒険者だ。ジャック・ヤッホイに憧れててな。この辺りにいると聞いてサインでも貰おうと思ったんだ」


 適当に嘘をつこう。


「あー、ジャック・ヤッホイならちょっと前に出たぜ」

「マジか……まあ、仕方がないか。日も暮れるし、滞在したい」

「ああ、いいぞ。一応、冒険者カードを見せてくれ」


 俺達はそう言われたのでカバンから冒険者カードを取り出し、門番に見せた。


「確かに…………ってか、Fランクじゃねーか」

「昨日、冒険者になったばかりなんだ」

「なるほどねー。ギルドは門をくぐって右にあるぞ」

「ありがとよ」


 俺達は軽く頭を下げると、門をくぐった。


「…………殿下、すごいです! 怪しまれませんでした!」


 門を抜けると、マリアが小声で称賛してくる。


「まあな!」


 俺はマリアに褒められ、上機嫌になると、門番から聞いたように右に曲がり、歩いていく。

 すると、昨日の村でも見た剣が交差する看板が見えてきた。


「リーシャ、お前はフードを被れ。お前の美しさは輩共にはきつい」

「…………そうね」


 リーシャは顔を少し赤くし、素直にフードを被った。


「…………殿下、かっこいいです! でも、私は?」

「お前は純朴で慎ましやかだから平気」


 悪く言えば、都会っぽくない田舎娘感がある。


「ですかー……2号さんは扱いが悪いなぁ……」


 かなり言葉を選んでやったのに……


「あなたにはあなたの良いところがあるわよ」


 リーシャがマリアの背中をそっと触った。

 フードで顔が見えないが、絶対に勝ち誇った顔をしていると思う。


「ですかー……まあ、美人は三日で飽きるって言いま…………せんでした。ごめんなさい」


 女の友情ってひどいなー。


 俺は無視することに決め、ギルドに向かう。

 ギルドに入ると、建物の中は広いホールみたいになっており、丸いテーブルが複数の椅子とセットになって置かれている。

 そこに身なりの悪い男達が席に着き、酒を飲んでいた。

 そして、奥には4つの受付があり、職員らしき3人の女と1人の男が座っている。


「ブレットってどれだと思う?」


 俺は一応、2人に聞いてみる。


「1人しかいないでしょ」

「ですー」


 うーん、おっさんじゃん。

 しかも、他3人の受付嬢は確かに美人だ。


「こりゃ、誰だって女の所に行くわなー」

「ロイドは行かないわよね?」


 行かないっての。


「おっさんの受付に行くぞ」


 俺は受付嬢を見ないようにし、まっすぐおっさんの所に向かう。


「いらっしゃいませ」


 俺達が受付にやってくると、おっさんは丁寧に挨拶をしてきた。


「お前がブレットか?」

「そうですね。私をご存じで?」

「ジャックからお前の所で受付しろって言われた」

「ほう……ジャック様から……」


 ブレットの目の色が変わった。


「ああ。えーっと…………名前は知らんが、大森林近くのド田舎で冒険者の登録をしたんだが、移籍してきた」

「ハピ村ですね。ジャック様に会われたのならそこでしょう」


 ハピ村って言うんだ……


「そうそう。俺らは冒険者になったばかりだから色々と教えてくれ。ついでに、楽して儲かる仕事をくれ」

「わかりました。とはいえ、今日はもう日が暮れます。仕事は明日にした方が良いでしょう。それまでにこちらで仕事の方を探してみます。冒険者カードを提出してください」


 俺達はそう言われたので冒険者カードを提出した。

 ブレットは俺達の冒険者カードを見ると、受付の下から分厚い本を取り出し、読みだした。


「少々、お待ちを…………えーっと、魔術、剣術、回復魔法ですか……」


 ん?

 わかるのか?


「それに書いてあるのか?」

「はい。冒険者の情報はすべてのギルドに共有されています。逆を言うと、犯罪行為も共有されます」


 犯罪をするなってことね。


「ランクアップのポイントも共有しろよ」


 確か、移籍するとリセットだっただろ。


「さすがにそこまですると、データが膨大な量になりますんで…………」


 ブレットはそう言いながら俺達に冒険者カードを返してくる。


「ふーん。まあいい。良い仕事はありそうか?」

「はい。魔術と回復魔法を使えるのは良いですね。明日までに見繕っておきます」


 ふむ……使えそうな男だな。

 ジャックが言っていたことは本当だったか。

 やはり無能な美人より有能なおっさんの方が良い。


「わかった。では、明日また来る。ついでに良い宿を知らんか? 俺達は着いたばかりでこの町のことを知らん。あ、安めな」

「えーっと、雑魚寝は……やめた方が良いですね。でしたら小鳥亭が良いかと思います。少し古いですが、老舗の宿屋で信頼できますし、サービスもいいです」


 雑魚寝の宿屋なんてあるんだ……

 リーシャとマリアがいるから絶対に無理だ。


「いくらだ?」

「一部屋でしたら銀貨6枚と記憶しています。夕食を宿で食べられるならそこに3人分の夕食代が追加されます」


 うん…………相場がわからん。

 まあ、有能そうなおっさんだし、従っておくか。


「わかった。場所は?」

「ギルドを出て、右にまっすぐ行くと、鳥の絵が描かれた看板が見えてきます。そこですね」

「じゃあ、そこに行ってみる。邪魔したな」


 俺は軽く手を上げると、さっさとギルドを出た。


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