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廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~  作者: 出雲大吉
第6章

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第217話 二日酔い


 リーシャとマリアとの結婚式を終えた翌日、俺とマリアは朝からベッドで唸っていた。

 頭が割れるように痛いのだ。


「うえー……」

「頭が痛いですぅ……」

「………………」


 なお、リーシャはスヤスヤと気持ちよさそうに寝ている。


「マリアー、お前のヒールでこの痛みを取れないか?」

「どうでしょうかねー? やったことないですし…………あ、取れますねー」


 マリアが起き上がった。

 どうやら自分に使ったらしい。


「俺もかけてくれー……」

「少々、お待ちをー」


 マリアはベッドから降りると、俺のベッドまでやってくる。

 マリアの動きや表情を見る限り、本当に効いてそうだ。


「頼むわ……」

「はーい」


 マリアが優しく俺の額に手を置いた。

 すると、徐々に頭のズキズキする痛みが消えていく。


「おー、聖女様だ」

「いつも鼻で笑っているくせに現金ですねー」


 笑ってない。

 こいつ、意外と自分が好きなんだなーって思っていただけだ。


「痛みが完全になくなったわ。ありがとよ。しかし、昨日は飲みすぎたなー」

「ですねー。ウチの実家はワインがたんまりありますけど、こんなに飲んだのは初めてです」


 何本空けただろうか?


「ヒラリーは生きてるかねー?」


 今日はシルヴィを交えて話をするんだが、大丈夫か?


「どうでしょう? リーシャ様は…………相変わらずですね」


 リーシャは一向に起きる気配がない。


「そいつはほっとけ……ん?」


 俺とマリアが幸せそうに眠るリーシャを見ていると、ノックの音が聞こえてきた。


「なんだ?」


 俺は扉に向かって声をかける。

 すると、ガチャッと扉が開き、シルヴィが部屋に入ってきた。


「旦那様、奥様、体調の方はどうでしょうか?」

「俺もマリアも問題ない。リーシャも多分、大丈夫」

「さようですか。でしたら準備ができ次第、ヒラリー様の執務室にいらしてください。なお、急がなくていいとヒラリー様が頭を抱えながらおっしゃっていました」


 あいつも二日酔いか……


「わかった。リーシャを起こしたら行く」

「おねがいします」


 シルヴィは頭を下げると、退室し、扉を閉めた。


「起こすか……」

「そうですね……」


 俺とマリアはなんとかリーシャを起こすと、着替えて食堂に向かった。

 そして、食堂で朝食を食べ終えると、部屋に戻り、準備をする。


「リーシャ様、頭は大丈夫なんです?」


 マリアが鏡の前で髪を櫛で梳きながらひどいことを言う。


「え? ケンカ売ってる? このチビ、初日から正室の地位を奪いにきた?」


 同じく髪を櫛で梳いたリーシャが剣に手を伸ばす。


「あ、いえ、そういう意味じゃないです。二日酔いですよ。私と殿下は頭が割れそうだったんです」


 リーシャは納得したようで剣を置き、再度、髪を梳き始める。


「ちゃんと水を飲まないからでしょ。あと、単純に飲みすぎ。私はセーブしてたもの」


 そうかな?

 同じくらいの量を飲んでいた気がするんだが……


「水ですかー。ウチの実家にそういう文化はないですね。水よりワインやぶどうジュースの方が多い家でしたから」


 さすがエーデルタルト最大のぶどう農家……じゃない、貴族だ。


「いい家ねー……私は頭は痛くないけど、当分、お酒はいいわ」


 俺も少なくとも今日は飲まないな。


「よく考えたら俺らと同様に頭を痛めているヒラリーにもヒールをかけてやるべきだな……」

「そういえばそうですね。急ぎます」


 俺達は準備を急ぎ、部屋を出た。

 そして、ヒラリーの執務室に向かう。


 ヒラリーの執務室まで行くと、扉の前でシルヴィが待っていた。


「あれ? もう少し時間がかかると思っていたんですが……」


 シルヴィが首を傾げる。


「二日酔いの頭痛はマリアのヒールで治せるんだよ。ヒラリーにもかけてやろうと思って」

「ああ、なるほど。それは知りませんでしたね」

「教国の人間じゃないのか?」


 教国は回復魔法の使い手が多いだろうし、知ってるかと思った。


「教国は飲酒を推奨していませんからね。それに私は一滴も飲めないんです」

「ふーん」


 下戸だったのか。


「私はますます教国に行かなくて良かったと思えますよ。ワインは神からの恵みものですよ」


 ワインやぶどうに対するプライドが高いマリアは嫌だろうな。


「恵みものも過度は避けるべきですね。天罰が下ります」


 二日酔いの頭痛は天罰か……


「ヒラリーは?」

「ふふっ…………ヒラリー様、ロイド殿下と奥様方が参られました」


 シルヴィが扉をノックし、声をかける。


『知ってる。外で話してないでさっさと入ってこい』


 扉越しに不機嫌なヒラリーの声が聞こえてきた。


「どうぞ」


 シルヴィが扉を開けてくれたので執務室に入る。

 部屋に入ると、ヒラリーがソファーに腰かけ、頭を抱えていた。


「辛そうだな」

「お前らがいなくなってからが本番だったよ……」


 こりゃ、相当飲んだな……


「マリア」

「はい」


 マリアはヒラリーのもとに行くと、ヒラリーの頭に手をかざす。


「ヒール」

「ん? おー! なんかすごい!」


 ヒラリーが顔を上げた。


「治ったか?」

「ああ、だいぶ楽になった、回復魔法はすごいなー」

「医者はどうした? ジェフリーの爺さん」


 あれは王族の専属医なはずだ。


「先生は陛下に説教中だよ。いくら甥っ子の結婚式とはいえ、病み上がりだからあまり飲むなって止められていたのに潰れるまで飲んでたからな」


 そりゃ、怒られるわ。


「お前も付き合ったのか?」

「そうだよ。リネットも付き合っていたはずだが、あいつは何ともなかった」


 伯母上は強そうだもんなー。


「マイルズは?」

「あいつはすぐに逃げた。そういう奴だ」


 酔っ払い共には付き合っていられなかったんだな。


「おかげで二日酔いか」

「まあな。あー、もう大丈夫だな……」


 確かに顔色も良くなっている気がする。


「じゃあ、この前の話の続きをしようか」

「そうだな」


 俺達は教国についての話をすることにし、ヒラリーの対面に座った。


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よろしくお願いいたします。

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