第209話 回復
城に戻った翌日。
朝からラウラを待っていると、昼過ぎにはラウラが訪ねてきた。
「できたよ」
ラウラは俺達の部屋に来ると、そう言って小瓶をテーブルに置く。
「おー! さすがはラウラ殿だ! 褒美は期待していいぞ!」
ヒラリーが嬉しそうに小瓶を掲げる。
「どうも…………それを患者に飲ませればいい。それで呪いは消える。あとはお医者様と相談しながら体力を戻せばいいよ」
「感謝する! では、私は早速、陛下のもとに行ってくる!」
ヒラリーは薬を持って、速足で部屋から出ていった。
「忙しない人だね」
ラウラは呆れたように閉じた扉を見つめる。
「そういう奴だ。ラウラ、まあ、座れ」
俺がそう言うと、ラウラは大人しく座った。
「ところで、ラウラ、今日はババアじゃないんだな」
ラウラはいつもの婆さんの姿ではなく、若くて美人なエルフ姿だ。
「あんたが言ったんだろ……」
まあね。
「ラウラ、俺からも礼を言おう。薬のことを教えてもらったうえに調合までしてもらって助かった。感謝する」
「たいした手間じゃないからいいよ。それにエイミルではそれ以上に世話になったからね」
じゃあ、俺からの褒美はいらんな。
「ラウラ、頼みがある」
「まだあるのかい?」
ラウラが呆れたような目で見てくる。
「数ヶ月でいいからここに滞在してくれ」
「いや、数ヶ月って……長いよ」
「呪いをかけた奴がいる」
「…………まあね」
呪いを治してもまたかけられる可能性がある。
犯人が捕まっていないのだから……
「逆に数ヶ月でどうにかできるのかい?」
「しなければマズいだろ」
「うーん…………でも、数ヶ月もエイミルを空けられないよ。エイミル王に何て言うのさ?」
「お前の代わりにジャックがエイミルに向かったから大丈夫」
ちゃんとジャックはわかっている。
俺が指示をしなくてもその前に行動する大変に有能な奴なのだ。
「それでジャックを見ないのか……」
「頼むわ。お前がいるといないとでは対応が大きく変わる」
俺の魔力感知で伯父上に呪いをかけようとしている者を捕らえることができるかもしれない。
だが、もし、それを突破され、再度、呪いをかけられた時に対処できる者がいないのだ。
「…………わかったよ。さっさと犯人を捕まえておくれ」
ラウラは渋々、了承してくれた。
「褒美はちゃんと出るから安心してくれ」
「はいはい……」
「手紙は読んだか?」
「読んだよ。あんたら、エルフに対しても偉そうだったんだってね」
カサンドラは何を書いているんだ。
「偉そうじゃなくて偉いんだ」
「そうかい。じゃあ、私は帰るよ。何かあったら呼んでおくれ。当分はこの町で仕事をしているから」
ラウラは立ち上がると、部屋を出ていった。
◆◇◆
伯父上が薬を飲んで数日が経った。
俺はあれから毎日、伯父上のもとに見舞いに行っている。
伯父上は日に日に体力が戻っているようで体つきや顔もふっくらし始め、表情も明るくなっていた。
間違いなく、ラウラの薬が効き、健康に向かっていっていると思われる。
そして、さらに数日が経ったある日、俺達は伯父上に呼ばれたので伯父上の寝室に向かう。
寝室に入ると、元気そうな伯父上がベッドで上半身を起こしていた。
さらに伯母上、ヒラリー、マイルズに加え、医者のじいさんと若いメイドが2人控えていた。
「伯父上、お呼びですか?」
「ああ、ロイド。薬が効いたようですっかり良くなったぞ」
伯父上の顔は健康そのものであり、死相も出ていない。
医療には素人の俺でも問題ないとわかるくらいだ。
「それはよかったです。いいダイエットになったでしょう」
「お前、リネットと同じことを言うな……」
痩せ細っている時もだが、太っている方も不健康だもん。
「ご自愛ください。我が国では妻を泣かす男は男子にあらずという言葉があります」
なお、この言葉を作ったのはひいひいひい婆さん。
「わかっておるわ。それにしても余が呪いを受けていたとはなー……」
伯父上が健康になり始めたあたりでヒラリーが報告したのだ。
「王ともなれば、敵も多いでしょう」
「うーむ、しかし、犯人はいったい誰だろうか?」
「ヒラリー、調べは?」
俺はヒラリーに確認する。
「調査中だ。少し時間がかかるかもしれん」
まあ、遅効性の呪いだからなー。
いつ呪いを受けたかもわからない。
「伯父上、無理を言って、ラウラを滞在させております。ですが、敵はすぐにあぶりだすべきです」
「わかっておる。怪しいのは他国か…………順当に行けば、ミレーだが……」
まあ、仲が悪いしね。
「決めつけは良くないですが、その方向で調べるべきかと」
「そうだな……ヒラリー、任せる」
「はっ!」
ヒラリーが軽く頭を下げる。
「時にロイド。式はどうする?」
伯父上が聞いてくる。
「巫女が戻ってきたらすぐにでも。私は何年かかっても気持ちは変わりませんが、リーシャとマリアは不安でしょう」
「うむ。そうか……では、そのように進めよう。エーデルタルトには伝えない方が良いな?」
「ええ。今はエーデルタルトと接触したくありません」
「わかった。お前達は盛大な式を挙げたいかもしれんが、身内だけになる。それはいいな?」
エーデルタルトは栄光の国なだけあって、結婚式は派手にやる。
だが、俺達がここにいるということを隠している現状ではそれは望めない。
「それで構いません。私が欲しいのはそういう煌びやかなものではないですから」
「ふむ……わかった。リネット、お前に任せる」
伯父上が伯母上を見る。
「かしこまりました。リーシャ、マリア、私の部屋に来なさい…………一応、ロイドにも聞きますが、あなたは式の希望はありますか?」
「ない」
「あなたは偉そうなことを言う前にもっと大事なことを学びなさい」
だって、本当にないし…………
「マイルズ、お前もないよな?」
俺は旗色が悪いと思い、マイルズに同意を求めた。
「そりゃね。式なんてどうでも…………いや、巻き込まないでくれる?」
一人は嫌なんだ。
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