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廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~  作者: 出雲大吉
第5章

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第205話 テールはいらない国


 俺とリーシャが死体を見ながら考えていると、ティーナがジャック、マリア、ヴィリーを連れて戻ってきた。


「殿下、絶世の嬢ちゃん、無事だったか?」


 ジャックが聞いてくる。


「多少、てこずったが問題ない。とはいえ、奴隷狩りとは思えない相手だった」

「ふむ……」


 ジャックは頷くと、死体を調べ始めた。


「マリア、リーシャの腕にヒールをかけてやってくれ」

「ヒール? ケガをされたんですか?」

「触られたとか言って、ハンカチでこすって赤くなっただけだ」

「触られた? 御いたわしいリーシャ様……」


 マリアは悲しそうな顔をして、赤くなっているリーシャの腕に回復魔法をかけ始める。


「あ、マリアもその認識なんだ……」


 ティーナがちょっと引いていた。


「放っておけ。ヴィリー、こいつらの仲間っぽいのはいたか?」


 ヴィリーに確認する。


「いや、いない。こいつらだけだろう。しかし、この鎧は厄介だ……あれほどの火力の魔法を防ぐとは……」


 確かにすごかった。

 他の奴らは灰も残っていないというのに……


「悪用されるかもしれんし、没収しとけ」

「いいのか? お前の戦利品だろ」

「ゴミ野郎が着てた鎧なんかいらねーわ。もらっても売るしかないが、自分を追い詰めることになりそうな物は売れん。いらないからお前らにやる。処分しとけ」

「わかった。どこかに埋めておこう」


 それがいい。

 こんなタチの悪いものは捨てるに限る。


「殿下、ちょっといいか?」


 腰を下ろして、転がっている首を見ていたジャックが俺を呼んできた。

 俺はすぐにジャックのもとに行く。


「どうした?」

「こいつはレナルド・アーネットだ」


 んー?

 聞いたことないわ。


「誰だ?」

「元テール貴族の冒険者だ」


 冒険者……

 しかも、テールの貴族か……


「元とは?」

「家を追い出されたんだよ。こいつは自分の領地の人間を何人も殺した殺人鬼だ」


 いや、そんな奴を追い出すな。

 迷惑だから殺すか幽閉しろ。


「詳しいな……有名なのか?」

「有名だよ。ギルドもブラックリストに入れている奴だ」


 俺達もそのリストに入ってる……


「殺人鬼は冒険者になっても変わらないってことか」

「そういうことだ。まあ、問題児というか、それを通り越したヤバい野郎で有名な奴だな。だが、お前さん達も感じただろうが、実力はある」


 確かにあったな……


「面倒なのに当たったなー。それにしても、テールはロクでもないな」


 貴族もダメかい。


「その辺は何とも言えねーよ。それよりも、この件はさすがにスミスの領主やギルドに報告する必要がある。殿下、悪いが、ウォルターに帰る前にスミスに寄るぜ」

「まあ、1日もかからないだろうし、構わん」


 仕方がないだろう。

 奴隷狩りのことを考えれば、領主に一声かけておかないといけない。


「なんにせよ、一度、エルフの集落に戻る。ちょっと話をしないといけないからな」


 ティーナのことをヒルダに話しておかないといけない。


「わかった。これの処分は俺がやっておく」

「頼むわ。ヴィリー、鎧を頼むぞ。俺達魔術師の敵になるものは絶対に処分しろ」


 この場をジャックに任せると、ヴィリーに念を押す。


「わかっている。ジャック殿、私も手伝おう」

「頼むわ」


 俺達はこの場をジャックとヴィリーに任せると、森に引き返した。

 そして、狭い道を歩きながら集落まで戻ると、昨日、話をした建物まで行く。

 建物までやって来ると、扉がないのでノックもせずにそのまま建物に入った。


 建物の中ではヒルダとカサンドラが席に着いて話をしており、ヒルダのそばにはベンが控えていた。


「ノックくらいせんか」


 ヒルダが文句を言ってくるが、扉がないんだから仕方がない。


「どうでもいいだろ」

「ハァ……おぬしに何を言っても無駄か」


 ヒルダは諦めたようだ。


「ロイド王子。奴隷狩りが森の近くに来ていると聞いているが、どうなった?」


 カサンドラが聞いてくる。


「始末した。今はジャックとヴィリーが後片付けをしているところだ」

「おー! そうか、そうか! これで面倒ごとが一つ消えたな」


 一つ?


「他にも面倒ごとがあるのか?」

「あるぞ。ほら」


 カサンドラは頷くと、何かの封筒をテーブルに置く。

 俺はカサンドラの近くまで行くと、封筒を手に取った。


「面倒ごとってラウラへの手紙か?」

「ああ。あのバカ娘への手紙だ。絶対に渡してほしい」

「手紙を渡しても帰ってこないと思うぞ」


 相当、嫌がってたし。


「別に帰ってきたくないなら帰ってこんでもいいわ。でも、手紙くらいは出すように伝えようと思ってな」

「手紙なんか届くのか?」


 ここ、誰も来ないじゃん。


「その辺を今後考えていくんだよ。獣人族とも友誼を結んだことだしな」


 同盟は上手くいったっぽいな。


「そうか……まあ、わかった。この手紙は確かにラウラに渡そう」

「頼むぞ。何か褒美でもやるか……」

「いらん…………あ、待て。はちみつ酒と果実酒をくれ。俺の妻が大変気に入っている」


 マリアね。


「殿下もでしょうに……」


 マリアがぼそっとつぶやく。


「ふーむ、あんな物がいいのか?」

「お前らがあんな物と思う物でも外の者には貴重な物になる。お前らを奴隷にするより、よっぽど価値があるわ」

「私達は酒以下か?」


 カサンドラが不満そうに言ってきたのでリーシャを見る。

 すると、リーシャがかっこつけて髪を手で払った。

 俺はそんなリーシャを見た後にカサンドラを見る。


「以下だな」

「はよ、帰れ」

「わかるなー。妾もカサンドラ殿の気持ちがすっごくわかるなー。こいつら、マジで嫌い」


 あっそ。


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― 新着の感想 ―
[一言] やっぱりリーシャがマウント取ってるよ! エルフも自分達の美貌で人間に狙われるのは腹が立つかもしれないけど、リーシャの前では酒以下と断言されるのもムカつくよね!
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