第198話 ウサギ肉をやっただろ
俺達が思い出話に花を咲かせながら飲んでいると、ヴィリーが夕食を持ってきた。
すると、すぐに寂しそうな顔をしたヒルダがやってきたため、ティーナとベンはヒルダと共に部屋を出ていった。
俺達は3人で夕食を堪能する。
「うーん、不味くはないが……」
「味が薄いわね」
「単純に塩っ気が少ないですね。まあ、仕方がないことですよ」
俺達はそうは言いつつも食べていく。
「しかし、エルフが美形って本当よね。カサンドラも美人だし、ヴィリーも顔が整っているわ。演劇でもやれば人気出そう」
「ですよねー。他の人もあんな感じなんでしょうね」
あれで魔法も得意なんだから奴隷として人気になるわなー。
「さすがに年齢を聞くのが怖かったけどな。ラウラで優に100歳を超えているわけだろ? カサンドラはいくつだろうな?」
「200歳? それであの美貌なんだからすごいわよね。欲しくなった?」
リーシャが笑いながら聞いてくる。
冗談めいているが、目がマジだ。
「いらない。確かに美人だが、お前より遥かに下だ。というか、俺はそんなに女はいらん。めんどくさいだけだわ」
「まあ、あなたは人付き合いが苦手というわけではないけど、あまり興味を持たない人だものね」
人のこと言えんだろ。
「殿下、奴隷狩りのことはどうします?」
マリアが聞いてくる。
「さあなー? 来たら潰すが、来なきゃ帰るわ」
「来ますかね?」
「ジャックを見てるとなー……」
来そうな感じがする。
「まあ、来ても問題ないでしょ。ご要望通り、私が皆殺しにしてあげるわ」
かっこいい!
でも、怖い……
「しかし、味が薄いなー。塩と胡椒でもかけるか…………」
俺は鳥肉を焼いたやつに塩と胡椒を振って、食べてみる。
「うん、美味いな」
やっぱ塩と胡椒は偉大だわ。
「私の分にもかけて」
「私もー」
俺は2人の料理にも塩と胡椒をかけ、食事を続ける。
そして、食事を終えると、やることもないのでさっさと休むことにした。
翌朝、相変わらず、寝起きの悪いリーシャを起こし、準備をすると、部屋を出る。
すると、外にはジャック、ヴィリー、ティーナ、ベンの4人がおり、何かを話していた。
「何してんだ?」
俺は4人に聞く。
「今日の予定を話していたんだよ」
俺の問いにジャックが代表して答えた。
「予定?」
「ああ。お前らはケアラルの花を採りに行くんだろ? 俺はちょっと別行動をとる」
ジャックはついてこないらしい。
「奴隷狩りか?」
「ああ。昨日の夜、遠くに明かりが見えた。奴隷狩りの連中の可能性が高い」
ギルドは俺達にしか依頼をしていないって言ってたし、そうだろうなー。
「まあ、わかった。ケアラルの花の採取だけだし、こっちでやるわ。お前は見張りな」
「任せとけ」
「じゃあ、氷の洞窟に案内してくれるのはヴィリーか?」
「いや、すまんが、俺もジャック殿と行動をする。氷の洞窟への案内はティーナ殿に任せた」
ティーナ?
「お前、氷の洞窟の場所を知ってんの?」
よそ者だろ。
「さっきヴィリーさんに聞いたから大丈夫」
うーん、心配だ。
「本当に大丈夫か?」
「ちゃんと道があるらしいから大丈夫だってば」
「まあ、任せてやるか……」
「やっぱり偉そう……」
偉いんだよ。
「ベンもジャック達と行動か?」
「いや、俺はヒルダ様の護衛だ。ヒルダ様を一人にはできん」
そりゃそうだわ。
「まあ、わかったわ。じゃあ、ティーナ、行くか」
「うん。こっち、こっち」
俺達はティーナに案内され、集落を出ると、昨日と同じように森の中の道を歩いていく。
「ティーナ、テールではあれだったが、この辺の国でも差別はあるのか?」
俺は前を歩くティーナに聞いてみる。
「この辺はあまりないわね。まあ、ゼロっていうわけではないけど……」
「じゃあ、普通に町とかでも歩けるわけか?」
「それはそうだね。たまに子供に尻尾を掴まれるくらい」
子供はなー……
まあ、それは仕方がないだろう。
「ウォルターもか?」
「ウォルターはちょっと嫌だねー。あそこって観光客が多いでしょ? だから中には獣人族を嫌がる国から来た人も多いんだよ」
確かにそうかもしれない。
「うーん、そうかー……」
「なーに? 招いてくれるの? それなら行くよ。一度、有名なゴンドラとかに乗ってみたいって思ってたし」
「いや、侍女にでもならんかと思ってな」
「え!? あなた、私のことを好きだったの!?」
なんでそうなる……
「意味わからんが……」
「だって、侍女ってメイドでしょ? 貴族のメイドっていったらそういう要員でしょ」
すごい……
偏見がものすごい。
「お前、俺に仕えてくれたメイド達に謝れ…………それに俺のじゃない。リーシャのだ。リーシャがお前を気に入ってる」
「え? なんで? 殺す気?」
ティーナはちょっとビビりながらリーシャに聞く。
「殺さないわよ。あなたって運動神経もいいし、剣もそこそこ使えるでしょ。ちょうどいいと思って」
リーシャは最初からティーナを評価していたからなー。
「うーん、ありがたい申し出だとは思うけど、やっぱり自分の国がいいかなー。愛着もあるし、家族もいる。あと、あなたのメイドになったら稽古といって、ボコボコにされそう」
「そんなことするわけないじゃないの」
リーシャがニコッと笑う。
「あっ……やっぱりいいです」
ティーナは何かを察した。
俺も察した。
「そう……残念ね。じゃあ、ララをちょうだい」
「あげない。絶対にあげない」
ティーナは断固拒否する。
「ティーナ。どっかの男に騙されて、借金を背負ったら言えよ。助けてやるから」
「良い人を選ぶから大丈夫…………」
ジャスのカジノでも紹介してやるか……
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