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第192話 森の達人はすごいなー


 俺達はまったく面白くもない風景を見続けていた。

 そのまましばらく、風景を見続けていると、馬車が止まった。


 ん?


「もう着いたかー?」


 俺は馬車を止めたジャックに聞く。


「いや、死体が落ちてたからちょっと待て」


 死体?


 俺達は馬車から降りると、馬車の前の方に向かう。

 すると、馬車の前には腐敗した死体が横たわっており、ジャックがその死体に近づき、調べていた。


「お前らはここで待ってろ」


 俺はリーシャとマリアを馬車の近くで待たせておくと、ジャックと死体に近づく。

 死体は革の鎧を着ており、パッと見は冒険者に見えた。


「奴隷狩りか? 冒険者か?」

「冒険者カードがないし、奴隷狩りだろうな……」

「エルフか?」


 とはいえ、ここは森ではない。


「うーん、この傷は剣だな」

「剣? 魔法ではないのか?」


 エアカッターなんかの魔法を使えば、剣と同じような切り傷は作れる。


「魔法の残滓がない。お前さんも探ってみろ」


 ジャックにそう言われて、探知をしてみるが、確かにこの死体からは魔力を感じなかった。


「確かにないな……エルフって剣も使えるのかね?」

「まあ、使えないこともないだろうな。ラウラにしても剣は使える」


 婆さんの姿のイメージが強すぎるから想像はしにくいが、使えるらしい。

 まさか、俺より上ってことはないよな?


「どうする? エルフか仲間割れか……第三者の線もあるぞ」

「情報が少なすぎるな…………まあいい。先を急ごう」


 それもそうだな。


 俺達は馬車に乗り込むと、再度、森に向けて出発した。

 そのまましばらく進んでいくと、徐々に道が荒れだし、振動が大きくなってくる。


「着いたぜ。ここがエルフの森だ」


 ジャックがそう言ったので、俺達は馬車の前に行き、顔を出して、前方を見てみる。

 すると、前方には山が見え、その山を囲むような一面に広がる森が見えていた。


「あれか? 結構広そうだな」

「パニャの大森林ほどじゃないが、かなり広いぞ」


 ジャックについてきてもらって良かったわ。

 広い森は嫌いだし。


 馬車はそのまま進んでいき、森に近づいていく。

 そして、森の前まで来ると、ジャックが馬車を止めた。


「着いたかー」

「森ですねー」

「森と言えばジャック、ジャックと言えば森ね」


 確かに森を見ると、ジャックを想像するな。


「まあ、森は得意だから安心しな」


 さすがだ。

 頼りになる男だわ。


「馬車はどうする?」


 さすがに森の中は無理だ。


「道があるんだが、馬車は無理だな。ここに置いておく」


 ジャックがそう言うので俺達はグローリアスに近づく。


「ここで待ってるんだぞ、グローリアス」

「大人しくしてなさいね」


 俺とリーシャはそう言いながらグローリアスにエサをあげる。


「待っててくださいねー」


 マリアがそう言うと、グローリアスがぷいっと顔を背けた。


「私、こいつ、嫌いです」


 多分、グローリアスがお前のことを嫌いなんだと思う。

 トマトなんかを押し付けるから……


「さて、森の中では俺が先行する。いいな?」


 ジャックが提案してくる。


「そうしてくれ」

「こっちだ」


 ジャックは森に入らずに歩いていく。

 しばらく歩いていくと、森の中に道のようなものが見えてきた。


「ここは?」

「見ての通り、道だ。ここをまっすぐ行けばエルフの集落に行ける」


 まあ、エルフだって外に出るだろうし、領主の使者のことを考えると、道ぐらいはあるわな。


「じゃあ、行ってみるか」

「ああ。問題は襲って来る確率が高いことだな」


 普通に行けば、絶対に襲ってくるだろうな。


「任せておけ。俺が魔力を垂れ流してやる」

「魔力?」

「俺は魔力が高いから反撃が怖くていきなりは襲ってこないし、堂々としていれば、用事があって来ていると察する」


 隠すのが良くないんだ。


「ふーん、じゃあ、頼むわ」


 ジャックがそう言って、森に入っていったので俺は普段は抑えている魔力を垂れ流し状態にし、ジャックに続く。


 森の道は狭いが、人一人が歩く分には十分な幅があった。

 それでも枝や草が伸びて、通りにくいところもあるが、そういうのは先頭のジャックが鉈で上手く刈り、俺達が通りやすいようにしてくれる。


「あー、ちょっと待て」


 ジャックは立ち止まると、その場にしゃがんだ。


「どうした? 立ち眩みか?」

「ちげーよ。これを見ろ」


 俺達はジャックにそう言われて、ジャックの足元にある草を見る。


「雑草だな」

「雑草ね」

「雑草です」


 どう見ても雑草だ。


「これが薬草だ。この葉っぱの部分がギザギザになってるだろ? これが特徴」


 そう言われても葉っぱがギザギザになってる草なんて他にもありそうなもんだが……


「わかるか?」


 俺はリーシャを見る。


「わかる?」


 リーシャは俺の問いをスルーし、マリアを見た。


「雑草です!」


 うん、そう思う。


「ジャック、俺達には無理だ。さっぱりわからん」

「普通、冒険者はまずこれの採取を覚えるんだぜ? この森の薬草は特殊だから高価だが、普通の薬草は1束で銅貨1枚になる。それを採取して生活をしながら武器を買い、次のモンスター退治にいくんだ」


 最初は武器もないケースが普通なんだな……

 庶民は大変だわ。


「そのまま抜けばいいのか?」

「根を切らないようにする必要がある」

「ふーん……」

「やってみるか?」


 ジャックが顔を上げて聞いてくる。


「やんない」

「手が汚れるじゃないの」

「おねがいしまーす」


 俺達は断固拒否した。


「お前らが受けた仕事だろうに……そういうところだぞ、エーデルタルトのわがまま貴族共」


 報酬はやるからやってくれ。


お読み頂き、ありがとうございます。

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