表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/277

第019話 初心者


 晴れて王子様や貴族令嬢から冒険者にランクダウンした俺達はギルドを出た。


「ジャック、ここから近い大きな町ってどこだ?」


 俺は移籍することにしたので詳しそうなジャックに聞いてみる。

 こんな田舎は嫌なのだ。


「近いのはリリスの町だな。そこそこ大きいぞ」


 リリス?

 どっかで聞いたことがある名前だな……

 あ、俺はそこの町の商人のバカ息子の設定だったわ。

 確か、ジャックがユニコーンがどうたらこうたらって嘘八百な話を門番にしていた。


「じゃあ、そこか……リーシャ、マリア、そこでいいか?」

「私はどこであろうと、あなたについていくだけね」

「私もです」


 良い嫁と臣下を持ったなー。

 まあ、正式に言うと、嫁でもないし、臣下でもないけど。


「ジャック、俺らはリリスに行くわ。お前はどうするんだ?」

「俺も途中まではついていってやる、別の仕事があるから道中でお別れだな」


 リリスまではついてこないか…………

 まあ、伝説の冒険者は伝説を作らないといけないから忙しいのだろう。


「わかった。じゃあ、行こうぜ」

「あ、待った。お前らは先に門のところ…………いや、門の先で待ってろ。俺はちょっと準備がある」


 準備ねー。

 そういや、さっきの店で物を買ったのは俺達だけだったな。

 こいつも準備がいるか。


「わかった。じゃあ、先に行ってるわ」

「ああ。そんなに時間はかからないから嫁達と駄弁ってな」


 うーん、もう嫁ってことにした方が良いかもしれんな。

 その方がまだ悪い虫がリーシャやマリアにつかないかもしれない。


「はいはい。じゃあ、また後でな」


 俺達はジャックと別れると、3人で門に向かった。

 門に向かうと、さっきもいた門番が暇そうにしており、俺達、というか、リーシャやマリアをジロジロと見てくる。


 ジャックが門の先って言い直したのはこういうことね……


 俺はなるほどなーと思いながらリーシャとマリアを連れて、門を抜けると、少し距離を置き、ちょうどいい木陰ができている木の下で立ち止まった。


「さて、ここまでは非常に順調だな」


 俺は立ち止まり、振り向くと、2人に告げる。


「ええ、そうね。徴発もせずに済んだわ」

「えー…………本当にする気だったんですかー」


 しなきゃ飢え死にだっただろ。

 まあ、俺の睡眠魔法で眠らせて、こっそり盗む程度で終わらせるつもりではあった。


「ジャックに会えたのは幸運だったな」

「ですねー。私の運も良くなったのかな?」


 マリアがそう言うが、お前が指差した方向にはジャックはいなかっただろ。


「マリアの運はどうでもいいけど、このままジャックにリリスまで連れていってもらえると、良かったんだけどね」

「まあ、さすがにそれは頼りすぎだろう。ここまででも十分だ」

「あの、ところで、ジャックさんって信用できるんですか?」


 こいつは何を言っているんだ。


「ジャック・ヤッホイだぞ?」

「伝説の冒険者よ?」


 な?


「いや、私は存じ上げない方なもんで…………確かに本は面白いですけど」

「さっきギルドの受付嬢が言ってただろ。Aランクはそれだけで信用があるって」


 しかも、本まで出している伝説の冒険者だ。


「言ってましたね…………殿下がそう言うなら私はこれ以上、何も言いません」


 そうしなさい。


「まあ、怪しい点もあったけど、スルーね」

「怪しい点……ですか?」


 絶世の嬢ちゃんね。


「まあいいだろ。助けてもらって色々と教えてもらったわけだ。恩人を疑うな」

「わかりましたー」


 マリアは納得したようだ。


「それよりもマリア、悪いが、お前は2号さんということにしてくれ」

「それはまあ、いいですけど、なんでです?」

「別の冒険者とやらに絡まれそうだ。リーシャは俺の婚約者だとしてもお前はフリーなわけだろ? 変なのにナンパされるかもしれん」


 マリアは対抗手段がないからちょっと危ない。


「というか、ナンパで済めばいいわね」


 リーシャが脅す。


「た、確かに! では、私は殿下の2号さんということで!」

「良い人とやらが見つかったら言えよ。俺やリーシャがちゃんと説明してやるから」


 王子様とその婚約者が証明したら大丈夫だろ。

 多分。


「お願いします!」


 マリアが頷いたところで村の門を抜けるジャックが見えた。

 ジャックは俺達を見つけると、すぐにやってくる。


「待たせたな」

「いや、たいして待ってない。早かったな」

「たいした準備じゃないからな。じゃあ、行こう。今からだったら明日の日が暮れる前には着けるだろう」


 一泊は野宿か。


「ちなみにだが、歩きか? 馬車とかないのか?」

「定期便の乗合馬車があるが、この村は10日に1回だな。馬車が良いなら数日はここに滞在だ」

「歩こう。こんなところに何日も滞在する気はない」


 やることねーし、つまんねーわ。


「だろ? 行こうぜ」


 俺達はリリスに向けて出発することにした。


 俺達は舗装はされていないが、そんなに荒れていない道を歩いていく。


「森の中よりかは何倍もマシだな」

「そりゃな。よくあんな格好で森を歩けたもんだ」

「もう森はいい。朝起きたら熊におはようって言われたくない」


 あれはマジでビビった。


「そりゃそうだ。まあ、安心しろ。ここからは滅多にモンスターは出ないし、平和なもんだ」

「ここなら出てくれた方が良いがな」


 開けているし、俺の魔法を生かせる。

 ジャイアントベアでもなんでもいいから金になるモンスターが出てほしい。


「お前らは実力があるからすぐに稼げるよ」


 そうだと嬉しいわ。


 俺達は平和な道を歩き続け、リリスを目指す。

 道中、疲れたりすることもあったが、適度に休んだし、マリアの回復魔法があったため、特にトラブルもなく進んでいった。

 そして、そのまま歩いて進んでいくと、空が茜色に変わりだし、辺りが少しずつ暗くなってくる。


「そろそろだな……」


 ジャックがふと、つぶやいた。


「何がだ?」

「そろそろ野営の準備だ」

「まだ行けなくないか?」

「暗くなってからの準備では遅いんだ。その前に準備し、ゆっくりするのがセオリーだ」


 なるほどね。

 軍もそうするが、冒険者もか。


「わかった。どうすればいい?」

「道を少し逸れたところでキャンプだな」


 ジャックがそう言って、道から外れた。

 俺達はシロウトなので素直にジャックについていく。


「このあたりだな」

「どうすんだ? 焚火でもするのか?」

「だな。お前ら、適当な枝を拾ってこい」


 ジャックにそう言われたので俺は周囲を見る。


「木がないが?」


 草原ばかりで木があまりない。

 あっても数本であり、枝は落ちてなさそうだ。


「な? こういうこともある。お前ら、テントはあるか? 食料はあるか?」


 …………ないな。


お読み頂き、ありがとうございます。

この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。


よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新作】
宮廷錬金術師の自由気ままな異世界旅 ~うっかりエリクサーを作ったら捕まりかけたので他国に逃げます~

【新刊】
~書籍~
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(1)
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(2)

週末のんびり異世界冒険譚 1 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~
週末のんびり異世界冒険譚 2 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

【販売中】
~書籍~
廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~(1)
廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~(2)

~漫画~
廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 1 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~

【現在連載中の作品】
その子供、伝説の剣聖につき (カクヨムネクスト)

週末のんびり異世界冒険譚 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~

バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~

最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~

【漫画連載中】
地獄の沙汰も黄金次第 ~会社をクビになったけど、錬金術とかいうチートスキルを手に入れたので人生一発逆転を目指します~
がうがうモンスター+
ニコニコ漫画

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~
カドコミ
ニコニコ漫画

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~
カドコミ
ニコニコ漫画

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~
ガンガンONLINE

【カクヨムサポーターリンク集】
https://x.gd/Sfaua
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ