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第170話 ウォルターに到着


 リーシャとマリアが俺が贈った文をしまうと、陸地に到着した。


「ほらよ。着いたぜ」

「ありがとうよ」


 俺達は船が止まったので船から降りる。

 そして、正面の高い壁にある門に向かって歩き出した。


「何か並んでないか?」


 門の前にはかなりの数の人が並んでいる。


「変だね……ちょっと見てくるからあんたらは並んでな」


 婆さんが列を無視して、前の方に歩いていったので俺達は列に並んだ。

 そのまま待っていると、婆さんが戻ってくる。


「何だった?」

「検問だね。前に来た時にはこんなことなかったんだけどね。何かあったのかもしれない」


 何かねー……

 シルヴィが言っていたことはこれか?

 まさか同盟しているウォルターとアダムの仲違いじゃないだろうな?

 もうめんどくさいぞ。


「まあ、並ぶしかないか……」

「そうだね。大人しく並ぼう」


 もう少しだし、多少なら待ってもいいか……


 俺達は貴族の得意技である横入りをせずに大人しく待つ。

 進みは遅いものの少しずつ進んでいくのをひたすら待っていると、ようやく俺達の番になった。


「あー、長かった」

「待つのは退屈だわ」

「疲れましたー」


 俺達は愚痴を言いながら門に近づく。

 すると、門の前にいる兵士のうちの一人が手を上げた。


「失礼。現在は検問を実施しておりますのでご協力をお願いします」


 兵士が丁寧な口調で声をかけてくる。


「早くしろ」

「急いでね」

「2人とも、その偉そうな口調をどうにしかしましょうよー」


 普通なんだが……


「すぐに終わります。ウォルターに入国の目的は何ですか?」

「観光だよ」


 俺が口を開こうとしたら婆さんが前に出て対応し始めた。


「ああ、なるほど。滞在予定は?」

「私は数日だけど、こいつらは知り合いに会いにいくらしいので長いと思う」

「ふむふむ。貴殿は冒険者ですかな?」

「そうだよ。ほれ」


 婆さんが冒険者カードを出し、兵士に見せる。


「おー、Bランクですか。すごいですね。わかりました。貴殿は問題ないです。後ろの方々も冒険者ですか?」


 高ランクっていいなー。


「俺達も冒険者だ。ウォルターにいる伯父に会いに来た」


 俺はそう言って、3人分の冒険者カードを兵士に渡した。


「伯父ですか……なるほど。問題はないでしょう。それと持ち物検査と身体検査を致します」


 ん?

 なんだそれ?


「それをしないといけないのか?」

「はい。現在はそれが必須となっています」


 なんでそんなことをせねばならないんだ?


「ロイド、落ち着け」


 俺がイラっとしていると、婆さんが俺の背中に手を置き、窘めてくる。

 だが、窘めないといけないのは俺ではない。


「では、失礼します」


 兵士がそう言って近づいてくると、マリアが俺の背中に隠れ、リーシャは…………剣を抜いた。


「私に近づくな……私に触れるな」


 リーシャが表情を変えずに剣を兵士に向ける。

 すると、さすがに場がピリつき、兵士の方も腰の剣に腕を伸ばした。


「ほう? 俺達に剣を向ける気か?」


 俺は手のひらを上に向け、火球を出す。


「やめなって! なんで問題を大きくするんだよ」


 婆さんが怒鳴ってきた。


「いや、ここで俺が何もしないという選択肢はないんだ」


 俺の男としての評価が下がるわ。


「いいから魔法を引っ込めな! 絶世の嬢ちゃんも剣を納めろ! 私が話す」


 俺とリーシャは婆さんにそう言われたので腕を下ろした。

 すると、婆さんが兵士に近づく。


「…………兵士さん、こいつら、エーデルタルトのお貴族様だよ」


 婆さんが小声で兵士に教える。


「エーデルタルトの…………」


 兵士があからさまに嫌な顔をした。

 どうやらここでも評判は良くないらしい。

 同盟国でこれって、評判が良いところってないのかね?


「…………水の神殿で式を挙げる予定の新婚さんだ。刺激をしない方が良い。盛り上がっているところだから何をするかわからないよ」


 盛り上がっているのは俺があげた文のせいだけどね。


「うーむ……」


 兵士は悩んでいる。

 どうしていいかわからないんだろう。


「…………エーデルタルトは同盟国だろう? ただでさえ、めんどくさい連中だし、下手な事件を起こさない方が良い。こいつらの身分は私が保証するよ。私は元Aランクなんだ」

「Aランクのラウラ殿は存じております…………わかりました。通ってください」


 兵士が身を避け、通してくれる。


「ほら、さっさと行くよ」


 婆さんが俺達を促す。


「はいはい」

「ラウラさんって有名なんですねー」

「私達より信用されているのが微妙な気分ね」


 俺達は婆さんに続いて歩いていき、門をくぐった。

 門をくぐると、そこは水路が張り巡らされたきれいな街並みだった。


「ハァ……最後の最後で疲れたよ」


 婆さんがため息をつく。


「身体検査なんて許すわけがないだろ」


 せめて、女の兵か侍女を用意しろ。


「そこまでのことはしないだろ。しかし、なんであんなに厳重なのかね?」

「さあ? 嫌な予感がしないでもないが、伯父上に聞いてみればわかるだろ」

「それもそうだね。じゃあ、ここでお別れだ。達者でね」


 婆さんが別れを告げてくる。


「城には来ないのか? 多分、歓迎されるぞ」

「いいよ。引き止められそうだし、贅沢なのは肩が凝っていけない。ギルドに行って、適当な宿屋を紹介してもらうよ」


 まあ、それもそうか。


「ふーん……そうか。じゃあ、これでお別れだ。ここまで助かった。感謝する」

「お婆さん、ありがとう」

「ありがとうございます」


 俺達は婆さんに感謝の言葉を伝える。


「いいよ。こっちこそ世話になった」

「職を失ったら言えよ。雇ってやるから」

「その時は頼むよ。じゃあね」


 婆さんはそう言うと、歩き出した。


「エイミル王によろしく」

「はいよ」


 婆さんは手を上げると、そのまま歩いていってしまった。


お読み頂き、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ウォルターに到着したので終わりが近づいてるのだろうか… エーデルタルト仕草がいちいち面白くて気に入ってる作品なので長く続いて欲しい。他であまり見ない独創的な面白さ。
[気になる点] 歓迎されるのだろうか…
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