第017話 装備を新調
俺は服、外套、カバン、そして、杖を購入し、ボロボロ王子から初心者冒険者(予定)に姿を変えた。
「嬢ちゃん達はまだかね?」
ジャックが置いてある剣を眺めながら聞いてくる。
「あいつらは時間がかかると思う」
「都会の女はめんどくせーな」
俺はそれに頷くことはできない。
めちゃくちゃ思っているし、早くしろよと思っているが、頷かない。
「文句を言ったらあなたのためにーとか、男はこれだからって言うらしいぞ」
陛下が言ってた。
「今後、絶対に使わないアドバイスをありがとよ」
俺とジャックは暇なので適当に武器や防具を眺めながら時間をつぶしていく。
そして、しばらくすると、リーシャとマリアがおばさんと共に奥から出てきた。
「お待たせ」
「お待たせして申し訳ありません」
リーシャは堂々と言い、マリアは申し訳なさそうに言う。
これが妻と言い張る婚約者と臣下の差である。
いや、まあ、リーシャは子供の頃からこんなんだったし、性格の差なんだろうけど。
「思ったより早かったな」
「他に言うことないの?」
ハァ……めんど。
「お前は何を着ても似合うから今さら言う必要がないと思ったんだ。たとえ、乞食の姿でも輝く」
リーシャは白を基調としたぴっちりとした服であり、動きやすさを重視したのだろうが、身体のラインがよくわかる。
さすがのスタイルだ。
また、スカートみたいなのを履いているが、短い。
まあ、タイツを履いているし、問題はないと思う。
「褒め方が適当ね。それ、前にも聞いたわ。というか、乞食言うな」
使いまわしがバレたようだ。
「他に形容しようがないからな。しかし、その格好でいくのか?」
ちょっと煽情的ではないだろうか?
「動きやすいほうが良いわ。まあ、人前では外套を羽織るから大丈夫」
「店主、外套を。一番良いやつな」
俺はすぐに店主に注文する。
すると、すぐに店主が2つの外套を取り出し、カウンターに置いた。
俺はそれを手に取ると、1つをリーシャに渡し、もう1つを持って、マリアのところに行く。
マリアは期待しているような目で俺を見上げていた。
「お前は修道服よりそっちの方が良いな」
マリアはゆったりとした白いフード付きのローブだ。
ザ・ヒーラーって感じがする。
「あ、ありがとうございます…………」
まだ言うの?
めんどくせー2号さんだわ。
「そうしていると、まさしく聖女だな。綺麗だし、可愛いと思うぞ。ほら」
俺はそう言って、外套を渡した。
「あ、ありがとうございます! このマリア・フランドル、必ずや、で、ロイドさんの役に立ってみせます!」
家名を言うな。
殿下って言おうとすんな。
「頑張れ」
俺はやる気をそぐのは良くないと思い、頷きながらマリアの肩を叩く。
「お疲れさん。大変だねー…………」
ジャックが笑いながらねぎらってきた。
「別に思ったことを言っただけだ」
ホントは脳をフル回転させた。
「そうかい。嬢ちゃん達は武器をどうするんだ?」
ジャックは俺の背中をポンポンと叩くと、リーシャとマリアに確認する。
「私は自分の剣があるからいいわ」
いや、それ、俺の……
「私は…………どうしましょう? 武器なんてナイフくらいしか持ったことがないです」
飛空艇で自害しようとしたナイフな。
「ヒーラーっていったらメイスか? メイス…………」
ジャックがじーっとマリアを見る。
メイスは鉄でできた殴打系の武器だ。
マリアに持てるわけがない。
「マリアには無理だろ。というか、そいつに武器はいらない。安もんの杖でも持たしておこう」
金貨3枚もするけど。
「それがいいか。嬢ちゃん、あそこの杖から適当に選べ」
ジャックは店の端にある残っている杖を指差した。
「どれがいいんですか?」
「知らん。旦那に聞け。俺は会計をしておく」
ジャックはそう言うと、店主のところに行く。
「マリア、来い」
俺はマリアと共に店の端に行く。
「…………えへへ。リーシャ様に悪いですけど、結婚した気分です。2号さん呼ばわりはあれですけど、悪くないですね」
マリアが小声で嬉しそうに笑った。
「フリでしょ」
「――ヒッ!」
なお、リーシャも普通についてきており、マリアの後ろにいる。
「あまりマリアを虐めるなよ。お前、美人な分、怖いぞ」
マリアが小動物に見えてきた。
「虐めてないわ。友人だもの。ね?」
「はいっ!」
もうほっとこ。
「マリア、どの杖が良い?」
俺は女の友情には関わらないようにし、マリアにどの杖が良いかを聞く。
「どれが良いんですか? 私にはさっぱりわかりません」
「どれも性能は一緒だ。そもそもお前は杖がなくても回復魔法を使えるし、歩く補助道具かとっさに叩く用にしろ。だから持ってみた感覚で選べ」
「ほうほう……」
マリアは樽に立てかけてある杖を1つ1つ手に取ると、重さを確認したり、振ってみたりする。
「ねえ? お金は大丈夫?」
リーシャが聞いてくる。
「臨時収入が入りそうだから大丈夫。でも、まあ、この村で豪遊は無理だな」
「そうね。さっさとギルドに行って、大きい町に行きましょう」
俺とリーシャが話していると、マリアは杖を決めたらしく、杖を持って、会計をしているジャックのもとに行った。
そして、会計を終えた俺達は店を出た。
「ジャック、合計でいくらだった?」
「金貨50枚ちょっとだな」
高いな、おい。
「内訳は…………いい」
俺は絶対にリーシャとマリアの服だろうと思い、聞くのをやめた。
「この杖は他で売れるんだな?」
ジャックが俺が目利きした3本の杖を持って、逆に聞いてくる。
「3本共、良いやつだ。魔法屋とやらに売れ。専門家ならわかってくれる」
「わかった。ここの料金は俺が払ってやる」
だったらもっと良い服を買えば良かったか?
まあ、どうでもいいか。
「じゃあ、高く売れても安く売れても恨みっこなしな」
「騙されてないことを祈るぜ」
「俺の目利きを信じな」
「そうするわ」
うんうん。
俺は優秀な魔術師だから大丈夫。
「じゃあ、ギルドに行こうぜ」
「そうだな。こっちだ」
ジャックは頷き、歩いていったので、服と装備を新調した俺達3人も歩き出した。
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