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第161話 裏切者は?


 俺達は馬車に乗り、ローンとかいう廃村に向かっていた。

 ひたすら馬車に揺られていると、日は完全に昇り、昼間になった。

 正直、寝てないのでちょっと辛い。


「見えてきたよ……ローンの村だ」


 俺達が馬車に揺られていると、婆さんが荷台から声をかけてくる。

 俺は馬車から顔を出し、前方を見ると、確かに遠くに村が見えていた。


「あれか……」

「どうする? 夜まで待つかい?」


 救出作戦だし、夜の方が良い。

 それに休んだ方が良いとは思うが……


「あまり時間はかけたくない。それに敵が魔術師なら昼夜はあまり関係ないだろうな」

「じゃあ、正面から行くかい?」

「それはそれでなー……」


 人質がいるわけだし、どうだろう?


「ロイド王子、ラウラ殿。ここは二手に分かれましょう」


 俺がどうしようか考えていると、ユルゲンが提案してくる。


「二手にと言うと?」

「敵が魔術師ならば私はあまり役に立てません。私が正面から捜索に向かい、注意を引きますので御二人は時間を置いてから村の裏に回ってください」


 つまり囮作戦か……


「お前が危険になるぞ?」

「構いません。私は姫様の親衛隊です。姫様のためなら命など投げ捨てられます。それに姫様を護衛できなかった汚名を晴らす機会を与えてもらいたいのです」


 うーん、そう言われたらねー……


「ラウラ、それでいいか?」

「ユルゲンがそこまで言うならいいよ 」

「感謝します! では、私は先に村に行ってきますので後はよろしくお願いします!」


 ユルゲンはそう言うと、馬車を降り、村に向かって歩いていった。


「どう思う?」


 婆さんがユルゲンを見ながら聞いてくる。


「わかりやすい男だなと思う」

「それはどういう意味だい?」

「あいつさー、ずっと姫様を救う、救うって言ってるけど、よくあそこまで生きてるって断定できるよな。俺は半々だと思うぞ」

「オリヴィア様の無事を信じているのさ」


 ほーん……


「その信心によって、偶然にも俺達と合流できたのかねー? 偶然にも自分だけ助かったのかねー?」


 他の親衛隊は?


「そうじゃないかい?」

「ラウラさー、王様が戦地に自分の娘を呼ぶと思うか? あの言い方だと、コンラートとの関係がバレたっぽかったけど、だからって王女を戦地には呼ぶと思うか? 普通、その手紙が偽物だとすぐにわかるだろ」


 封筒には王家の封緘印があったっていうが、そんなもんはどうとでもなる。

 偽物でもいいし、印を盗んだ可能性だってある。


「オリヴィア様は渡りに船だから気付かなかったんだろうね」


 城を抜け出さずにコンラートと落ち合うはずの町に行けるんだからな。


「俺が言ってるのはバカ王女じゃなくて、バカ王女を止める立場の人間のこと」

「ユルゲンかい?」

「そそ。裏切者はあいつで確定だろ」

「そうかい……それは残念だね」


 婆さんは驚かない。


「わかってたか?」

「あんたが言うように出来すぎだからね」


 やはり婆さんは気付いていたか……

 俺が二手に分かれようと提案した時、こいつは一人でもやると言った。

 それは最初からユルゲンを味方にカウントしていない発言だ。


「さすがにお前くらいの経験があればわかるか……」

「そりゃね。急に現れた味方は疑うもんだ…………あいつ、私達をあそこで待ってたね」


 俺達がサラスの町に行くと考えて、道中で待ち伏せていたんだろう。


「そうだと思うな」

「……追うかい?」


 婆さんがかなり遠くなったユルゲンを見ながら聞いてくる。


「裏に回れって言われたからな。正解は正面だろう」


 罠か何かあるな。

 もしくは時間稼ぎ。


「降りな」


 俺は婆さんに言われた通りに馬車を降りる。

 すると、婆さんも荷台から降りた。


「さて、追うか……」

「気配を消す魔法を忘れずにね」

「わかってる」


 俺達は気配を消す魔法をかけると、小走りで村に向かった。

 そして、ある程度まで近づくと、距離を取りながらユルゲンの後をつける。


「あいつ、全然警戒してないな」


 ユルゲンは周囲を見渡したりもしてないし、足を緩めることもなく、村に向かっている。


「そういうことだろ。殿下、幻術だけには気を付けな。多分、例の魔術師がいるよ」


 だろうなー……


「お前は腰に気を付けろよ。マリアはいないからな」

「嫌味を言うねー……」


 お前が先に言ったんだろ。


 俺達はその後もユルゲンを追っていくと、ユルゲンが村に入った。

 村に入った後もユルゲンは周囲を警戒することも足を緩めることもなく進んでいく。


「警戒していないというか、焦ってる感じか?」


 若干、歩くスピードが速い気がする。


「確かにそんな感じがするね…………殿下、オリヴィア様から受け取った指輪を貸してくれ」


 婆さんがそう言って手を伸ばしてきたのでカバンから指輪を取り出し、婆さんに渡す。


「それは報酬だから後でちゃんと返せよ」

「わかってるよ。ケチくさいことを言う王子様だわ……」


 婆さんは文句を言いながらも受け取った指輪に何かの魔法をかけた。


「何したんだ?」

「追跡の魔法だよ。この指輪にはオリヴィア様の跡が残っている。それでオリヴィア様の居場所を探れる」


 犬みたいな魔法だな……


「便利だな。それでどこにいる?」

「あっちだね」


 婆さんはユルゲンがいる方向を指差す。


「つまりあいつはオリヴィアがいる所にまっすぐ向かっているわけ?」

「そうなるね」


 これでクロなことが確定したな


「もう居場所がわかったならユルゲンを生かす意味はない。殺そう」

「出来たら生かして捕らえたいんだけどねー。まあ、無理か……ん? 建物に入ったね」


 婆さんが言うようにユルゲンがとある建物の中に入っていった。


「オリヴィアはあそこか……」

「あそこはこの村の村長の家だね」

「詳しいな」

「見りゃわかる。こういう村は一番大きい家が村長の家だよ」


 そう言われてユルゲンが入った家と周囲の建物と見比べると、確かにあの家が一番大きい。


「なるほどねー」

「ジャックが言ってた通りだね。洞察力に優れているけど、常識がない」


 あいつ、ペラペラしゃべりすぎ。

 笑いながら手紙を書くあいつが容易に想像できるな。


「こんな貧相な村なんか知るわけないだろ」

「そういうところだよ……ナチュラルに他者を見下しすぎ。気を付けな」


 はいはい。


「行くぞ」

「あいよ」


 俺達はゆっくりと村長の家に向かった。


お読み頂き、ありがとうございます。

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