表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

160/278

第160話 姫を救う王子役


「ユルゲン、あんたに話しておかないといけないことがある」


 荷台に戻った婆さんがユルゲンに説明し始める。


「何でしょう?」

「まず、私はオリヴィア様の命でジャスに向かった」

「命? 何かあったんですか?」

「ああ、オリヴィア様がジャスのコンラート王子に手紙を送ったんだよ」


 どこまで話す気だろ?


「手紙……」

「ああ。まあ、こちらの状況を書いた手紙だね」


 さすがに恋仲云々は説明しないか。


「なるほど。それで?」

「ジャスでコンラート王子に会うことができた。そこで話を聞いたんだが、どうやらジャスでもエイミル軍と思わしき者に村が襲われたらしい」

「それは……まことですが?」

「少なくとも向こうは攻められたから軍を出したって認識だね。エイミルと一緒」

「きな臭いですな」


 ユルゲンも気付いたようだ。


「そうだね。さらに言うと、私達がジャスに向かう途中で謎の魔術師に襲われた。幻術使いだよ」

「幻術……もしや、あの時の感覚は幻術か…………ラウラ殿、今回のことには第三者がいるのでは?」

「私もそう考えた。だから停戦を持ちかけてもらうために北に向かっていたんだよ」

「なるほど……確かにこの事は陛下の耳に入れた方が良いですな。ですが、ジャス側が応じるでしょうか?」


 ジャス側からしたら罠に見えるかもしれないしな。


「客がいるって言っただろ。私達はコンラート王子をジャス王のもとに連れていく仕事を受けた」

「コンラート王子がいるのですか!?」


 ユルゲンの驚いた声が聞こえてくる。


「ああ。あと、例のエーデルタルトの連中」

「……なるほど。そうなると、あとはオリヴィア様救出ですな」

「そうなるね。だけど、敵が幻術使いなら兵を率いるのはやめた方がいい。幻術で惑わされると逆に敵に回ることがある」


 幻術は厄介だからなー。


「では、どうしますか? 姫様を見捨てることはできませんぞ」

「わかってる。私とロイド王子が救出に向かうからユルゲンもついてきてくれ」

「ロイド王子は大丈夫ですかな?」


 それはどういう意味かな?


「問題ない。エーデルタルトは今回のことに関わっていない。それは私が保証する」

「そうですか……い、いえ、そうではなく、エーデルタルトの王子の身に何かあったらマズいでしょう」


 俺の身を案じてくれているらしい。


「それも問題ない。超一流の魔術師だよ」


 婆さん、良い奴。


「そうですか……わかりました。ならば急ぎましょう」

「そうだね……ちょっと待ってな」


 婆さんがそう言うと、覗き込んできた。


「こんな感じでいいかい?」

「問題ない」

「あのー、もしかしなくても私達は歩きですかね?」


 マリアが聞いてくる。


「ラウラしか馬車を動かせないんだからそうなるな」


 もしかしたらユルゲンも動かせるかもしれないが、ユルゲンも救出組だ。


「えー……」

「ここから西に行くとウチの国の町がある。小さな町だが、馬車ぐらいはあるし、そこで馬車を借りて、御者を雇おうか」


 マリアが不満を漏らすと、コンラートが提案してくる。


「大丈夫か?」

「私としても早く行きたいからね。適当に金貨を渡せば大丈夫」


 まあ、任せるか。


「じゃあ、それで頼む。リーシャ、マリア、気を付けてな」

「気を付けることなんかないわよ。気を付けるのはむしろ、あなたね」

「殿下、無事に帰ってきてくださいね」


 リーシャとマリアがそう言いながら馬車から降りる。


「わかってる。さっさと終わらせてウォルターに行こう。コンラート、頼んだぞ」

「ああ。そっちもね。それとこれを持っていけ」


 コンラートはそう言うと、腰の剣を渡してくる。


「剣? 俺は魔術師だぞ」

「一応だ。エーデルタルトの人間なら使えるだろ。こっちは大丈夫だから持っておけ」

「わかった」

「よし、じゃあ、私達は行くよ」


 コンラートも馬車を降りると、3人は西に向かって歩いていった。

 俺はそれを見届けると、馬車から降り、ユルゲンがいる前方に回る。


「お前がオリヴィアの親衛隊というユルゲンか?」


 俺を見て、直立不動になったユルゲンに尋ねる。


「はっ! この度はご協力に感謝します!」


 ユルゲンが敬礼をしながら答えた。


「気にするな。それよりも馬車に乗れ。細かい話は動きながらしよう」

「そうですな。ラウラ殿、お願いします。疲れたらおっしゃってください。私も慣れてはいませんが、操縦できると思います」

「大丈夫だよ。いいから乗りな。さっさと出発しよう」


 俺とユルゲンが馬車に乗り込むと、馬車が動き出す。


「ロイド王子、王子は今回のことをどう見ますか?」


 馬車が動き出すと、ユルゲンが聞いてくる。


「お前らもジャスも戦う理由がないだろ。テールじゃないか?」

「やはりそう思われますか……」

「きっかけがお互いに村を襲ったって言ってたけど、そもそもお互いに村を襲うメリットがないしな」


 得る物がまるでない。

 ましてや、両国共にたいした物があるわけでもないのは両国共がわかっていることだ。


「そうですなー……うーむ、やはりまずは姫様を救い出し、なんとか停戦に持ち込まないといけませんな」

「そうだな。それとなんだが、エイミル王がオリヴィア王女を呼んだ理由って何だろうか?」

「さあ? しかし、かなり強い言葉ですぐに来るようと手紙に書かれていましたし、何か問題が起きたのでは?」


 問題ねー。

 普通ならここでオリヴィアとコンラートの仲がエイミル王の耳に入ったって思うんだが……


「それ、本当に王からの手紙か?」

「……偽手紙と? 姫様を外に誘い出すためのものとお考えか?」

「タイミング的にそう見える」

「ふーむ……しかし、手紙を送り届けてきた兵は確かに我が軍の者でしたし、手紙の封に使われた封緘印は王家のものでした」


 本物、か?


「まあ、わかった。どちらにせよ、オリヴィア王女を救い出した後はエイミルの王のところに行くわけだからそこで真偽がわかるだろ」

「そうですな。早くお救いしなくては!」


 お救いねー……


新作も投稿しております。

読んでもらえると幸いです。(↓にリンク)


よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新作】
宮廷錬金術師の自由気ままな異世界旅 ~うっかりエリクサーを作ったら捕まりかけたので他国に逃げます~

【新刊】
~書籍~
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(1)
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(2)

週末のんびり異世界冒険譚 1 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~
週末のんびり異世界冒険譚 2 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

【販売中】
~書籍~
廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~(1)
廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~(2)

~漫画~
廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 1 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~

【現在連載中の作品】
その子供、伝説の剣聖につき (カクヨムネクスト)

週末のんびり異世界冒険譚 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~

バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~

最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~

【漫画連載中】
地獄の沙汰も黄金次第 ~会社をクビになったけど、錬金術とかいうチートスキルを手に入れたので人生一発逆転を目指します~
がうがうモンスター+
ニコニコ漫画

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~
カドコミ
ニコニコ漫画

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~
カドコミ
ニコニコ漫画

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~
ガンガンONLINE

【カクヨムサポーターリンク集】
https://x.gd/Sfaua
― 新着の感想 ―
[一言] これ姫様が黒幕か…?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ