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第156話 賄賂大国エーデルタルト


 エイミルのオリヴィア王女はコンラートと直接話すために国境の村に向かったらしい。


「さっき俺達が襲撃者に襲われたと言わなかったか?」

「聞いたね。魔術師だろ?」

「俺達が襲われたのはオリヴィアの手紙を持っていたからだ。これがどういう意味かわかるか? オリヴィアの行動がバレているということだ。そんな状況で城を出て、さらに王都まで出て国境の町に向かった? 素晴らしい開戦の道具が自ら外に出るとはな」


 アホすぎる。

 俺達と会った時は王都内だったし、まだラウラがいたから良かったが、今回は誰が護衛をしたんだ?

 あの魔術師より上の魔術師か?


「……マズくないか?」


 コンラートもさすがに気付いたらしい。


「俺なら狙うな。実を言うと、俺はお前にジャス王のところまで行く護衛を頼まれるかと思っていた。宰相はお前が外に出るのを反対するだろうし、内密に王都を出る場合の護衛として俺やラウラを雇うもんだと思っていたんだ。だが、もはやそれどころじゃなくなったな」


 それも致し方ないと思っていた。

 ここまで関わってしまった以上は無視するわけにはいかない。

 この状況でこの事態を無視するのは敵が見えない状況では悪手だからだ。


「君達を雇いたい」

「高いぞ?」

「私はこの国の次の王だ」


 素晴らしい答えだね。


「わかった。お前、城を抜け出せるか?」

「大丈夫。王族のみが知っている王都の外まで出られる秘密の抜け道がある」


 どこの城にもあるわな。

 もちろん、ウチにもある。


「よし。お前はそれで夜中のうちに王都を出て、俺達と合流だ」

「わかった。こっちも君達の護衛を解くように言うよ」


 監視だろ。


「それはやめろ。宰相はその命を無視する。お前は俺達に手紙の返信を急いで頼んだことにしろ。俺達はこのまま王都を出る」


 宰相は王子の言うことを聞かないだろう。


「宰相は私の命を聞かないか?」

「聞かない。それはどこも一緒だ。ウチの宰相も俺の言うことを聞いたことがない」


 城を抜け出すのを見逃してって言ったのに陛下にチクりやがった。

 あくまでも宰相は王の臣下であって、俺の臣下ではないのだ。


「そうか……わかった。王都の北門から少し西にある巨石の前で待っていてくれ」

「そこが抜け道の出口か?」

「ああ。これは誰にも言ってはいけないことなんだけどね」


 そりゃそうだ。


「安心しろ。エーデルタルトがそれを活用する時はテールを倒して征服した時だ。その時はこの国は降伏するしかない」


 大国テールも占領した巨大国家になっている。

 この国ではとてもではないが、対抗できない。


「それもそうだね。でも、言わないで」

「言わない。ロンズデールの名に誓おう。だからお前も俺達のことをエーデルタルトに報告しないようにお前の親父に言え」


 言われると非常に困る。


「約束しよう。もちろんイアンにも言わない」

「よし。今から俺達は秘密を共有する友だ」


 意味わかるよね?


「そうだね。末永くお願いするよ」


 わかってくれたっぽい。


「では、時間がないし、さっさと動こう」

「ああ、頼むよ」


 俺は話が決まると、部屋を出る。

 部屋の前ではリーシャ、マリア、ラウラ、宰相が待っていた。


「終わった?」


 リーシャが聞いてくる。


「終わった。悪いがすぐに出るぞ。コンラート殿から手紙の返信を頼まれた。宰相殿、俺達は王都を出る。詳しくはコンラート殿から聞いてくれ。ではな」


 俺は宰相の返事を聞く前に歩き出した。

 すると、当然のごとく、リーシャ、マリア、ラウラもついてくる。

 そして、そのまま歩き、階段を降りると、カジノを出た。


「話は纏まったのかい?」


 カジノを出て、宿屋に向かって歩いていると、婆さんが聞いてくる。


「ああ。詳しくは後で話す。今はコンラートが宰相に説明している間にさっさと王都から出ることが大事だ」

「何かあったんだね。わかった」


 さすがは経験豊富な冒険者だ。

 マズい状況なのを理解したらしい。


 俺達は急いで宿屋に戻ると、チェックアウトし、馬車に乗り込んだ。


「どこだい?」


 馬車の荷台に座った婆さんが手綱を握りながら聞いてくる


「北門だ」

「この時間は開いてないよ」


 まあ、夜中だしな。


「俺が開けさせるから問題ない」

「わかった」


 婆さんは頷くと、馬車を動かし始める。

 しばらく馬車の揺られていると、門に着いたため、馬車が止まった。


 俺は馬車から降りると、警備をしている門番のもとに行く。


「ご苦労さん。門を開けてくれ」

「申し訳ございませんが、この時間は門を閉じることになっているのです」


 兵士は当然のごとく拒否してきた。

 だが、反応を見るに俺が誰かは知っているようだ。


「コンラートから急ぎの仕事を受けた。お前の職務は理解しているが、緊急事態ということで開けてくれ」

「こちらにはそのような連絡は来ておりませんが?」

「依頼を受けたのがさっきだからな。連絡はまだだろう。だが、それを待っている暇はないから開けろ。それとも、お前はエーデルタルトの王子である俺をここから出さん気か?」

「そ、それは……」


 一門番のこいつに判断できる能力はない。

 だが、相手は傲慢で有名なエーデルタルトの王子だ。

 混乱しているだろう。


「別に入れろと言っているわけではなく、出ると言っているんだ。何の問題がある? 他国の者が出るだけだろう」

「それはそうですが……」


 逃げるようにしか見えないって顔に書いてあるわ。


「上司に怒られたら強引に開けさせられたと言え。実際、そうしても良いんだぞ」


 俺はそう言いながらカバンから金貨を取り出し、兵士に投げた。

 兵士は金貨を受け取ると、俺を見る。


「それを受け取るのと燃えるのだとどっちがいい?」


 俺がそう聞くと、兵士は金貨を返してきた。


「いえ、これは結構です…………門を開けよ!」


 兵士は俺に金貨を返すと、門に向かって叫ぶ。

 すると、門がゆっくりと開かれた。

 俺はそれを見ると、馬車に戻り、リーシャとマリアを見る。


「足りなかったかな?」

「金貨1枚はないわよ。5枚くらいじゃないと」

「そうですよ。賄賂はケチってはダメです。リスクを負うわけですからちゃんと払わないといけません」


 やっぱりそうだったか……

 兵士が返してくるから変だと思った。


「あんたら真っ黒だね……あの兵士が可哀想だよ」


 ケチな王子って思われてないかな?


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[良い点] 唯のゲスと、手段を選ばない系のゲスは違うなぁ。 ゲスい手段は効率がいいから選択してるだけっぽい。悪人じゃなくて悪ガキレベルに感じるから、ゲス過ぎずいい感じ?
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