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第153話 前から思ってたけど、たまに毒を吐くな……


 俺がカードゲームを楽しんでいると、ディーラーがイカサマをしてきた。


「イカサマなんてしておりません」

「そうですとも。当店はそのような行為はしていません」


 ディーラーと支配人が慌てて否定する。

 だが、表情がイカサマの難癖に対応するものではない。

 どう見ても焦っている。


「ふむ。では、そこの男を調べてもいいか? きっと袖に6以下のカードがあるぞ。何しろマリアを疑った際にマリアの袖をまくるように指示したわけだからな」


 自分でイカサマの方法を自白したようなものだ。


「そ、そのようなことは……」

「では、見せろ。カードがあったら腕を切り落としてやろう」

「ロ、ロイド様、裏に参りませんか?」

「それもそうだな。他の客に迷惑がかかる」


 他の客は楽しそうに遊んでいるのだから血は見たくないだろう。


「こ、こちらに……」


 俺達は支配人に連れられて、店員の控え室らしき場所に行く。

 控え室に着くと、すぐに支配人が頭を下げてきた。


「も、申し訳ございません!」

「ふむ。では、イカサマかな?」

「すでに店の資金をオーバーしており、これ以上は支払えないのです」


 だろうね。


「それでイカサマねー……しかも、俺相手にか? お前は俺が誰だか知らんのか?」

「もちろん存じております。私の首を切っていただいて結構でございます」


 潔いねー。

 やはりこいつ貴族だわ。


「やはりお前は俺が誰かわかっていないようだ……」

「え?」

「貴様程度の首で手打ちになる問題ではないと言っている。それで済むと思うな」

「…………ロイド様、少々、お時間を頂いても?」


 ようやく事態を理解したらしい。


「うむ。待っている。俺もちょっとやることがあるのでな」


 そう言って、チラッとマリアを見る。

 マリアはまだ泣いていた。


「……失礼致します」


 支配人は一礼すると、退室していった。


「泣くなよ……」

「泣きますよ! なんで勝てないんです!」


 そりゃねー……


「よしよし。お前は二度と一人でギャンブルをするんじゃないぞ」


 俺はマリアを抱きしめ、頭を撫でる。


「おかしい、おかしい。品行方正な私が何故、こんなことに」


 品行方正じゃないからじゃないかな?


「あなたが何もかも選択肢を間違える女だからよ」


 リーシャが心無いことを言う。


「わーん! 淫乱放火魔のくせにー! 世の中間違ってるー!」


 マリアが俺の胸の中でまた泣き出した。


「よしよし、そうだな、きっとそうだ。でも、大丈夫だから」

「…………ん? 選択肢を、間違える……?」


 マリアが顔を上げて、訝しげな顔をしながら俺を見る。


「そこは間違えてないぞー」


 安心したまえ。


「マリアの不運は今更だからどうでもいいけど、これでコンラート王子に会えるわね」


 ホントに心無い女だな……

 友達だろうに……


「まあな。見たか、ラウラ。これが超上流階級の力だ」

「ちっちゃい嬢ちゃんの心に大きな傷がついたけどね……」

「仕方がない。マリアには素晴らしい能力があるんだ」


 この力のおかげでパニャの大森林も抜けられたし、海でも叔母上に会えた。


「確かにすごいね……でも、王子が出てくるかね? 宰相じゃないか?」

「いや、宰相ごときではどうにもならん。絶対に王子が出てくる。こうなったら昔のよしみで水に流すしかないからな」


 あまり交流はなかったが、同じ学校に通っていたわけだし、そういう人脈を活かす時だ。


「ふーん……あんた、わざとイカサマをさせる隙を作ったんだね」

「当たり前だろ。あのタイミングで支配人が声をかけてきたんだぜ? 絶対にそこだと思ったわ」


 マリアがカードを選んだ瞬間に声をかけてきやがった。

 だから俺もリーシャもわざとディーラーから目線を切った。


「私はディーラーを見てたけど、全然わからなかったよ」

「そういう技術がある。どう見ても器用そうな男だったし、魔法を使わなくてもすり替えくらいはできるんだろ」

「私もそれで負けたのかね?」

「お前はどうせチマチマと負けたんだろ。気付いたら金貨がなくなっていたパターン。その場合はイカサマじゃない」


 あのゲームはそうやって金を巻き上げるゲームなのだ。

 俺のようにあそこまで勝ち続けるなんて不可能に近い。


「……そうかい」


 普通に負けたらしい。


「気にするな」

「やはりギャンブルはやらないよ」

「私もです!」


 マリアもやらないらしい。

 マリアを使えばルーレットとかでもボロ勝ちできそうなんだがなー。

 でも、泣いちゃうからカジノに行くのはもうやめておこう。


 俺はその後もマリアの頭を撫で、落ち着かせながら待つ。

 しばらく待っていると、ノックの音が聞こえたのでマリアを離し、扉を見た。


「失礼するよ」


 俺が入室の許可を出す前に長い黒髪の男が宰相と共に部屋に入ってくる。

 俺はこの男を見て、ようやく思い出した。


 確かに挨拶を受けたし、下級生にいたな……。

 ナヨナヨした男だなーと思ったことを思い出したわ。


「久しいな、コンラート。居留守は良くないぞ」

「それは申し訳ない。急に来られたので歓迎ができないんだ。エーデルタルトの王子に失礼なことはできないからね」


 居留守で追い返すのも失礼な気がするが、それはアポなしで来た俺が悪いと言いたいらしい。

 まあ、その通りだ。

 他国の王子がアポなしで訪問って聞いたことないし。


お読み頂き、ありがとうございます。

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[一言] 支払えない時点でカジノ運営してる貴族(の首)の資産価値はなくなったんだから、そこからさらにイカサマという負債が発生したとして当事者貴族の首では弁済として成立しないよねぇ
[一言] 策としてはマリアへの負の信頼度が高すぎる気もするけど なにはともあれめでたい
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