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第143話 到着


 俺達は馬車での旅を続けている。

 変な男に襲われたものの、それ以降は特に襲撃されることもなければモンスターが出てくるといったこともない。

 俺達は話をしたり、婆さんに魔法を教えてもらいながら進み続け、3日が経っていた。


「そろそろ着くよ」


 俺達がぼーっと何も変わらない平原を眺めていると、婆さんが教えてくれる。


「やっとか……しかし、全然、町とかがなかったな」


 これまでの間、町も村も見えなかったし、すれ違う人すらいなかった。


「あえて避けたんだよ。この国は平和だけど、一部の町以外は農村しかない。お貴族様なあんたらが泊まれる村なんてないよ」


 王都はともかく、レイルは港町だったから特別なわけか。


「馬小屋?」

「馬小屋。テントで野宿の方がマシなんだよ。村の悪ガキが悪さに来るだろうし」


 リーシャとマリアにかな?


「殺すなー」

「だから避けて最短ルートを通ったんだよ」


 なるほどねー。

 しかし、エイミルもジャスも面白みのない国だなー。

 カジノに期待かね?


「王都は平和か?」

「多分ね。普段は治安が良いから大丈夫。今もだろうね」


 情報を隠しているんだったな。


「戦争が始まりそうって知ったらパニックだろうなー」

「さあね? とにかく、もうすぐで着くからもうちょっと待っておくれ」

「はいよ」


 俺達はその後も馬車に揺られ続け、到着を待つことにした。

 そして、しばらくすると、前方に城壁のようなものが見えてくる。


「あれがジャスの王都さ」

「ふーん……本当にエイミルの王都と変わらんな」


 規模も見た目もほぼ一緒だ。


「国の規模自体がほぼ一緒だからねー。そんなことより、冒険者カードを用意しておきなよ。王都に入るには必要だから」

「エイミルでは提示しなかったぞー」

「嫌味を言うんじゃないよ」


 まあ、エイミルではあらかじめ、手を回していたんだろう。


「何て言って入るんだ? この前は商売だったけど、今回は荷がないだろ」


 おかげで広々だけど。


「正直に言うよ。昔の知り合いに頼まれてウォルターに行きたいあんたらを王都まで送りに来た」

「なるほどねー。実際、俺達はウォルターに行くわけだしな」


 間違っていない。


「そういうこと。口裏合わせはシンプルが一番さ」


 年の功かね?


 馬車はそのまま進んでいき、王都の門に近づいていく。

 そして、門まで行き、馬車をとめると、一人の兵士が俺達のもとにやってきたので俺とリーシャとマリアの3人は馬車から降りた。


「商人か?」

「いや、冒険者だよ。ちょっとこの子達を送りに来たんだ」

「冒険者…………あー、ラウラ殿か」


 さすがは長生きBランク。

 有名みたいだ。


「どうも」

「この者達は?」


 兵士が俺達を見てくる。


「ウォルターに行くんだと。昔の知り合いに頼まれたからここまで送った」

「聴取しても?」

「こいつらも冒険者だよ…………ただまあ、機嫌を損ねないように気を付けな」


 婆さんがそう言うと、兵士は俺達をチラッと見て、わずかだが、嫌そうな顔をした。

 多分、貴族って気付いたのだろう。


「冒険者カードを見せてくれ」


 兵士がそう言ってきたのでカバンから3枚の冒険者カードを取り出し、素直に渡す。


「確かに……ウォルターに行くというが、何か用でもあるのか?」

「それをお前に伝える必要があるのか?」

「一応、確認しておきたい」


 わかりやすい奴。

 こんな状況だから警戒しているんだ。


「別にウォルターの伯父を訪ねるだけだ。ついでに水の都で式を挙げる」

「式……ああ、なるほど」


 兵士はリーシャとマリアを見て、納得したようだ。

 水の都にある神殿で式を挙げるのが女の憧れなのはこの国でも同様なのだろう。


「飛空艇は使わないのか?」

「嫌いなんだ。だからわざわざ海路と陸路だ」

「わかった。ちなみにだが、王都にはどれくらい留まる予定なんだ?」


 普通、冒険者にこういうことを聞くことはないだろう。

 俺達を工作員か何かと疑っているのがわかる。


「長居はせんが、カジノとやらが気になるからそれ次第だな。大勝ちするか飽きたら出る」

「好きにすればいいけど、私は止めたからね」


 負けた老婆が何かを言っている。


「俺は負けんよ」

「私もそう思っていたさ」


 こいつ、どれだけ負けたんだろう?


「まあまあ。遊ぶ程度で楽しんでくれよ。通ってくれ」


 兵士は俺と婆さんを窘めると、通行の許可をくれた。


「あいよ」


 俺達が馬車に乗り込むと、婆さんが馬車を動かし、門をくぐった。


「これからどうするんだ?」


 無事に王都に入ったので聞いてみる。


「まずは宿屋に行くよ。馬車を預かってもらわないといけない」

「お前も泊まるんか?」


 手紙を渡したら帰らないのかね?


「他に仕事もあるしね」

「仕事?」

「新人教育とか色々だよ。私は第一線から退いているからそういう仕事がメインなんだ」


 マジで先生だな。


「ふーん、俺達もギルドに行ってみるかねー」

「仕事でもするのかい?」


 しない。


「いや、情報収集」

「そうかい。じゃあ、宿屋に寄ったらギルドに行こうか。連れていってあげるよ」

「頼むわー。俺達、この町のことを知らんし」


 当たり前だが、ギルドの場所も知らない。


「間違っても問題は起こさないでくれよ」

「俺達からは起こさんぞ」

「ハァ……お貴族様はめんどくさいねー」


 絡んでくるバカがめんどくさいんだよ。


明日、本作の第1巻がカドカワBOOKS様より発売となります。

書店に立ち寄った際はお手に取ってもらえると幸いです。

また、電子書籍を購入予定の方は0時から読めます(↓にリンク)


改稿、加筆も頑張りましたし、web版を読んだ方にも楽しめる内容となっていると思いますので是非ともよろしくお願いします。


明日は昼の12時に更新します。

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[一言] ラウラがいることで会話のバランスすごい良くなってる気がする。
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