表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

134/278

第134話 顔は好み


 ギルドを出た俺達はアヒムに言われた通りに進み、宿屋に入る。


「いらっしゃいませ」


 俺達が宿屋に入ると、何故かメイド服を着た若い女が出迎えてくれた。


「何故にメイド? 貴族でも泊まっているのか?」


 それにしても俺達に声をかけるのはおかしい。


「あ、そういうコンセプトなんです。貴族気分を味わえる的な?」


 くだらないと思うのは俺がいつもメイドに囲まれていた生活を送ってきたからだろうか?


「人気なのか?」

「はい。好評です」


 マジか……

 メイドなんてガミガミ言ううるさいのしか想像ができない。

 何が良いんだ……

 俺は町娘っぽい普通の女の方が良いのに。


「そうか。まあ、好評ならいい。しかし、スカートが短すぎんか?」


 膝上までしかない。

 正直、はしたない。


「好評なんです」


 なんとなく客層がわかった気がする。


「理解した。メイド風にして、男に媚びるコンセプトだな」

「身もふたもないですけど、そうでーす。まあ、やってるのは私だけですけどね。あ、でも、いくらそういうコンセプトだからってそういうサービスはないですよ」

「サービス?」

「やめてください、ご主人様ー……的な」


 こいつ、メイドや貴族を何だと思っているんだ……

 メイドは売春婦じゃないし、貴族もメイドに手を出す奴なんて…………いや、いるかもしれんな。

 男女のことだし、普通にあるだろう。

 俺だって、子供心にメリッサのことが好きだったし。


「あっそ。そういうサービスはいらん。一泊泊まりたい。ギルドのアヒムの紹介だ」

「アヒムさん? お客さん、お偉いさん?」

「Aランク冒険者とは思わんのか?」

「どちらかというと、お貴族様な気がします」


 わかるのかね?

 さすがは似非とはいえ、メイドだ。


「まあ、そんなところだ」

「わかりました。では、料金は結構ですので、部屋に案内します。どうぞ、こちらへー」


 俺はフランクなメイドだなーと思いながらも女についていく。


「お前、名前は?」

「カトリナです、ご主人様」

「そうか。夫婦の場合は旦那様と呼んだ方がウケると思うぞ」

「そうですか?」

「そういうもんだ」


 多分?

 殿下やロイド様としか呼ばれたことないけど、そっちの方がしっくりくる。


「へー……あ、こちらになります」


 カトリナがそう言って、扉を開けたので部屋に入る。

 部屋はそこまで広くはないが、高級感はあった。


「ふーん、まあまあだな」

「ありがとうございます。以前に泊まっていただいた貴族様にアドバイスをいただいたんです」


 まあ、アドバイスを送ろうと思うのも頷ける。

 カトリナは微妙に指摘したくなるメイドだ。

 明るいし、悪気はなさそうなので文句を言うほどでもない微妙な塩梅。


 俺達は部屋を眺めながらも備え付けのテーブルに座る。


「あ、お茶を淹れますねー」


 カトリナがそう言いながらティーセットが置いてある棚に向かった。


「いらんぞ」

「いらないんですか?」


 カトリナがこちらを振り向く。


「お茶は妻が淹れるものだ」

「え? そうなんですか? 以前も淹れてましたけど」

「国によって風習は異なるだけだから気にするな。俺達は遠くから来たんだよ」

「あ、そうなんですか。よかったー……粗相をしたのかと思いました」


 粗相ねー。


「あんまり気にしないでいいぞ。多分、貴族は気にしないというか、それを求めていない。それに粗相というのならしゃべり方、歩き方、表情の作り方、どれも不合格だからな」

「え? 本当です?」

「貴族に仕えるっていうのはそういうもんだ。だからといって直す必要はないぞ。お前はメイド風で良いんだ」


 こいつの一番の武器は愛嬌だろう。

 それを捨てる必要はない。


「そうなんですかね? このままでいけます?」

「いける、いける。貴族には『こいつ、わかってねーなー』って思わせておけばいいんだ」


 所詮は庶民がやることだ、って思うだろう。


「なるほどー」

「そうそう。そういうわけでお茶はいらんからワインを持ってこい。一番高いやつな。あ、もちろん、アヒムのツケで頼む」

「ツケですか?」

「宿代とまとめて請求しろ。何か言われたら世間知らずのエーデルタルトの傲慢貴族だったって言え」

「ハァ? わかりました。では、ワインを持ってきますねー」


 カトリナが部屋を出ていった。


「従業員の質を保証するってこういうことね。まあ、男が好きそうな子だわ」

「汚らわしい売女の匂いがしますね」


 そういうとこだぞ!


「ただの宿屋の娘に何を言っているんだ?」

「私、ああいう媚びる女が大嫌い」

「…………そうですねー」


 媚びまくっている女が目を逸らしながら同意する。


「店員が客に媚びるのは当然だろうに」

「関係ないわ。敵ね、敵」


 敵ばっかりじゃん。


「刃傷沙汰は勘弁しろよ」

「しないわよ。あー、ムカつく。ねえ、マリア、あなたもそう思うでしょ?」

「え? あ、はい……」

「何よ?」


 リーシャがマリアを睨む。


「一昨日、媚び媚びだったなーっと……」

「一昨日? 何のことよ?」

「え?」


 マリアが今度は俺を見る。


「一昨日、何かあったか?」


 普通に馬車に乗って、何もなかったはずだが?


「あっ……なんでもないです。気のせいでした」


 そうかね?

 もしかしたら夢か幻でも見たのかもしれんな。


お読み頂き、ありがとうございます。

この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。


よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新作】
宮廷錬金術師の自由気ままな異世界旅 ~うっかりエリクサーを作ったら捕まりかけたので他国に逃げます~

【新刊】
~書籍~
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(1)
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(2)

週末のんびり異世界冒険譚 1 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~
週末のんびり異世界冒険譚 2 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

【販売中】
~書籍~
廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~(1)
廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~(2)

~漫画~
廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 1 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~

【現在連載中の作品】
その子供、伝説の剣聖につき (カクヨムネクスト)

週末のんびり異世界冒険譚 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~

バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~

最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~

【漫画連載中】
地獄の沙汰も黄金次第 ~会社をクビになったけど、錬金術とかいうチートスキルを手に入れたので人生一発逆転を目指します~
がうがうモンスター+
ニコニコ漫画

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~
カドコミ
ニコニコ漫画

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~
カドコミ
ニコニコ漫画

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~
ガンガンONLINE

【カクヨムサポーターリンク集】
https://x.gd/Sfaua
― 新着の感想 ―
[気になる点] スカート丈が「膝上まである」は日本語的におかしいので、「膝上までしかない」の方が良いかと
[良い点] この器の小ささとそれを隠さないとこが好きwww
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ