表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

127/278

第127話 やっぱり冒険者はお仕事だよね


 3人で寝た俺達は朝になると、ショボい朝食を食べ、ギルドに向かう。

 ギルドに着くと、俺達以外の冒険者はおらず、閑散としていた。


 俺達は誰もいないギルドを見渡しながらバルバラのもとに向かう。


「やあ、おはよう」


 バルバラが軽快に挨拶をしてきた。


「よう。他の冒険者はいないのか?」


 この前も数人しかいなかったし、この町は冒険者が少ないのかね?


「ほとんどが海に行ってるよ。中には漁船に乗っている奴もいる。サハギンが多くてねー」


 あー……港町だもんな。


「ギリスでも多いって聞いたな」

「やっぱりかい。今年は魚が豊作だからね。嬉しい悲鳴ってやつだよ。そういうわけで他の冒険者は朝早くから海だね」

「ふーん、まあ、他の冒険者なんかどうでもいいけどな」


 むしろ、会いたくないレベル。


「……じゃあ、聞くなよ」

「世間話だ。さて、バルバラ、良い仕事を紹介してくれ」

「んー? 仕事はしないんじゃなかったのかい?」


 バルバラが嫌なことを聞いてくる。


「事情が変わった」

「ふーん、お金が尽きたかい?」

「そんなことはない」


 まだ金貨30枚もある。


「冒険者風の男女3人が豪遊しているって噂になってたけど、昨日出ていったんだって?」

「顧客情報を漏らすんじゃねーよ」


 なんだ、あの宿?

 これだから田舎は困る。


「まあ、ギルドは情報収集力が高いからねー。というか、あそこはウチが提携しているところだよ」


 あー……アムールのクジラ亭みたいなところだったのか。


「お前に紹介してもらえば良かったわ。今からでも遅くないぞ」


 ギルドの金で泊めてくれ。


「嫌だよ。伝える気はなかったけど、ルシルからの伝言その2。私のツケにして贅沢すんな! だってさ」


 そんなこともあったね……


「もうしないから紹介しろ」


 多分な。


「無理だよ。Bランク冒険者が泊まっている。数日休んで、他国に行くんだとさ」

「高ランクなら自分で出せよ」

「空いてなかったんだから仕方がないだろ」


 あ、俺らが泊まっていたからだ。


「今は空いてるだろ」

「途中から金を出せなんて言えるわけないだろ。DランクはDランクらしく、普通の宿屋に泊まりな。というか、この町を出るんじゃなかったのかい?」

「それな。ちょっと軍資金を補充したいから仕事を紹介してくれ。良い感じのやつ。リリスのブレッドもアムールのルシルも紹介してくれた」


 良い奴らだったわ。


「あー、なんかルシルにも気にかけてあげてって言われたね。世間知らずのエーデルタルトの傲慢貴族そのものだからって」


 そういえば、ルシルは良い奴ではなかったな。


「もうそれでいいから良い感じの仕事をくれ。討伐が得意だぞ。あと、魔法系」

「はいはい。とりあえず、冒険者カードを出してよ」


 俺達はそう言われたので冒険者カードを提出する。


「ふむふむ。確かに3人共、Dランクだね」


 バルバラが眼鏡をかけ、俺達の冒険者カードを見る。


「別にランクにこだわらなくてもいいぞ。俺の魔法の前には敵などおらん」

「あー、思い出した。ルシルからの伝言その3。なんでギルド前にも火種を置いた!? だそうだよ」


 確かに魔法陣を置いたな……


「ギルドへの疑いがかからないようにしただけだよ。どっちみち、建物が燃えない位置に置いたから大丈夫。そう伝えておいてくれ」

「了解。仕事だけど、サハギンの討伐は?」


 えー、サハギンー?


「もう散々やった。俺のカバンの中には魔石がいっぱいあるぞ」

「へー、売らないのかい?」

「売るなら内陸部で売れってアドバイスを受けた」

「確かにそうだね。ジャスで売りな。あそこは海がないからここよりかは高く売れるよ」


 おー! 叔母上は正しかったようだ。


「そうする。そういうわけでサハギンはパス。地元の冒険者に譲るよ」

「じゃあ、オークでも狩ってくれない? この町は海軍は強いんだけど、陸の兵士がからしきでねー」


 オークか……

 俺は見たことがないが、リーシャがリリスで狩りまくったはずだ。

 危険はない。


「じゃあ、それで。いくら?」

「討伐料が1匹で金貨1枚。魔石は銀貨5枚で買い取るよ」


 悪くはないか……


「リリスでもそんなんだったか?」


 振り返ると、リーシャとマリアに聞く。


「そうね。そんなものだった気がするわ」

「ですね」


 なるほどね。


「じゃあ、それでいい。どこに行けばいいんだ?」

「北門から出た先にある森だよ」

「北? パニャの大森林か? あそこは嫌だぞ」


 ロクな思い出がない。


「パニャの大森林はもっと北だよ。そこの森はたいした広さじゃないし、森に入らなくても森から出てくるオークを狩ってもらえればいい」

「オークが森から出てくるのか?」


 そう都合良くいくだろうか?


「そういう釣り方法があるんだよ。ほい、これ」


 バルバラはそう言って、汚い袋を渡してくる。


「なんだこれ?」

「絶対にここで開けるんじゃないよ。中には特殊な乾燥エサが入っている。森の前に行ったらそのエサに水をかけな。そうすると匂いを発するからそれに釣られてオークが森から出てくる。それを狩るんだ」


 へー、すごいな。


「良い方法を考えたなー」


 森に入らずにオークを狩れるわけだ。

 奇襲を受ける可能性がぐっと減って安心。


「まあね。でも、それは本当に臭いから気を付けなよ」


 嫌だな、それ。

 とはいえ、森に入るよりかはいいか。


「わかった。じゃあ、行ってくるわ」

「頼んだよ。上手くいったら王都のギルドへの紹介状を書いてあげるから」


 紹介状ねー……


「世間知らずのエーデルタルトの傲慢貴族そのものが行くから気を付けて、か?」

「他に何て書くんだい?」


 本当にそう書く気だったんかい。

 紹介というより、忠告だろ。


「Aランクにふさわしいから最高の宿屋にタダで泊めさせろって書こうぜ」

「……世間知らずのエーデルタルトの傲慢貴族そのものじゃないか」

「じゃあ、安くて良い宿屋を紹介してあげて、でいいわ」

「……わかったよ」


 頼むぞ。


いつもお読みいただきありがとうございます。

本作は皆様の応援のおかげで書籍化することになり、3月8日にカドカワBOOK様より第1巻が販売いたします。

改稿、加筆も頑張りましたし、web版を読んだ方にも楽しめる内容となっていると思いますので手に取っていただけると幸いです。


イラストレーターはゆのひと様が務めてくださり、素晴らしい絵を描いてくださいましたので是非とも書影だけでも覗いてみてください。(↓にリンク)


これからもよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新作】
宮廷錬金術師の自由気ままな異世界旅 ~うっかりエリクサーを作ったら捕まりかけたので他国に逃げます~

【新刊】
~書籍~
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(1)
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(2)

週末のんびり異世界冒険譚 1 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~
週末のんびり異世界冒険譚 2 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

【販売中】
~書籍~
廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~(1)
廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~(2)

~漫画~
廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 1 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~

【現在連載中の作品】
その子供、伝説の剣聖につき (カクヨムネクスト)

週末のんびり異世界冒険譚 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~

バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~

最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~

【漫画連載中】
地獄の沙汰も黄金次第 ~会社をクビになったけど、錬金術とかいうチートスキルを手に入れたので人生一発逆転を目指します~
がうがうモンスター+
ニコニコ漫画

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~
カドコミ
ニコニコ漫画

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~
カドコミ
ニコニコ漫画

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~
ガンガンONLINE

【カクヨムサポーターリンク集】
https://x.gd/Sfaua
― 新着の感想 ―
[良い点] すさまじいまでの書籍化っぷり。おめでとうございます。 [一言] まあそれぞれの作品の内容を見る限り、 当然のことであるなあと感じております。
[良い点] 書籍化おめでとうございます! [一言] 面白いし書籍化しても驚きのない作品ですよね。 山田も面白いし無理せず続けて欲しいです。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ