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第121話 町へ帰還


 俺達はブランドンの後片付けを終えると、マストが折れた敵の船の回収をアドルフに任せ、町に帰港した。

 そして、叔母上を起こし、叔母上の屋敷まで戻る。

 屋敷に戻ると、クリフとヘレナが俺達を出迎えてくれ、一緒にお茶を飲んだり、食事をしながら過ごし、この日は早めに就寝した。


 翌日、この日はトラヴィス殿の葬儀が行われた。

 親族はもちろん、町の人や兵士、アドルフらも参加し、厳粛に執り行われた。

 叔母上もクリフもヘレナもけっして泣かなかったが、悲しみに溢れているのは感じ取れた。


 それから数日は体を休め、父親を失い、悲しそうな表情をするクリフとヘレナの相手をしていた。

 また、ギルドに行き、移籍の手続きと叔母上の仕事の報告をした。

 これにより、ギルド職員に微妙に嫌な顔をされつつも俺達はDランクになったのだ。


 それからさらに数日が経ったある日、俺達が部屋でお茶を飲んでいると、叔母上がノックもせずに入ってきた。


「叔母上がノックしないのも慣れましたんで文句は言いませんが、何の用です?」

「十分すぎるほどに言っているわ。それ、義姉さんのマネか?」


 俺の母親はよくこういう言い回しをしていた。


「別にしてませんよ。それでどうしました?」

「エイミルに行けるようになったぞ」


 叔母上がそう言いながら椅子に座る。


「話が通ったんです?」

「ああ、すんなりな。別にエイミルとウチは敵対していないし、遠いから特に金銭の要求もなかった」


 要求されても金は払わんぞ。


「じゃあ、送ってください」

「ん。じゃあ、明日な」


 早っ!


「急ですね」

「私も後始末で忙しいんだ、それにこういうのは早い方が良いだろ」


 まあ、そうだけども。

 ホント、せっかちな人だな。


「じゃあ、明日でいいです」

「うん、では、精算だ。まず、お前に今回の仕事の依頼料である金貨100枚を払う」


 叔母上はそう言って、カバンから袋を取り出し、テーブルに置いた。


「どうも。あ、Dランクになれましたよ」

「おめでとう。なお、それには金貨が200枚入っている」

「んー? ボーナスです?」


 気前のいい叔母だこと。


「いや、王家からの分になる。今回の調査の仕事を協力してもらった謝礼として金貨100枚をアドルフに託されたからそれを込みで金貨200枚だ」


 王家も出してくれるらしい。

 やったぜ。


「お礼を言っておいてください」

「言っておく。次に王がお前の持っている手紙を買い取りたいと言っていた…………言っていたのだが、話が変わった」


 あれ?


「何がありました?」


 開き直って公表しろか?

 だったら演劇関係者に売るが……


「手紙の件が王妃にバレ、それは自分がもらったものだから自分が買い取ると言い、王は何も言い返せなかった」


 まあ、そりゃ、手紙は受け取った王妃の物だろうからな。

 しゃーない。

 バレたのが悪い。


「王妃はいくらで買い取るって?」

「王妃はそんなに金を持っていないからお前が無償提供したということになる」

「えー……」


 普通に嫌だわ。


「まあ、聞け。そういうわけで無償提供のお礼に髪飾りを2つもらったからやる」


 叔母上は2つの髪飾りを取り出すと、立ち上がり、座っているリーシャとマリアの頭に乗せていく。

 髪飾りはシンプルだが、精巧に作られており、安物ではないことはわかる。


「これ、いくら?」

「知らんが、王家の友好の証だから相当の値段がつくと思う」


 うん、友好の証は売れないね。

 まあ、2人に似合っているからいいか。

 さすがに髪飾りを冒険中につけることは無理だろうけど。


「俺の分は?」

「その髪飾りはお前の物だ。王妃がお前に渡し、お前がそいつらに贈ったんだ」


 じゃあ、せめて、俺につけさせろよ。

 どう考えても俺の役目だろ。


「まあ、いいですけど……」

「以上だ。じゃあ、明日の朝出発な」

「叔母上、缶詰をくださいよ」


 今後のことを考えて、携帯食料をもらっておこう。


「あー、そうだったな。まあ、用意しておこう」

「お願いします。それで明日の朝に出て、いつ着くんです?」

「明後日の昼か夕方くらいかな?」


 いくらなんでも早すぎない?

 まさか…………


「アシュリー号で行くんです?」

「もちろんだ。軍船や海賊船はマズいだろ」


 遭難しませんように、遭難しませんように、遭難しませんように……


「安全運転でお願いしますよ。あとちゃんとした航海士をつけてください。あ、それと念のために十分な食糧を用意すべきですね」

「漂流せんわ。そんなに陸から離れんし、普通に行くよ」


 大丈夫か?


「夜に錨を下ろすのを忘れないでくださいよ?」

「どこのバカがそんなことをするんだよ」


 ガーン。

 アホにバカって言われた。


「いや、まあ、そうですね。とにかく、ちゃんとしてください」

「え? お前、錨を下ろさずに寝て、漂流したん?」


 叔母上が呆れたように俺を指差してきた。


「もう話は終わったでしょ。俺達はちょっと町で店を見に行きますんで」


 俺はお茶を飲み干すと、立ち上がる。


「まあ、誰にでもミスはあるよ」


 叔母上がうんうんと頷く。


 ミスばっかりの奴に言われたくないわー。


お読み頂き、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 王妃が手紙を引き取りたいと申し出てるということは、 未だ愛情があると考えていいのかな 好きでもない相手からの恋文なんて保管したいと思わないだろうからな
[良い点] 夜の錨忘れずに.... φ(..)メモメモ [一言] 本年は毎日楽しく拝読させて頂き 有難うございましたm(_ _)m 良いお年を(^_^)/~
[一言] 楽しい作品をありがとうございました!来年も楽しみにしてます。良いお年をお迎え下さい!
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