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第115話 答え合わせ


 俺達は服を着替えると、叔母上が出した缶詰で朝食を食べ始めた。


「食糧はどのくらい残っているんです?」


 食糧はないって言ってたが、この缶詰のようにどうせ隠し持っているんだろう。


「10日分くらいだな」

「用意がいいですね」

「そりゃな」


 叔母上もこの状況を予想していたということだ。


「ブランドン達は敵ってことでいいですか?」


 俺はわかりきっていることを確認する。


「まあ、この場にいないってことはそうだろうな。お前、いつからブランドンを疑っていた?」

「最初から。いきなり魔力感知してくる奴は信用しません」


 失礼にもほどがある。

 もし、魔術師かどうかを確認したいのなら聞けばいい。

 だが、あいつはこっそりと探ろうとしていた。

 これは俺達を信用していない証である。

 初対面とはいえ、領主代理の親族を信用しないのは領主代理である叔母上を信用していないのと同義だ。


「ふーん…………兵士達がブランドンの手の者だということには気付いていたか?」

「ええ、一昨日の夜に気付きました」

「ほうほう……詳しく聞きたいな。まずブランドンだが、いきなり魔力感知してきただけで敵認定はひどくないか?」


 まあ、疑り深い人間性なのかもしれないしな。


「あいつ、隠れ家のことを詳しすぎでしょ。1年も前のことなのに罠を正確に把握しすぎ。小石を放り投げて、ぴったり当たったじゃないですか」


 どんな記憶力してんだよ。


「私は途中で笑いかけたわ。私とロイドが別の道に行こうとしたらそっちには罠も何もないって断言するんですもの」


 ホント、ホント。

 いくらなんでも詳しすぎ。

 見落としがあるかもしれないし、1年も前だから忘れているかもしれない。

 それにあの鉄製の罠のように故障した罠があるかもしれないのに。


「ふふふ。あれは笑いそうになったな…………極めつけは宝物庫だもんな」


 叔母上が笑う。


「そうですね。毒ガスの罠で引き返したブランドンが宝物庫の存在も場所も知っているわけがないでしょうに」


 あの時、ブランドンは宝物庫という言葉を使った。

 さすがにあれはバカかと思った。

 なんで奥に宝物庫があることを知ってんだよ。


「そうか、そうか。確かにブランドンは敵だな。兵士もグルだと思ったのは?」

「一昨日の夜なんですが、俺とリーシャは甲板で話をしていたんですよ」

「あー、あの逢引きな」


 逢引きって言うな。


「違いますよ」

「そうか? マリアがやたらうるさかったぞ。あの淫乱がーって……」


 叔母上がそう言うと、リーシャがマリアを睨み、マリアがサッと視線を逸らす。


「いや、ちょっとした話ですよ」

「ふーん、いやまあ、それはいいか。それでその時に何かあったのか?」

「変なのに襲われました」

「え!?」


 マリアが驚いた。


「ほう? 撃退したのか?」


 叔母上が目を細め、聞いてくる。


「逃げられました。その際に襲撃者は海に落ちたんですよ…………大きな水音を立てて」

「そうか。それなのに見張りの兵が誰も来なかったわけだな?」


 普通は見張りが確認に来る。


「はい。その時に全員が敵だと確信しました。まあ、最初から誰も信用していなかったですけどね」


 テールほどではないが、ここも他国だ。

 いくら叔母上がいるとはいえ、警戒を怠ることはない。


「ふむふむ…………お前が無駄に魔法を自慢していたのはブランドンへの牽制か?」

「もちろんです」


 あいつ、強すぎだもん。

 少しでも大きく見せないといけない。


「リーシャがこの島に着いた時にサハギンを一掃したのもか?」


 叔母上がリーシャを見る。


「当然です。何故、わたくしが他国の兵を守らなければならないのです? あれはわたくしに近づく者は皆こうなるという警告ですわ」


 やっぱり蛮族だ。


「お前達、大人になったなー……立派な貴族になっちゃって、まあ……」


 叔母上が感心したような、寂しそうな複雑な顔をする。


「王太子ですから…………元」

「次期王妃ですから…………元」


 悲しいね。


「そうか…………魔法バカと色バカかと思ったらちゃんとしてたわけだな」


 魔法バカではない。


「叔母上、そろそろ話してください。これは一体なんですか?」

「そうだな…………まず、私の領地の成り立ちから教えてやろう」

「成り立ち?」

「ああ、そうだ。実はな…………ウチの領地と国を裏切った隣の領地は親戚同士なんだよ」


 んー?

 ラスコと通じて、お家取り潰しになったところか?


「親戚だったんですか?」

「えーっと、隣の領地の何世代前かの兄弟が争って、負けた弟? 兄? どっちかが今のウチの領地を開拓したんだよ。そんでもってウチの名産でもあるオリーブで儲けて伯爵になったわけだ」


 叔母上もうろ覚えだな。


「へー……仲が悪くなりそうですね」

「実際、その兄弟は仲が悪かったようだが、次の世代で仲直りだ。そこからは協力しながらお互いの領地を守っていたわけだな」

「でも、お隣さんは20年前に国を裏切ったわけですよね? スカルのやつ」

「そうなる。スカルを使って、ギリスの情報を収集してたんだ。盗みはそのついで」


 ついでで宝剣と手紙を盗まれたのか……

 哀れなギリス王。


「なるほど。叔母上の領地は裏切っていないんですか?」

「正直、微妙…………トラヴィス様は関わっていないが、トラヴィス様の先代は怪しいと思っている」

「トラヴィス殿が関わっていないと思う根拠はおありで?」


 盲目になってない?


「お前、トラヴィス様をどんな人物だと思っている?」


 んー?


「家族想いで真面目な人?」


 確か子供に誇れる親になりたいとかなんとか言ってたんでしょ?


「トラヴィス様はドクズだったぞ」


 えー……

 あ、でも、叔母上を酒で潰してベッドに連れ込んだ人だったわ。


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