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第113話 仕事終わり


 俺達は隠れ家の奥に来ると、宝剣と共にお宝と呼んでいいかわからない手紙を回収した。


「船長、そろそろ戻りましょう。宝剣は回収したわけですし、あとは兵に任せてください」


 俺達があらかたの捜索を終えると、ブランドンが叔母上に進言する。


「それもそうだな……船にはあれらの遺体を収納できるスペースはあるか?」

「大丈夫だと思います」

「ならば、サハギン討伐をしている兵を少しこちらに回して、遺体を船に乗せろ」

「はっ! では、帰還しましょう」


 ブランドンが敬礼をすると、踵を返す。


「あ、待て、ブランドン」


 叔母上がブランドンを呼び止めた。


「何でしょう?」


 叔母上に呼び止められたブランドンが振り向く。


「この王家の宝剣を船の倉庫に入れとけ。私の魔法のカバンには入らん」

「まだ容量はあるのでは?」

「私の旦那が入っているんだ。他の物は入れたくない」


 どうやら叔母上はすでにトラヴィス殿の遺体を回収済みらしい。


「わかりました。では、倉庫に入れておきましょう」


 叔母上が宝剣を渡すと、ブランドンはそれを受け取り、自分の魔法のカバンに入れた。

 そして、俺達は船に戻ることにし、来た道を引き返していく。

 帰りは行きと違って、俺が凍らせた罠が見えているので特に止まることもなく、洞窟を抜けることができた。

 そして、海岸沿いを歩いていくと、船が見えてくる。


「船長、私が兵を分けますので船長はお休みください」


 ブランドンが足を止め、叔母上に言う。


「叔母上、俺もそう思います。少し休みましょう」


 叔母上はどう見ても顔色が悪いのだ。


「そうだな……少し休むか。ブランドン、あとは任せた。ロイド、肩を貸せ」


 俺は叔母上に近づくと、叔母上に肩を貸す。


「お前、本当に大きくなったなー。こんなんだったのに…………」


 叔母上が空いている右手を自分の腰くらいまで上げる。


「そら、そうですよ。俺から見たら叔母上が小さく見えます」


 叔母上の方が俺やイアンよりもずっと背が高かった。


「そうだな…………あの子達もそうやって成長するんだろうな」


 当たり前だろ。


「ババアみたいなことを言わないでくださいよ。あんた、まだ辛うじて20代でしょうが」

「余裕で20代だ! 肌も水を弾くわ!」

「わかりましたから耳元で怒鳴らないでください。ほら、行きますよ」


 俺は叔母上を連れて船に乗り込むと、船室まで行き、叔母上をベッドまで運んだ。


「叔母上、少し寝てください。どうせ、昨日、寝てないんでしょ」


 ブランドンにはよく眠れたと言ってたが、嘘に決まっている。


「そうだな。寝ようと思っていたんだが、眠れなかった」

「それは仕方がないです。トラヴィス殿の遺体を回収する前夜なんか寝られませんよ」

「今も眠れそうにない」


 そうだろうね。

 でも、さすがに休まないと体に悪い。


「大丈夫ですよ。夕食時には起こします」

「おい、ちょっと待て」

「おやすみなさい」


 俺は叔母上にスリープの魔法をかけ、強制的に眠らせる。


「寝た?」


 リーシャが聞いてくる。


「寝たな。この程度の魔法をレジストすらできない状態なんだろ」


 叔母上くらいの魔術師ならスリープを防ぐことは容易にできる。


「まあ、寝てないのは昨日だけじゃないでしょうしね」

「そうだと思うわ。あー、疲れた……」


 俺は叔母上のベッドから離れると、テーブルから椅子を引き、座った。


「紅茶を淹れまーす」


 マリアがお茶の準備を始める。


「リーシャ、宝石ってどんなもんだ?」

「これ」


 リーシャはマリアが椅子に置いたカバンから青色の宝石を取り出し、テーブルの上に置いた。


「宝石のことはわからんが、高いのか?」

「多分、高く売れると思うけど、このレベルは大きい町のちゃんとした宝石店で売った方が良いと思う」


 それもそうだな。

 宝石は偽物も流通しているし、買い叩かれたら嫌だ。


「今のところは金に困っているわけでもないし、次に大きい町に行ったら売るか」

「そうね。アシュリー様のところより、都会の町で売りましょう」


 いくらになるかなー?


「殿下、どうぞ」


 マリアが俺の前にお茶を置く。


「ああ、悪いな」

「いえいえー」


 俺はマリアが淹れてくれたお茶を一口飲むと、カバンから手紙の束を取り出す。


「それが例のギリス王が王妃様に宛てた手紙?」

「そうそう。どうやら王妃は別のところに嫁ぐ話があったらしくて、それを横から奪おうとする王の手紙」


 イザベルが王妃になっているということは実際に奪ったっぽい。


「それでそんなにあるのね…………」


 リーシャが手紙の束を見て、呆れた。


「スカルよりこっちの方を演劇にした方が庶民には受けると思うがなー」

「王様が絶対に止めるでしょ」


 だろうな。

 俺でも止める。


 俺は一枚の手紙を手に取り、読んでみる。


「何て書いてあります?」


 マリアが興味津々な顔で聞いてくる。


「君が欲しい。君さえいれば何もいらない。私はもう君しか考えられない」


 すげー黒歴史だ。


「すごいですね…………」

「絶対にロイドが言わないセリフね」


 俺が言っても嘘くさいだけだ。


「俺がこれを手紙に書いて、お前達に渡したらクレームを言うだろ」

「そりゃね。君しか考えられないっていうのを2人に送るってありえないでしょ」

「さいてーでーす」


 ギリス王の手紙を参考にしようと思ったが、これはまったく参考にならんな。

 やはり自分の言葉で書くとしよう。


お読み頂き、ありがとうございます。

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