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第110話 毒ガスの罠


 俺達は分岐点まで戻ってくると、そのまままっすぐ進み、奥へと向かっている。

 それまでもいくつかの罠があったが、すべてブランドンが見つけ、俺が凍らせていった。

 モンスターもいないし、罠も防げていたため、順調にここまで来ていた。


 俺達が一本道を進んでいくと、突き当たりに鉄製の扉が見えてきた。


「船長、この先です」


 ブランドンが立ち止まると、鉄製の扉を指差す。


「そうか…………あそこか……」


 叔母上は何とも言えない表情をしている。


 こりゃダメだ…………


「叔母上、お下がりを」

「大丈夫だ」

「大丈夫じゃないから言ってる。リーシャ、マリア、叔母上を抑えておけ」


 叔母上はもう無理だ。

 扉を開けて、もし、旦那を見つけたら罠を無視して走っていく。


「アシュリー様、こちらに……」

「ロイドさん達に任せましょう」

「そうか…………」


 リーシャとマリアは叔母上を連れて、下がっていく。

 俺はそれを見ると、光魔法を使い、頭上に光球を出した。


「ブランドン、この先は俺達でまずは罠をどうにかしよう。悪いが、エーデルタルトの女はこうなると、もう無理だ」

「そのようですね…………あんなに動揺している船長を初めて見ました」

「絶対に言うなよ。独りよがりの愛を持つイカレ女共だ」


 テールとかではそういう風に言われている。


「黙っておきましょう。私としても何とも言えません」


 叔母上は一応、上官だからな。


「さて、ブランドン、この先は毒ガスか?」

「そうですね。入ってすぐには何も起きません。少し行った先で毒ガスが噴き出ます」

「即死か?」

「だと思います。ガスが噴き出たと思ったらトラヴィス様を始め、次々と兵が倒れていったのです。私はこの鉄製の扉が怪しいと思い、ここで扉を見張っていたので助かりました」


 まあ、明らかに不釣り合いのものだからな。

 木製ならその辺に生えている木で作ったのだろうと判断できるが、鉄製ならどこからか持ってきたことになる。

 わざわざそんな手間をかけたのだからこの扉に意味があると思っただろう。


「逃げられないようにするためだな。ガスが噴出したら閉まる仕組みか?」

「私もガスを見た瞬間はそう思いました。ですが、閉まりはしなかったですね。まあ、古い罠でしょうし、故障かもしれません」


 そうかもな。


「ガスはどこから出た?」

「天井からです」


 天井か……


「わかった。対処は楽だ」

「どうされるのです?」

「凍らせる」


 壁を凍らせれば、罠は発動できない。


「できますか?」

「できるから言っている。俺はエーデルタルト一の魔術師なのだ」

「エーデルタルト一の…………」


 すごかろう?


「よし、まず扉を開けよう」


 俺は扉に近づくと、取っ手に手をかけ、引いた。

 すると、少しずつ、扉が開いていく。


「開けにくいな、おい!」


 鉄製だから重いっていうのもあるが、鉄が錆びている気がする。


「私がやりましょう」


 俺はブランドンと交代し、下がった。

 ブランドンが取っ手に手をかけ、引くと、扉がどんどんと開いていく。

 そして、ついには扉が完全に開いた。


「海で鉄製はどうかと思いますね…………」


 激しく同感だ。


「ブランドン、ちょっとどけ」

「はい」


 俺は扉の近くで疲れた表情をしているブランドンを下がらせる。


「アイス!」


 俺は扉に向かって、氷魔法を放ち、扉を周囲ごと凍らせた。


「なるほど。こうすれば、たとえ罠が発動しても扉は閉じないわけですね」

「そうなる。故障しているかもしれんが、念のためな」

「確かに…………ロイド殿」


 ブランドンが開けた扉の先の通路を見て、何とも言えない表情をした。


 俺はブランドンの表情を見て、通路の先に光球を送る。

 すると、明るくなった通路にはいくつもの軍服を纏った白骨化した遺体が積み重なっていた。


「間違いないか?」

「はい」


 つまり、あの中にトラヴィス殿の遺体もあるわけだ。


「叔母上を下がらせて良かったわ」


 絶対に走っていくだろう。


「ロイド殿、私としてもトラヴィス様や同僚の遺体を弔いたいです。まずは罠を……」

「わかってる」


 俺は天井に杖を向けた。


「凍てつく氷よ!」


 俺は念のため、上級魔法を使い、天井を念入りに凍らせていく。

 すると、天井はガチガチの氷の塊となった。


「お見事です。ここまでの魔法を使えるとは……」


 ブランドンが素直に称賛してくる。


「まあな…………ブランドン、まずは遺体を整理しよう」

「そうですね」


 俺とブランドンは遺体が積み重なっているところまで行くと、慎重に遺体をどかし、並べていく。

 すると、とある遺体の下から勲章がついた立派な軍服を纏った骸骨が出てきた。


「ブランドン」


 俺はブランドンを呼ぶ。


「…………トラヴィス様で間違いないです。この勲章は先々代が王家から授かったパーカー家の宝です」


 それを付けているのはパーカー家の当主か……


 俺は他の遺体をどかし、トラヴィス殿の遺体をきれいに寝かせる。


「さて、ブランドン、悪いが、少し外してくれるか?」

「何故です?」


 ブランドンが訝し気な表情で聞いてくる。


「叔母上をトラヴィス殿に会わせねばならん。死んだ旦那との別れはお前が見ていいものではない」

「…………わかりました。私は船長に声をかけたら先程の分かれ道まで下がっていますので終わったら呼んでください」

「悪いな」

「いえ…………」


 ブランドンはそう言うと、通路を戻っていった。


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