第109話 洞窟探索
俺達がブランドンを先頭に海岸沿いを歩いていると、何度もサハギンに襲われた。
しかし、その度にブランドンが魔法や剣を駆使し、サハギンを倒していっている。
俺達がそんなこんなでそのまま進み続けると、昨日も見た大きな洞窟が見えてきた。
「あれが昨日、俺達が見つけた洞窟ですよ」
俺は洞窟を指差しながら叔母上に言う。
「…………ブランドン、あれか?」
「はい。間違いありません」
ブランドンがはっきりと答えて頷いた。
「そうか…………」
叔母上が足を止める。
「叔母上?」
叔母上が足を止めたため、俺達も足を止めて、叔母上を見る。
「…………いや、すまん。行こうか」
叔母上はそう言うと、先頭のブランドンを追い抜いて、速足で洞窟に向かっていった。
「どうしたんだ?」
俺はリーシャに聞く。
「亡くなった旦那さんがいるからだと思う…………追いましょう。それと、ロイド、絶対にアシュリー様から目を離さないで」
リーシャにそう言われてマリアを見ると、マリアが俺の目を見て、頷いた。
「…………わかった」
確かに目を離すべきではない。
叔母上は王に離縁をするように言われたら躊躇なく首を掻っ切った人である。
例え、子供がまだいようと旦那の遺体を見たら我を忘れる可能性だってあるのだ。
俺達は叔母上を追うことにし、急いで洞窟へと向かった。
叔母上に追いつき、洞窟に着くと、中を覗く。
洞窟の中は相変わらず暗く、奥がよく見えない。
「暗いな…………ブランドン、以前はどうした?」
叔母上がブランドンに聞く。
「ライトの魔法を使いました。私が使いましょうか?」
「いや、私がやる。お前は罠やモンスターの探知をしろ」
「わかりました」
「よし、ライト!」
叔母上が魔法を使うと、叔母上の頭上に丸い光の玉が現れ、周囲を照らし始めた。
「明るいわねー」
「ですねー。ちなみに、ロイドさんは使えるんです?」
マリアは聞いてくる。
「そりゃな。これまでは隠密系の出来事ばっかりだったから使ってこなかったが、俺だって、戦闘以外の魔法も使える」
というか、ライトを使えない魔術師っているのかってレベルで基礎中の基礎だ。
「へー、ロイドさん、すごーい!」
まあな!
「はいはい…………いいから行くぞ。ロイド、いつでも魔法を使えるようにしておけ」
「わかってます」
言われんでも常にそうしている。
魔術師は奇襲に弱いから警戒を怠ることはないのだ。
…………マリアは攫われちゃったけど。
俺達は引き続き、ブランドンを先頭に洞窟の中に入っていく。
中は暗いのだろうが、叔母上の魔法のおかげで外と変わらないくらいの明るさは保たれていた。
「止まってください」
歩いていると、先頭のブランドンが立ち止まり、手で俺達を制した。
「罠か?」
「はい。以前、ここに落とし穴がありました」
落とし穴?
下は岩盤なんだがな……
ブランドンはその場でしゃがむと、落ちていた石ころを拾う。
「あそこの辺りだったな…………」
ブランドンはそうつぶやくと、拾った小石を投げた。
すると、放物線を描いた石ころが地面に落ちると、突如、地面に穴が開く。
そして、数秒後には元に戻った。
「蓋か?」
「はい。重さを感じると蓋が開き、穴に落ちる仕組みです。すぐに元に戻るため、何度も使える罠ですね」
便利だけど、自分の屋敷には設置したくないな。
「面倒な……」
「この先にいくつかあります。気を付けてください」
ブランドンは忠告をすると、立ち上がり、歩いていく。
俺は罠の所まで行くと、罠に触ってみた。
すると、さっき見たように蓋が開き、穴ができる。
「うーん、このままにしておくと、帰りにマリアが落ちそうだな」
「すごくわかるわ」
リーシャも同意する。
「ひどい! すごくわかるけど!」
本人もそう思っているなら落ちるな。
「危ないから蓋をしておこう」
「どうするの?」
「凍らせる……アイス!」
俺は氷魔法を使い、穴を氷でふさいだ。
「おー! これならわかりやすいです! 私も一安心です!」
地面に氷ができているところが罠なわけだから氷が溶けない限り、目印にもなる。
「お前、氷魔法も使えるのか? 派手な火魔法ばっかりだっただろ」
叔母上が聞いてくる。
「火魔法は似たような魔法が多いんで飽きました。だから違う魔法を覚えることにしたんです。何でもできますよ」
「そりゃすごいな。よし、ロイド、ブランドンが見つけた罠を凍らせていけ」
「そうします」
マリアに何かあったら嫌だし。
俺達はその後も進んでいき、ブランドンが罠を見つけては俺が凍らせていく。
そして、ある程度進むと、道が左右に分かれていた。
「ブランドン、どっちだ?」
「右ですね。左は行き止まりです」
右かー……
「叔母上、左に行ってもいいです?」
「んー? なんでだ?」
「お宝があるかもしれないじゃないですか」
俺がそう言うと、叔母上が呆れた顔をする。
「行ってもいいですが、本当に何もないですよ? 我々も調査しましたし」
ブランドンがはっきりと断言する。
「まあいいじゃん。行ってみよう」
「そうね」
俺とリーシャは左に歩いていく。
「あ、待ってくださいよー」
マリアが俺達についてくる。
「いいのか?」
「大丈夫ですよ。左には罠はありませんでしたしね」
「じゃあ、まあいいか」
叔母上とブランドンもついてきた。
俺達がそのまま進んでいくと、何もない行き止まりの壁が見えてくる。
俺は行き止まりの壁までくると、俺とリーシャは壁を叩いたり、触ったりし始めた。
「ロイドー、隠し部屋とかない?」
「うーん、ないなー。お前は何か見つけたか?」
「何もないわね。宝箱くらいは置いておいてほしいものだわ」
ホント、ホント。
「2人共ー、諦めましょうよー」
マリアが止めてくる。
「うーん、ないかー……ジャックに自慢しようと思ったんだが」
それこそ手紙を書いて、ギルドに預ければいい。
「仕方がないわよ。奥にあると思うお宝のところにいきましょう」
「そうだな…………叔母上、約束通り、宝剣以外のお宝はくださいよ」
「わかってるよ…………ウチの甥っ子はこんなに浅ましかったかな?」
叔母上が呆れたように首を傾げる。
「船長、そんな約束をしたんですか?」
ブランドンが叔母上に聞く。
「まあ、別にいらんからな。これからも旅を続ける甥っ子への餞別だ」
「そうですか…………わかりました。では、奥の宝物庫にいきましょう」
ブランドンはそう言って、再び、先頭となって、来た道を引き返していった。
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