第108話 いざ、隠れ家へ
よくわからないが、俺とリーシャが夜の船でいい感じになっていると、変なのに襲われた。
「なんでそんなもんが来るのかねー」
「さあ?」
俺はリーシャに腕を引っ張られながら立ち上がる。
そして、立ち上がると、リーシャと共に船の下を見た。
暗くてよくわからないが、海面が揺れているようにも見える。
「気配はあるか?」
「もうないわ」
逃げたか……
「状況を教えろ」
「私が目を閉じて、ロイドを待っていると、船の下から急に気配がしたのよ」
「それまでは?」
「人の気配があったら目を閉じないわよ。はしたない」
そういう問題ではないが、直前までリーシャが気付かなかったわけか……
「相当な練度だな」
船の下から現れたということはここに来るまで泳いできたということだ。
こんな暗闇を泳ぎ、気配まで消している。
「魔力感知は?」
「なかったな。お前、斬れたか?」
「避けられたから腕をかすっただけね」
当たってはいるわけか……
「どう思う?」
「兵の中の誰かがやったか、この無人島に何かがいる」
まあ、その二択だろうな。
「どっちだと思う?」
「さあ? 腕には当たったわけだし、兵を調べればわかるかもね」
とは言っても、ポーションや回復魔法で治されたらわからないんだよなー。
「きな臭い仕事になってきたな」
「最初からでしょ」
まあな。
「リーシャ、このことは叔母上には言わないでおこう」
「それがいいかもね。この状況はマズいもの」
リーシャも今の状況がマズいことがわかったらしい。
「戻るか…………明日に備えて寝た方が良い」
「待ちなさい」
俺が船室に戻ろうとすると、リーシャが俺の腕を掴んだ。
「なんだよ」
「ほら、星空がきれいじゃない?」
俺はリーシャが止めてきた意図がわかったので俺の腕を掴んでいるリーシャの腕を掴むと、引っ張って抱き寄せた。
「ものすごく不敬なことを言うと、アシュリー様が邪魔」
リーシャが俺の腕の中で王族に対して言ってはいけないことを言う。
「邪魔だよなー」
ホント、邪魔。
外で寝てくれないかな?
「ふう…………そろそろ戻りましょう。マリアとアシュリー様に勘ぐられるわ」
もう遅いと思うけどな。
俺達は先程、邪魔されたことをし終えると、さっさと船室に戻ることにした。
◆◇◆
船室に戻ると、叔母上も航海日誌と報告書を書き終えていたので風呂に入り、軽くワインを飲んだ。
そして、翌日に備えて早めに就寝した。
翌日、早めに起きた俺達は朝食を食べ、準備を終えると、船を降りてブランドンが待つベースキャンプに向かった。
「おはようございます。よく眠れましたか?」
ブランドンと合流すると、ブランドンが叔母上に聞く。
「まあな。何か問題ごとはあったか?」
「何もありません」
問題は何もなかったらしい。
「そうか……サハギン討伐の方は?」
「はい。頂いた指示通りに2部隊に分かれ、サハギン討伐とここの警護をローテーションさせます。明日には討伐を終えるでしょう」
「うん、わかった。では、私達も本命の仕事に入ろう」
「はっ! それでは私が先導いたします」
ブランドンは敬礼をすると、昨日、俺達がサハギン討伐に向かった方向に歩いていったため、俺達はブランドンの後ろを歩き、昨日の洞窟に向かう。
俺達が昨日と同様に海岸沿いの砂浜を歩いていると、森の方から1匹のサハギンが現れた。
「確かに出ますね……」
ブランドンが出てきたサハギンを見ながらつぶやく。
「この島をサハギン島とでも名付けるか?」
叔母上が笑いながら言う。
「御冗談を…………私がやります」
「任せた」
ブランドンは叔母上の許可を得ると、腰の剣を抜き、構えた。
ブランドンが構えると、サハギンは俺達に気付き、駆けてくる。
「相変わらず、馬鹿正直に突っ込んでくるなー」
こっちの方が数が多いんだから躊躇しろよ。
「サハギンは頭が悪いといわれるオークよりも知能が低いモンスターだな」
叔母上が教えてくれる。
「へー」
やっぱりバカなんだなと思っていると、ブランドンが駆けてくるサハギンに向かって、少しずつ近づいていく。
「慎重だなー」
「軍属はそういう風に訓練されている。いついかなる時も油断をするなってな」
さすがは鍛えられた兵士。
ウチの世界一美しい蛮族とは違う。
ブランドンとサハギンの距離が数メートルとなったところでブランドンが空いている左手をサハギンに向ける。
「止まれ!」
ブランドンがそう言うと、駆けていたサハギンの動きが急に止まった。
直後、ブランドンはものすごいスピードで剣を振り、サハギンの首を刎ねる。
「…………ロイド、あれは?」
リーシャが小声で聞いてくる。
「…………あれはパライズだ。俺がティーナに使った魔法と一緒」
「…………なるほど。剣と魔法のコンビネーションがすごいわね」
確かにすごい。
俺は魔法だけだし、リーシャは剣だけだからそのすごさがよくわかる。
サハギンはなすすべもなくあっという間に倒れると、ブランドンはすでに死んでいるサハギンに近づき、サハギンの身体に剣を突き刺した。
「んー?」
首を刎ねたならもういいんじゃないのか?
なんで剣を突き刺す?
「あれも軍属の兵士のやることだ。本当に死んでいるかの確認だな。これからも冒険を続けるお前達にアドバイスだが、モンスターの中には生命力が高いやつもいる。そいつらは首を刎ねても少しの間なら動くこともあるから注意しろ」
怖いなー。
ほぼゾンビじゃん。
「船長、お待たせしました」
サハギンを倒したブランドンが戻ってきた。
「うん、相変わらずの腕だな」
「まだまだですよ…………さあ、行きましょう」
ブランドンは謙遜すると、再び、俺達の先頭に立ち、歩いていった。
お読み頂き、ありがとうございます。
この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。
よろしくお願いします!