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廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~  作者: 出雲大吉
第3章

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第104話 海はきれいだが、嫌な気持ちになる


 叔母上から冒険者として仕事を請けた俺達は海岸沿いを歩いている。

 ブランドン率いる討伐組の兵士達が森の方に行ったので俺達は海岸沿いを歩くことにしたのだ。


「のどかな島ですねー」


 マリアが楽しそうに笑いながら言う。


「天気も良いし、どっかのリゾートみたいだな」


 この島は海はもちろんだが、海岸もきれいで歩きやすい。

 陸地から離れているのが難点だが、リゾートとして売り出せば需要があるかもしれない。


「そうね。でも、リゾートにふさわしくないお客さんが来たわ」


 リーシャが言うように前方にはサハギンが2匹いた。


「こりゃダメだ。絶対にリゾートにはできんな」

「のどかさが一気になくなりましたね……」


 のどかっぽい島に似つかわしくない客だが、本来はこれが正しい姿なのだ。


「リーシャ、やるか?」


 俺はサハギンに杖を向けながら聞く。


「私がやる」


 リーシャはそう言うと、前方のサハギンに向かって駆けていった。

 足場が砂浜なので走るのは大変な気がするが、リーシャは何の問題もなく、猛スピードで突撃していく。


「速いですねー。同じ人間とは思えません……」


 マリアが呆れた様子でリーシャを見る。


「まあな…………マリア、こっちに来い」


 俺はマリアを抱き寄せる。


「え? どうしました…………あ、サハギン」


 抱き寄せられたマリアが見上げてきたが、すぐに俺の目線で気付いたらしい。

 右方向の森から別のサハギンが現れたのだ。


「1匹か…………しかし、多いなー」

「ですね。あ、来ました! 殿下ー」


 マリアがいつものように俺の後ろに回り、俺を盾にする。

 俺はマリアの行動を気にせず、杖をこちらに向かってくるサハギンに向けた。


「エアカッター!」


 俺の杖から放たれた風の刃はまっすぐ飛んでいき、サハギンを両断した。

 2つに分かれたサハギンは血だらけで砂浜に横たわる。


「弱いなー……」


 避けることもしなかった。

 こりゃ、相当、知能が低いわ。


「お見事です! さすがは殿下! すごいです!」


 マリアが笑顔で称賛してくる。

 

 うん、かわいい奴だ。


「すごかろう? まあ、あっちはあっという間に2匹倒したけどな」


 俺がチラッとリーシャの方を見ると、リーシャは砂浜に倒れているサハギンのすぐそばでかっこつけて剣を掲げていた。


「剣に話しかける騎士様のようです…………王家の剣を完全に奪われてますね」

「ギリスは王家の剣を怪盗に奪われた。エーデルタルトは王家の剣を嫁に奪われた。どっちがダメだと思う?」

「正直に言うのははばかられます」

「言ってみ? 別に怒らないから」


 多分、怒るのではなく、俺が傷つくだけだ。


「国家としてはギリスがダメです。殿方としてはエーデルタルトがよろしくないかもしれません。もちろん、殿下は魔術師なので一概にそう言い切れませんし、とても立派な御方だと思っています」


 マリアがものすごく気を使った言い方をするが、やっぱりちょっと傷ついた。


「まあいいや。あれは貸しているだけ」


 多分、返ってこない気がするが、まあ、常にそばにいる妻に持ってもらっているだけだ。

 俺には杖があるからね。


 俺は自分にそう言い聞かせ、魔石の採取を始める。

 サハギンは緑色の身体で青い血なので気持ち悪いが、すぐそばが海なのですぐに手を洗えるのは楽でいい。

 俺は自分が倒した分とリーシャが倒した分の3匹のサハギンから魔石を回収し終えると、再び、海岸沿いを歩いていく。


「きれいな海ですねー」

「そうね」

「アムールと違って、魚臭くないしな」


 あの生臭い匂いもなく、潮の香りでいい感じだ。


「そういえば、南国の方だと泳ぐらしいですよ」


 マリアが思い出したように言う。


「泳ぐ? 寒くないか?」

「南国の海は波も少なく、暖かいらしいです。だから海水浴が流行っているんですって」

「ふーん、まあ、庶民も川で泳ぐらしいし、海で泳ぐのもあるか……」


 モンスターや危ない魚に襲われないのだろうか?


「しかも、女子も泳ぐらしいです」

「は? 何それ?」


 服を着て泳ぐの?

 それとも裸?

 露出文化なのだろうか?


「なんかそういう服があるらしいです。泳ぐ用の服で女子もそれを着て海に行くんですって。教会で聞きました」


 へー。

 本当に世界は広いな。


「南方に行ったら泳ぐか?」


 泣きながら溺れるマリアの幻覚が見え、助けてーという幻聴も聞こえた。


「嫌ですよ。そもそも泳げませんし」


 まあな。

 俺とリーシャも泳げない。


「海に沈むマリアが目に浮かぶわ……」

「俺も」


 奇遇だな。


「私は海に入りませんし、空も飛びません。殿下以外の男性にも近づきません」


 マリアの世界がどんどんと狭くなっていっている……

 最後はそれでいいし、空は完全に同意だけど。


「そうだな……しかし、お前とこうして海を見てると、アムールで海を見たことを思い出す」

「そうですねー」


 マリア曰くデートだった。

 デートだったのだが……


「………………」

「………………」


 俺はその後にマリアが攫われたことを思い出し、嫌な気分になった。


「海は嫌いです……」


 どうやらマリアも同じことを思い出したらしい。


「俺もだわ……」


 俺とマリアはきれいな海を見ながらこうやって、昔を思い出すこともできない。

 ロクなもんじゃないな。


「ロイド達のトラウマが増える旅になってるわねー……」


 ホントだよ。


「マリア、これ以上、トラウマを増やさないようにしような」

「ですね! このままだと、一歩も外に出られない人生になりそうです」


 どんな人生を送るかはわからないが、外に遊びにいくくらいはしたいものだ。


お読み頂き、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 冒険しようにも行き先と方法がどんどん狭まるので最終的に田舎暮らしになりそう。
[一言] マリアなら屋内でも攫われそう
[一言] そして攫われるマリア ってなりそうw
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