第101話 缶詰だった!
どうやら無人島のくせに半魚人のモンスターであるサハギンは出るらしい。
「面倒ですね」
「まあな。島に着いたらまずはある程度のモンスターを狩り、ベースキャンプを設営する。その後に調査だな」
「俺達は船が良いです」
「私もだよ。ベースキャンプはあくまでも見張りの兵達のものだ。モンスターに船を壊されたらシャレにならんからな」
見張りを立てても有事の際にすぐに動けないと意味がないからか。
要はモンスターを船に近づけさせないための基地なわけだ。
「なるほど。その後に隠れ家ですね?」
「そうだ。海岸沿いを歩くと、かなり広い洞窟がある。中はかなり入り組んでいて、かつての海賊の隠れ家ではないかという報告が上がっている」
それを怪盗がお宝を隠す隠れ家に利用した感じかな?
多分、粛清されたとかいう裏切者の貴族の提供だろう。
「調査はどれだけの数で行きます?」
「私、ブランドン、お前達」
「少なくない?」
「トラヴィス様の時は逆に多すぎたことが失敗の原因らしい。逃げる際に後ろがつかえたんだと」
ふーん、まあ、何も言うまい。
「ブランドンは魔術師ですか?」
「そうだ。ついでに剣も使えるし、戦力としては十分だな」
「ちなみにですが、トラヴィス殿やその部下はどうだったんです?」
「部下は詳しくはないが、トラヴィス様は魔法が使えないこともないが、得意ではなかったな。魔導船を動かすことができる程度だ」
魔法で罠への対処ができなかったわけか。
それに比べ、今回は叔母上と俺がいる。
もし、何かあってもマリアがいるし、問題はないな。
「じゃあ、5人で行きますか」
「心配ならリーシャとマリアを置いていっていいぞ」
「嫌ですよ。私は殿下のそばを離れません!」
マリアが断固拒否する。
「ここに残すより、一緒の方がいいですよ。それにマリアは元々、教会の修道女でして、回復魔法を得意としています」
俺がそう言うと、マリアが力強くうんうんと頷く。
「おー、そりゃいいな。便利だ。ポーションも高いしな」
ポーションを持ってきてたのか……
そりゃそうか。
回復魔法を使える奴なんて魔術師よりも貴重だ。
俺達はこれまででポーションを用意してこなかったが、それは貴重なヒーラーであるマリアがいるからである。
以前、ジャックに剣士、魔術師、ヒーラーが揃っていることこそが何よりの幸運と言われたが、本当にその通りなのだろう。
「そういうわけでリーシャもマリアも連れていきます。足を引っ張ることはしませんので」
「まあ、わかった。じゃあ、5人な。基本的にはブランドンが案内してくれるが、気になったことがあれば言え」
「わかりました」
「よし、では、到着まで休んでろ…………それとそこで寝ている正室にも説明しとけよ」
叔母上がそう言って、俺達の方のベッドを見たため、俺とマリアもベッドを見る。
そこにはさっき見た時とまったく同じ体勢で寝ているリーシャがいた。
「死んでません?」
「よく見ろ。ちゃんと胸が動いている」
リーシャのそこそこ大きな胸が縦に動いている。
「あの人を見ていると、なんだか私も眠くなってきますよ」
「寝ていいぞ。俺はちょっとやることがある」
お前らへの文の内容を考えないといけない。
「じゃあ、そうします。アシュリー様はどうされるんです?」
マリアが叔母上に聞く。
「私は航海日誌と報告書を書かねばならん。お前らは私に気にせず休んでろ」
叔母上はそう言うと、紅茶を飲み干し、部屋の隅にあるデスクに向かう。
そして、マリアがベッドに向かい、ベッドの真ん中で寝ているリーシャを転がして、横になったので俺は座ったまま、腕を組み、文の内容を考え始めた。
◆◇◆
俺がずっと文の内容を考えていると、叔母上が様子を見てくると言って、部屋を出ていった。
それからしばらくすると、リーシャとマリアが起きてきたので、リーシャに先程の叔母上との話を説明した。
なお、文の内容は1行から2行に増えただけだ。
「――というわけだが、どう思う?」
俺は叔母上の話をリーシャに伝えると、感想を聞く。
「正直、情報が少なすぎて何とも言えないわね。ただ、アシュリー様が何かを隠しているのは確か」
リーシャもそう思うか……
「アシュリー様が私達を騙しているんですか?」
マリアがリーシャの言葉を聞いて、微妙な顔になった。
「いえ、騙しているというわけではないと思う。アシュリー様には何かの考えがあって、あえて言っていないだけね」
「俺もそう思う。そもそも叔母上が俺達をどうにかすることはないしな。叔母と甥だぞ」
王侯貴族にとって、血は水よりも濃ゆいのだ。
「そうね。アシュリー様が私達をどうにかすることはないでしょう。ただ警戒はすべき。私が信じるのはロイドだけ…………あとマリア」
リーシャが付け足したようにマリアの名前もあげた。
「何故、私を信用しないんです?」
マリアがジト目でリーシャを見る。
「あなたはロイドの庇護欲を刺激しているもの。卑怯よ」
まあ、リーシャを守ってやらなきゃと思ったことは一度もない。
「実際、弱いんだから仕方がないじゃないですかー」
「私も弱い方が良かったかしら?」
誰だよ、そいつは。
もはやリーシャの面影がない。
「お前が弱い時なんかないだろ」
「そうかしら? 夜はいつもいじめられている気がするわ」
そういうことを言うな。
「淫乱だわー……この下水、すました顔してド淫乱だわー」
マリアがドン引きしている。
「これに関しては私じゃなくてロイドが悪いと思うわ」
さて、今日の晩飯は何かなー?
缶詰かな?
何にせよ、温かい料理が良いわ。
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