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第100話 お茶を淹れるのが得意という意味は淹れる相手がいるというマウント


「美味しいな……」


 俺はマリアが淹れてくれたお茶を飲んでいる。

 備え付けられた窓の外を見ると、どうやら出港したようだった。

 だが、揺れはほぼない。

 さすがは大型の魔導船だ。


「でしょー。私もお茶は得意なんですー」


 へー……

 お茶を淹れるのに得意不得意があるのだろうか?


「何が入ってるか知らんが、害のないものにしろよ」


 よく考えたら俺はマリアとマリアの妹が踏んだぶどうのワインを飲んでいたわけだし、今さら気にする必要もないことに気付いた。

 というか、そういうことにしようと思った。


「入っているのは愛情ですよー。リーシャ様も入れてくださったでしょう?」

「たまにな……あいつも得意らしい」


 俺はベッドの上でスヤスヤと眠るリーシャを見る。


「そうでしょうねー。リーシャ様は昔から得意ですから」


 とは言っても、あいつがお茶を淹れてくれる時は相当、機嫌が良い時だ。


「しかし、このお茶は単純に良いものだな。香りが良いと思う」

「ですね。さすがはアシュリー様のお茶セットです」


 正直、お茶よりワインの方が良いが、こんな嬉しそうに淹れてくれたマリアを無下にはできない。

 愛情が入っているというのもまあ、わからんでもない。


 俺がニコニコ顔のマリアを眺めながらお茶を飲んでいると、扉が開かれた。

 部屋に入ってきたのはもちろん、叔母上である。


「船の操縦はいいんです?」

「ブランドンに任せてある。マリア、私のも」


 叔母上はそう言うと、テーブルにつく。


「はい。良い茶葉ですねー」

「まあな。南方から取り寄せたんだ。ところで、あいつは死んでんのか?」


 叔母上がリーシャを見る。


「おやすみです。あいつの趣味は寝ることと人を斬ることなんです」

「どこの蛮族だ…………勇ましすぎるだろ」

「リーシャ様は大変にお強いんですよ。モンスターだろうと賊だろうと瞬殺です」


 マリアが自分のことのように誇らしげに言う。


「なんでそんなことになったんだ? あいつ、本来なら次期王妃だろ」

「さあ? 殿下が弱っちぃ…………魔術に傾倒したからじゃないですかね?」


 言っておくが、俺は別に弱くない。

 皆が強いだけだ。


「ふーん、お前、少しは鍛えろよ」


 叔母上が呆れたような顔で俺を見てくる。


「この海を火の海に変えてやろうか?」

「お前、絶対に生まれてくる国を間違えただろ。義姉さんと共にウォルターに行けよ」

「母上は死んだぞ」

「え? あの人が?」


 まあ、叔母上は知らんか……


「4年くらい前にぽっくり逝った。まあ、身体が弱い人だったからな」

「マジかー……」

「マジ、マジ。そん時に不死の魔法を研究したんだが、ゾンビは嫌だって怒られた」


 そうだろうなと思ったが、一応、聞いてみた。

 結果、めっちゃ怒られた。


「…………お前、黒魔術はやめろよ」

「もうやってない。陰湿的だし、俺はもっと派手な魔法がいいわ」


 炎でドカーンな感じ。


「恐ろしい奴。これが王であれが王妃ってエーデルタルトの未来は最悪だな。廃嫡で正解だろ」


 うっさい。


「そんなことより、今回の調査の仕事の概要を教えてくださいよ」

「まあ、そうだな。あ、その前にウチの子を見てくれてありがとうな。2人共、喜んでいたぞ」


 叔母上が急に親っぽくなった。


「いえいえ、俺も楽しかったですよ。あんな風に親族と接することはなかったですからね。イアンは生意気だし」

「どっちもどっちな気がするが、まあ、助かった。魔力操作まで教えてくれたんだろ?」

「ええ、初歩中の初歩ですけどね。叔母上が教えてあげればいいのに」

「私はわからん。そんなことをせんでも魔法を使えたし」


 これだから天才肌は嫌だわ。


「クリフもヘレナも素質は十分そうでしたし、魔術教本でも買い与えてあげてくださいよ。あそこまで興味を持っているようだったら文字の読み書きも今のうちから覚えられるでしょう」

「そうするか…………」


 叔母上が考え込む。


「子供が進んで学ぼうと思っているんですから尊重してあげてください」


 ウチの親はまったく尊重してくれなかった。

 やれ武術がー、やれ剣術がー…………どれだけ剣術を鍛えようと俺の睡眠魔法かパライズを食らえばイチコロだというのに……


「まあ、そうだな。そうしよう」

「はい。それで叔母上、今回の調査は?」


 俺は本題に入ることにした。


「そうだな。今回調査する無人島は昨年、私の夫が調査した島だ。そのため、島のある程度の概要なんかはわかっている」

「確認なんですが、トラヴィス殿が亡くなったと聞きましたが、他の者は生きて帰ったということでいいですか?」

「ああ。トラヴィス様は数十名の部下と共に島の調査に向かい、その半分が戻っている」


 半分か……


「その半分とは?」

「トラヴィス様は兵を船に待機する組と隠れ家の調査組に分けたらしい。戻ってきた兵は待機組だな」

「罠で亡くなったと聞きましたが?」


 どうやって罠ってわかったんだ?


「正確に言うと、数名は帰還したんだ。罠にかかったが、後方にいたため助かったそうだ。ブランドンがその1人だな。島のことに詳しいから今回の調査では副官にした」


 あいつか……


「では、その罠のところまではスムーズに行けるわけですね?」

「まあな。だが、その島はモンスターが出る」

「モンスターですか……」


 面倒だな……


「ゴブリンです?」

「ゴブリンもだし、オークもいるが、大半はサハギンだ」


 サハギンって半魚人だっけ?

 気持ち悪そー……


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[良い点] ロイドは倫理観とかかなりやばいけど、身内と自分ためなら労力惜しまないの、ほんも主人公してる。
[良い点] キャラクターがしっかりしてて~、なんていう上から目線は置いておいて。どのキャラも好きです、日常(?)会話も、楽しく読ませていただいてます! [気になる点] む、暗殺疑惑? 続きが楽しみです…
[気になる点] もう少しテンポよく進められないもんですかね。 叔母上と遭遇してから、少々退屈。
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