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川上英星は穴だらけ!  作者: タテワキ
《第10章》 そして今度は神界へ!?

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僕の最期

いきたちとの合流に成功した英星えいせいたち!

英星えいせい! 紫電しでん! よかった無事だったのね!」


 いきが目をうるませて歓喜の声を上げる。


「あんたら……身体は? 大丈夫なの?」

「ワイズマンさんが駆けつけて治してくれました。問題ありません!」


 王児おうじがその小さな胸を誇らしげに張った。


「お兄ちゃんも無事そうでよかった!」


「……早く逃げるぞ」


 お兄ちゃんは僕の言葉には反応せず、くるりと背を向けてしまった。

 うむむ、やっぱり怒ってんのか。


「2人ともなんかあったの?」


 粋が戸惑って僕らを交互に見る。

 そりゃああんなこと言ったら……許されないよね……。


「私はデュークの援護にでも行きましょうかねえ。姫様たちはどうかご無事で」


 ワイズマンが僕とすれ違い、一人奥へと進みかけたその時。


「ねえワイズマン。僕ら……、死神族あんたらを散々痛めつけたよね。」


 ワイズマンの背中に話しかける。

 濃紫こむらさきの魔道衣が静かに上下していた。


「それでも僕らを助けてくれる。……どうして?」


 魔道衣が小刻みに震え出した。どうしたんだ?


「くくくくく! 我らが姫様は随分とお優しいですねえ。しかもご自分の心に正直であられる!」


 ……近くで見るワイズマンの笑いは正直怖かった。


「そんなの……『私が助けたいから』に決まっているじゃないですか!」


「ワイズマン……!」


「それに、私は記憶力には自信があるのですが……姫様から痛めつけられたなどという記憶はございません。あったとしても失念してしまいました」


 ワイズマンは飛びかかって来た神族を一薙ひとなぎ。


「死神族というのは自分の心に正直なのです。姫様も……その真っすぐさをゆめゆめお忘れなきよう……」


 それだけ言ってワイズマンは大聖堂の奥へと駆け出した。


「ワイズマン! 必ず! 必ず帰って来なさいよ――っ!」


 ワイズマンは背を向けたまま、軽く手を挙げて返事をした。


「……もういい。行くぞ! 紫電! お前の足は速いな?」


 お兄ちゃんがれたように話し始める。


「う、うん」

「私は今空が飛べない! すまんがお前の肩に乗っけてくれ! 私は足が遅いのだ!」

「解った!」


 そういえばお兄ちゃんも空を飛んでいないな。

 何か見えない力が働いていて飛べないのかも。


「いいか!? 脱出口までの経路は私の頭に入っている! これよりは紫電が先頭だ。お前らついて来いよ!」


 お兄ちゃんは紫電の肩に乗っかり、「右! 左!」と指示を出しながらきらびやかな廊下を進む。まさかこの廊下が鮮血に染まる日が来ようとは。

 僕らもカースやスペルで応戦する。

 しかし全ての攻撃を防げる訳ではない。脱出口へと進むうち、僕らの身体に1つ、2つと傷が増えていった。


雷星らいせいさん! 脱出口ってどこなんですか!? これ以上は……があっ!」

「王児!?」


 王児の右肩を神族が投じたジャベリンが後ろから貫いていた。


「あ……! あ……! 槍……槍がオレの肩に……!」

「王児! 落ち着いて!」 「王児が! 王児がやられたわ!」

「王児ッ!」

「うっ! うううううっ! 痛い……痛いよう……ママぁ……!」


 王児は茫然自失のまま、白目をいて倒れた。


「あああああっ! うぅぅ!」


 だが王児の右肩に刺さったジャベリンの穂先に体重がかかり、王児の生々しいうめき声が響く。

 大聖堂の赤いカーペットに投げ出された賢者の書が、王児の血で濃い赤に染まっていった。


「ぎゃあああああああああ! 痛い! 痛いよおおおおお!」


 王児は血まみれのままのたうち回る。


「王児! お願い落ち着いて!」


 駆け寄った僕に王児がすがりつく。

 早く王児の傷を癒さなければ……!

 僕は王児に刺さっているジャベリンの柄をカースで断ち切ると、


「ちょっと辛抱してねっ!」


 気合とともにジャベリンの穂先を引っこ抜いた。


「ぎゃうん!!」


 まさに栓を抜いたように血が噴き出し始めた。

 僕はコウモリの紋章を輝かせる。

 他の味方もいっぱいいっぱいだ。全く余裕がない。

 さあ、傷が塞がり始めたぞ。あと少し!


 不意に死神城と大聖堂で見た悪夢が思い出される。

 それは厳星げんせいが裏切り、お兄ちゃんも裏切るというもの。

 まさか――あれは正夢……? だとしたらお兄ちゃんも……お兄ちゃんも裏切ってしまうんじゃあ……!

 お兄ちゃんを振り返ると、スペルで周りの神族を焼き払っていた。

 ――そんな訳ないよね。


 僕の胸の中にずるりと異物が入った。

 気付くと味方のスペルによる弾幕をくぐり抜け、1人の雑兵が伸ばした槍が――

 槍が――……。

 僕の薄い胸板を紙のように貫いていた。


「ごふっ……!」

「英星ッ!」 「英星っ!?」


「げうううぅううぅぅ!!」


 血が濁流だくりゅうのようになって口から溢れる。

 槍が胸から抜き放たれ、弓形きゅうけいに上半身が反って。


 真っ先に駆け付けてくれたのはお兄ちゃん。


 お兄ちゃん……ごめんね……。

 先にくよ……。


 僕が最期に見たのは血相を変えた兄の顔だった。



英星死す――――

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