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川上英星は穴だらけ!  作者: タテワキ
《第9章》 いざ死神界へ!?

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死神族の姫

暗闇の中、英星えいせいに話しかけるのは…………?

英星えいせい! お前いつも鈍臭いよな! 本当に使えない無能だよ!」

「お……お兄ちゃん? お兄ちゃんなの? どうしたの急に」


 暗闇の中、兄の声だけが聞こえてくる。


「しかも死神族だったって? どおりで知能が低いわけだ。これは神族に報告しておかねばなあ?」

「いや! やめて! 僕は……僕はお兄ちゃんの妹だよ!?」


 お兄ちゃんはせせら笑う。


「お前が妹? なぜ死神族のお前が妹なのだ。お前を妹などと思ったことはない!」


 黒いもやの中、前方に金色の杖を持った初老の男性がぼんやりと現れた。


 あれは――お父様!!


「お父様――――っ! 聞いて! お兄ちゃんがいじめる!」


「…………お前に」


「え……?」


「お前に父と呼ばれる筋合いなどないわ――――――っ!」


「ぎゃうっ!?」


 お父様が発した煉獄れんごくの炎に僕は吹き飛んだ。

 熱い……熱いよお…………。


 コツコツと靴音がして、また誰かがやって来る。

 あれは……? お……お兄ちゃん! 助けて!!


 必死で手を伸ばすも、手の甲に電撃のような感覚が返ってきた。



 手に……お兄ちゃんの槍が刺さっている……?

 伸ばした手の甲には鋭い槍が突き立ち、焼けただれた手を地面まで貫いていた。


 悲鳴をあげる間すらなく僕の首はね飛ばされ、暗闇でぽーんと跳ねたのち、ころころと転がる。


「この世には……お前の味方など一人もいない」



「いやあああああああああ!!」


 僕は飛び起きた。


「はぁ……はぁ……はぁ……!」


 背丈に不釣り合いな大きなベッドの上で、僕は身体じゅうを触り、自分がこの世に生きていることを確認する。まず頭を触ったのは言うまでもない。

 吸いきれなくなった汗がネグリジェから噴き出ていた。

 なんとか……なんとか生きてるな…………。

 あーあ、シルクのベッドシーツが汗でジュクジュクだよ。せっかくの高級品が。


「ふわーあ」

「ひっ!」


 窓辺で眠っていたお兄ちゃんの大あくびに、再び頭を触る。


「どうしたぁ? なんか嫌な夢でもみたのか」

「う……うん…………」


 その夢で首をすっ飛ばしたのはあんたです。


「あ、解った! 紫電しでんいきに浮気したとかそういう夢だろ~!」

「あのね。紫電は夢の中でも浮気とかしないの!」

「じゃあ?」


 問い詰められて「う」と言葉に詰まる。


「やっぱそうなんじゃねえか! や~い! いやあああああああああん……! じゃねえよ」


 お前はいじめっ子か何かかっての。はあ……、もういいよ。

 とにかく全然似てないのが腹立つ。裏声禁止!

 おまけに無断で人の夢に出演しやがって。

 ここは友情出演ということで手を打っておこう。


「でさあ。この死神城のでかい寝室で一人っきりが怖かった姫様よ」

「な、何よ」

「アクセル・キルンベルガー……お前のお父さんには会うのかい?」


 僕らは昨日正式に、ここ死神城に招待されたんだ。

 僕のホントのお父様……アクセル・キルンベルガーの奴はまだ暢気のんきに寝てんのかな。


 ったく、死神界に連れてくるにしてももっとやり方がなかったのか。

 変なウサ耳つけさせやがって。


 宝石がこれでもかと埋め込まれた部屋のドアがノックされる。


英星えいせーい。おはよー」


 紫電がパジャマで入って来た。

 うおおおおおおおおおお! パジャマ紫電萌え!!


「英星! よだれよだれ。大体考えてること解るけどさ」

「うぉっと失敬!」

「その……カースはどう? 再生の力で昨日雷星らいせいも治してたじゃない? コントロール出来そう?」


 そうなのだ。紫電の話によると、僕の力はカースらしい。

 あんなに忌々いまいましかったカースを僕は何度も使っていたことになる。

 僕はかぶりを振った。


「ううん……。あれから何度も試しに使ったけど……まだ制御は難しそう」

「そっか。まあゆっくりでいいよね!」


 紫電は僕が寝ていたシルクのベッドにぼふっと横たわったが、すぐに起き上がる。


「うわっ! ナニコレ汗!? どうしたの……? あ、英星は女の子だったね。ごめん。女の子のベッドに寝転がっちゃった……」

「あはは! いいよいいよ! まだ半分男みたいなもんだしさ!」

「いやあああああああああん!」


 微塵も似ていない兄のモノマネに、ご本人様からげんこつが飛んだ。



―――



「死神界の料理おいしすぎます」


 王児おうじがふわふわの玉子焼きを口に運びながらつぶやく。

 確かに料理がおいしいなあ。

 この前の海鮮料理屋で食べた魚といい、この馬鹿でかいドーム型の玉子焼きといい旨すぎる。

 ただ一言。でかすぎる。象くらいあるぞ。どうやって完食するんだ。


「しかしどんな調理法を選択すればこんなドーム型の玉子焼きが出来上がるんですかねえ。興味深すぎます」


 それは尋常じゃないくらい同意だ。


 ――その時ふいに外が騒がしくなった。キャーキャー声が聞こえるんだけどさあ。


 広いダイニングルームの扉が勢いよく開いた。

 入って来たのはコノボス・ツエー。


「姫! 王が……! アクセル・キルンベルガー様がお呼びです!」



英星にアクセル・キルンベルガー直々じきじきの呼び出し!


次回もお楽しみに!

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