禁句
デュークが英星の前に立ちはだかる!
この壁だけは絶対に越えなくちゃ!!
――さあ、因縁の対決!!
「ぅうーっ! デューク様あぁ~! やっちゃえーっ! クラリスの仇を討って!」
観客席に移動したクラリスが保護者にすがる子供のような声をあげる。
童女モードの真骨頂といったところだな。
デュークは僕の視線の先で手を握りしめ、ぼきぼきと骨を鳴らし始めた。
「こっちから仕掛けるよ! はあっ!!」
僕は暗黒の魔法陣を展開する。
「英星! 今度こそ返り討ちにしちゃえ――――っ!!」
紫電の応援が耳の端に聞こえてきた。
紫電自身もデュークに足をばっきり折られる惨敗を喫したのだから、この戦いを見守るだけでも並々ならぬ想いがあるだろう。
デュークの周囲に小石が浮き上がり始める。
この光景だけでもデュークの圧倒的な力を窺うことが出来るが、僕は「昔の少年漫画みたいやなあ」と気楽に構えていた。
――デュークが足を力強く踏み込んだ。
「ゆくぞおおおおおおおおお!!」
僕は暗黒の障壁を張り、デュークの突進を真っ正面から受け止めた。
びりびりと手に痺れが走る。
――でも、負けない!
コロシアム全体に重い地鳴りが響き渡り、その振動で遠くの壁が崩れていく。
「きゃあああああああああ!」 「わあああああああああ!」
粋や王児の悲鳴が木霊したのが解った。
力比べなら絶対に負けない!
――と、デュークはくるりと宙返り。
僕の背後に着地した。
力比べなら負けないけれど知恵比べなら完敗するんだよなあ。
「英星! 後ろだ!」
お兄ちゃんの指示が飛ぶ前に僕は本能的にしゃがんでいた。
そんな僕の眼前――さっきまで僕の頭があった位置を、熱線が通過して。
アリーナの分厚い壁を溶かし、深い穴を開けた。
思わず背筋が凍りつく。
振り返った僕に、デュークの掌からバルカンのように炎の弾が発射された。
「きゃあああああああああああ!」
「どうしたどうしたあ!!」
僕は暗黒の魔法陣を展開し、障壁を張ってやり過ごすが防戦一方。
こいつ、ホントに強い! よくこのあいだ戦って原形がとどまっていたな。
「英星! 巨大ワイズマン戦で隕石のスペルみたいなの使ったじゃない! あれは!?」
砲煙弾雨の最中、かろうじて紫電の声を拾う。
――そうか、あれがあったな!
「食らえええええええええ!」
僕は流星に攻撃を命じた。
一筋の流星がコロシアムの青い空に出現し、デュークを襲う。
「笑止!」
流星はデュークが張った障壁に易々と受け止められた。
そのまま砕け散る。ああ、希少価値の高そうな鉱物なのに。
「これじゃ手も足も出ない~!!」
「フハハハハ! 馬鹿め! 戦くがいい!」
「あ」
紫電少年が叫んだがもう遅い。
私は強大な力を解放する。
破壊の力が巨大な衝撃波となって小悪魔を襲う。
「ぐおうっ!!」
愚かな小悪魔が壁に大の字になって叩きつけられよった。
ははははは。愉快愉快。
「ごふぅっ……!」
小悪魔が血塊を吐き出す。戦くのは貴様だったようだな。
なんだ。身体中を覆っていた爪楊枝に色がついて曲がっただけのような棘。
ほとんど折れているではないか。
はっ! 強さの欠片もないのう。
「この私に『馬鹿』と申したか?」
「何?」
「この私に『馬鹿』と申したかと訊いているっ!!」
ぴんと張り詰めた声で私は小賢しい小悪魔を糾弾した。
「これはどういうことなんですか?」
王児少年の声が聞こえ、紫電少年と何やら話すや、しばらくして背筋を震わせた。
どうやら紫電少年から事情を聴いたようだな。
私は「馬鹿」と呼ばれることで、死と殺戮の女神として覚醒する。
今回は怒りがある程度コントロールできておるぞ。これは初めてのことかも知れぬな。
「ぐ……!」
小悪魔が呻き声をあげる。
「どうした? 先ほどまでの得意げな様子はどこへ行った?」
「…………その力! 確かめさせてもらいます!!」
小悪魔が敬語で叫んだ。その右手に炎の剣を携えて。
恐らくカースで創ったのだろう。
小悪魔が一瞬で私の背後に現れた。
ほう……次元を歪めるカースも使いおるのか。
敵の背後を狙うのが好きな奴よの。
小悪魔が足を大きく踏み込む。
「うおおおおおおおおおおおおおお!!」
「下がれ下郎!」
私の腕の一薙ぎは小悪魔の右腕を跡形もなく消し飛ばした。
ぎりぎり原形をとどめた剣の破片が飛んでいき、アリーナの壁にどかどかと突き刺さる。
「うわ、えっぐ…………!」
「英星……コントロール出来るようになったのか…………?」
少女粋と兄から声が漏れ出る。
「ぐあああああああああ!! ぐうっ…………!」
小悪魔は悲鳴をあげ、倒れた。
――私の勝ちだ!
やったー! デュークに勝った!!
英星の凄まじい成長!!
次回もお楽しみに!




