白煙
いやー、あのソフトクリームうまかったわ(ソラ談)
今回もしっちゃかめっちゃかです!
「もう少しだよ英星。早く早く!」
「ちょっと……待って……足が棒になる……、てか、なった……! かわいい英星ちゃん……じゃなくて英星くんの足は棒になりましたー! 今日はここまでー!」
「足が棒に……? 英星、人間の足じゃん。怖いこと言わないでよ」
「あのねえ、『足が棒になる』っていうのは慣用句! ホントなんにも知らないんだから、紫電にも困ったものね」
すると紫電はきょとんとして顎に手を当て、訊いてきた。
「じゃあどういう意味なの?」
「『足が棒になる』っていうのは、足が棒になって地面から少しでも養分を吸い上げたい……転じて、お菓子やジュースを摂取したい、って意味よ!」
「あ、そうだったんだー。じゃあさっきコンビニで買ったジュースを英星に……」
「ありがとー! 紫電大好き!」
「待て待て待て。なんかスゴい会話になってないか!」
ソラが乱入してきた。……えっ、『足が棒になる』ってそういう意味じゃなかったの?
「『足が棒になる』っていうのはな、長時間歩いたりして、足がこわばるって意味だ! ったく、それぐらい知ってろよ……」
「そ、そんな! 今までこう言ったら周りの大人がお菓子とかジュースくれたよ!?」
「それはお前がガキだからだよ!」
「し、信じない! 絶対信じないもん! これはお菓子やジュースをせびる魔法の言葉だもん!」
「ねえ、英星ってすぐ疲れるの? ひょっとして運動とか苦手?」
ぎくり。
「ぼ、ぼぼぼ僕は運動神経バツグンだよー!」
「へえー、じゃあリフティングとかできる?」
紫電がリュックからサッカーボールを取り出す。
リュックにそんなもん入れてたんか。
「よっ、ほっ、とうっ!」
紫電はサッカーボールで巧みなリフティングを見せる。
はわ~、カッコいい!
ボールが足に吸い付いてないかこれ?
「へへっ、なかなか上手いでしょ~」
「カッコよすぎる! すごーい!」
僕は紫電に黄色い声援を送る。
「じゃ、次は英星の番ね!」
紫電がボールをポーンとこちらに蹴ってきた。
お、ナイスパス! ボールの高さも軌道もバッチリ……、ってか、僕にボールが跳んできた!
「ちょっ! ちょっと待ってええええええ!」
でももうやるっきゃない!
僕は思い切り足を振り上げた。黄金の右足は見事に空を切り……、
股関節がごきりと大きな悲鳴を上げた。
「ぎゃああああああああああ!!」
「え、英星!?」
足を振り上げたまま背中から地面に倒れた僕は、股間を両手で押さえてのたうち回る。
「英星――――ッ!!」
「痛いよー! 痛いよー! うわあああああん!!」
ソラはボールを取りに行った。そういやここ斜面だったな。
次の瞬間、紫電が信じられないことを口走った。
「英星! 痛めたとこ診せて!」
「…………は?」
「お薬塗ったりするから下脱いで! 全部!!」
「やだ!」
「我がまま言わないの!」
「絶対脱がない!」
「もう! 男同士、恥ずかしがってる場合じゃないでしょ!」
紫電が僕を脱がしにかかった。右手がベルトを捉える。
「イヤ――――――――ッ!!!」
「ふげえっ!?」
僕の平手打ちがクリーンヒットする。
「あたたたたた……! え、英星! もういい加減に……!」
「英星! 私が神界で採れた薬草を塗ってやろう! それならいいだろう、な?」
滝のような汗をかいて、ソラが戻ってきた。
手には先ほどのサッカーボール。よく追いつけたな。
「ま、まあソラなら……いいけど……」
ぼそぼそと答える。
僕は紫電にお姫様抱っこしてもらい、茂みに入る。
そして紫電だけ茂みから退場させた。
「痛い……痛いよお……!」
「あー、動くな動くな。神界の薬草、持ってきといてよかったわ」
「……もういい?」
紫電が遠くから訊く。
「よし! いいぞ!」
「わ~、さすが神界の薬草! もう全然痛み感じないよ!」
「はあ……、どんだけ恥ずかしがり屋なんだよ英星……」
「よおし、どんどん進むぞーッ!」
――2分後。
「紫電歩くの速すぎーっ!! つーかーれーたー!」
「英星は音を上げるの早すぎだよ」
僕はその場に座り込み、『紫電の足は速すぎる!! ハラスメント反対!!』という横断幕を出し、言葉の刃で紫電を攻撃する。
「そんな横断幕いつの間に作ったんだよ……、英星、ボクをおぶって昨日ここを歩いてくれたじゃん!」
「そんなの友情の力でしょうがよ」
そうとしか考えられない。そもそもなんで手ぶらの僕が、こんな重そうなリュック背負ってる人間に負けるんだ。こやつ文字通り神を超えている。この体力バカめ。
「えーいーせーいー!」
紫電が僕の手を引っ張るが、僕は近くに生えていた雑草の根元を右手でがしりと掴んで必死に抵抗する。
「やだー! もう今日は疲れたー!」
どさくさに紛れて、ちゅどーんというアニメのような効果音が聞こえた。
……なんかスゴかったな。
「英星? ボクだって怒るよー?」
紫電の頭から白煙が出ている。そんなにキレなくても……。
「なんでそんなにキレるのよお……」
僕も少し拗ねて風船のように頬を膨らませる。
「は? キレてないじゃん」
「でも頭から煙が……」
僕が紫電の頭を指差す。
「え?」
紫電が首を傾げると、紫電の頭と白煙がキレイにズレた。
「……っ! 紫電ごめん! 見えない!」
「わあッ!」
僕は立ち上がって紫電を押し倒した。山頂から大規模な白煙が上がっている。
なんじゃそら! 紫電の頭と白煙の方向が重なっていただけか!
「なにあれ!」
紫電も気付く。
「行きましょ!」
今度は僕が紫電の手を引っ張り、立たせる。
僕らは山頂へと急いだ。
ボクぶたれ損じゃん……(紫電談)
次回もお楽しみに!