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川上英星は穴だらけ!  作者: タテワキ
《第1章》 紫電の旅立ち
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逃げたらアカン!!

前回、英星えいせいにエロ本を発見された紫電しでんは反撃なるか?

今回も波乱の予感が……?

 ――で。

 何でこんなことに。

 僕は紫電しでんと同じベッドで肩を寄せ合って寝ていた。

 紫電曰く、ベッドが1つしかないかららしい。

 ソラは窓の近くが落ち着くと言って、窓辺で月あかりを浴びながらうとうとしている。

 ホント今日は色んなことがあった。神界から人間界に降りてきて、初めて死神族のデススライムきゅんに遭遇して……カッコよかったな紫電。

 そのカッコいい少年は文字通り、目と鼻の先ですうすうと寝息をたてている。ああ、無防備だなあ。

 この隙に襲っちゃおうかな……ウソウソ。そんなことしないけど、こんなことを考えちゃうなんて僕って危ないかなあ。……なわけないか、きっと気のせいだよね!

 ええっと、どこまで思い出したっけ。そうそう、デススライムきゅん倒して、紫電の糞親父にも会って、風呂場で紫電の半裸体見て鼻血出した後、風呂場を少しだけ壊しちゃって優しく注意されたんだっけか。エロ本も見たし。いやー思い出しただけで疲れたな。寝よ。


「ううん……」


 僕のまどろみを紫電の声がかき消した。


「待って……待ってよ……」


 うなされているらしい。今日は生まれて初めてスペルも見たことだし、しょうがないか。


「行かないで……英星えいせい……」


 ――僕の夢か。

 僕は紫電の手を優しく握り、目を閉じた。

 ――ここで終わっていたらいい話だったんだけど。

 紫電はますますうなされ始めた。


「英星、なにしてまんの。もうボクたちの出番やで」

「は?」


 紫電が急に関西弁になる。


「英星! 逃げる気なんか? 一緒にここまで頑張ってきたやないか! 逃げたらアカン!!」

「ちょいちょい紫電、どうした?」

「やっぱそうこなアカンわ! さ、気合い入れていくで! 大観衆がボクたちを待ってる!」

「だからどうした!」


 ゆっさゆっさと紫電を揺らすが、全く起きない。


「ども~、英星&紫電です――っ!」

「……これどうしよう。やっぱ起こすべきだよなあ」

「いや~、英星さん! 最近、景気が悪うおまんな!」


 ……聞いてるこっちが恥ずかしくなってきた。


「ねえソラー。なんか漫才が始まったんだけど」

「面白いからほっとこうぜ」


 ソラがくすくす笑いながら寄ってきた。

 紫電の寝言はますますその勢いを増す。


「風のうわさによると……英星さんって魔法が使えるんやて? ホンマかいな~! え? 使ってくれるん? おおー、見せて見せて!」


 お、僕が大観衆の前でスペルを使うのか。何故か緊張してきたぞ。


「おおおおお、英星さんが宙に字を書いて……?」


 僕らは固唾を呑んで紫電の寝言に聞き入る。


「……って、すね毛! それすね毛って書いてるやんか~! うわ、英星さんにすね毛が生えた! ホンマや、英星さんホンマに魔法が使えたんや~っ!」


 そんなスペル聞いたことねええええええええ‼

 こいつ夢の世界でスペルを冒涜ぼうとくしてやがる!

 てゆーか大観衆の前で僕にすね毛生やしやがって!

 ……幸せそうに眠る紫電の顔を殴りつけたくなってきた。


「ぎゃはははははは! この寝言漫才、もう最高――ッ! もっと聞かせぐええええええッ!」


 1人でウケていた鳥をシメる。

 もうやだ。どんな手を使ってでも起こしてやる。


「さあ英星、いよいよ審査結果が発表されるで。もうすぐボクたちの夢が叶う! ボクには解んねん!」


 ……え? 結果発表? それは少し気になるな。

 頑張れ、夢の中の僕ら! その手に栄冠を掴め!


「……やった――っ! 優勝や――っ!」

「やったあ――――――ッ‼」


 思わず歓声を上げる僕とソラ。

 嬉しすぎて目に涙が浮かぶ。

 ソラとハイタッチし、抱き合った。


「やったよー! ソラ、優勝だよ――っ! 嬉しい――っ!」

「ハハハハハ! お前のすね毛が効いたな!」


 ……忘れてた。僕は再び鳥をシメる。

 いや~、優勝で締めくくれてよかったよかった!



―――



 次の日の朝、隣で寝ていた紫電が起きた。


「うぅぅ……よく寝た……」

「おはよう紫電」

「おふぁよう英星……ってどうしたのその顔!」


 どうもこうもない。夢の中とはいえ、漫才コンテストで優勝した興奮で眠れなかったのだ。

 僕の目元にはくっきりとクマができていた。ああ、世界が歪んで見える。


「枕が合わなかったのかなあ……?」


 違うよ! 僕は神界ではオタクな生活をしてて(ゲームとかゲームとかゲームとか)、こんなコンテストで優勝できるなんて思ってなかったんだもん!

 これはきっと神様が(僕も神様だけど)出来の悪い僕にくれた数少ないご褒美!

 うう……まだ余韻が残っている……!


「なに涙ぐんでんだお前は。大体想像つくけどな」


 ……なんかこの鳥、たまに僕の心を見透かしたようなことを言ってくるなあ。

 出会ってまだ数か月しか経っていないのに。……まあいいや。


「ところで、紫電は昨日楽しい夢を見てたみたいだね」

「え……?」

「ぷぷーッ! めちゃくちゃうなされてたぞ」


 僕とソラが少し意地悪な顔をすると紫電は、


「えー、ボクなんか変なこと言ってなかった?」


 と頬を染める。


「あはは、内緒!」

「…………」


 ……紫電がいつもの調子に見えたのはここまでだった。

 なぎのような表情を作ったかと思うと、床の拭き掃除を始め、窓も拭く。ずいぶん念入りに拭くなあ。

 同時に、大きな浅葱色あさぎいろのリュックサックもクローゼットから引っ張り出して、荷物を詰めていった。今日は学校で遠足でもあるんか?


「あんた、何してるの?」

「英星にずっとついて行こうと思ってさ」


 ずっと……ついて行く?


「あー……大丈夫! 実は僕、人間界の見学に来ただけだし。そんな冒険とかじゃないよ」

「じゃあその見学について行く」

「うーん、それはココを拠点にしてくれればありがたいんだけど? そのこととその丁寧な掃除に何か関連性はあるの?」

「ある」

「どんな?」

「出ていくんだ」


 ――僕の眠気と目の下のクマが吹き飛んだ。


「え? え? 出ていくって……本気⁉」

「本気の本気」


 だから丁寧に掃除して、でかいリュックに荷物を詰め詰めしてたんか。


「な、なんでまた急に?」

「昨日……見たでしょ? 最近、父上がいつもあんな感じで……」

「いやいや、だからって――」

「だからだよ」


 紫電は僕の言葉に自分の言葉をかぶせると、続けた。


「ボクは……初めから……初めから……愛されて……」


 声がどんどん小さくなる。


「……最近……すぐに叩かれるようになって……さ……」

「……紫電が後悔しないのなら」


 少年は目を赤くして、こくりと頷いた。



紫電、英星に反撃完了!

次回も乞うご期待!

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