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川上英星は穴だらけ!  作者: タテワキ
《第3章》 碧い髪の少女
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陽キャ現る!

無事にハイキングも終了!


あのねえ! どこが無事なんだよ!(紫電談)

 ハプニング続きだったハイキングもやっとこさ終わり、僕らは街に戻ってきた。

 山頂では遠鳴とおなりにしか聞こえていなかった喧騒に再び飛び込む。

 ――飛び込んだ先のファミレスで、僕は紫電しでんにランチを奢らせていた。


「このチーズインハンバーグおいしい――っ!」

「ありがとう英星えいせい! 喜んでくれて嬉しいや!」


 なんでご馳走になるこちらがありがとうと言われるのか。

 紫電の人のさが心配だ。悪い奴にコロッと騙されなければいいんだけど……。

 しかしこのチーズインハンバーグはチーズが濃厚でいくらでも食べられるぞ。

 ああ、舌の上でチーズがとろける……。

 こんなおいしい物を奢ってくれる紫電はホントにいい子だ。

 お兄ちゃんはピザを1枚頼んでいた。

 僕は紫電のスマホをいじらせてもらい、次に買うべきマンガをサーチする。

 あーあ、スマホ持ってくればよかった。

 自分のスマホは神界に置きっぱなしだもんなあ。

 一体誰だ、こんな準備で人間界の見学計画を決行した奴は。


「……この『穴だらけの一家』って漫画面白そうだなー。紫電はどう思う?」

「うん、その漫画面白かったよ! 家にはあるんだけどなあ……。電子書籍で今買ってもいいけど。お金なら腐るほどあるし」

「ええっと、それは嬉しいんだけど、僕は紙の本の『買った感』が好きだから。それに電子書籍に帯とかついてないじゃん?」

「ワガママだなー…………じゃあさあ」

「で、これからどうひまふ?」


 お兄ちゃんがピザを頬張りながら会話に割り込んできた。これからどうするかをきたいらしい。

 せっかく人がお喋りに花を咲かせていたのに、この鳥とことん空気が読めぬなあ。

 未来のことなんて、なるようになるじゃないか。


「ヌンの奴が落としたダルボワ文字のスペルも試せてないしなあ」


 お兄ちゃんがクッチャクッチャとピザを咀嚼そしゃくしながら続ける。

 きったねえな。

 ……でもそういえばそんなのあったな。すっかり失念しとったわ。


「英星お前まさか忘れてたとか言わないだろうな」


 ――どきり。


「はいへい、ほっひへもひいひゃん。わふれへはにひへもへいへいはひいよ」


 ナポリタンを限界まで頬張った紫電が答える。こいつ今なんつったんだ?

 これはさすがに解読不能。お前またハムスターみたいになっているぞ。


「……んぐっ……雷星らいせい、どっちでもいいじゃん。忘れてたにしても英星らしくて……という旨のことを」


 こいつあれだけの量のナポリタンを一瞬で丸呑みに……?

 ハムスターからアナコンダに突然変異しよった。恐ろしや。



―――



 舌と胃袋を満たした僕らは、ファミレスのガラス扉を出た。

 膨れたお腹と、春の柔らかいそよ風がちょっぴり眠気を誘う。


 ――――その時。


「ふんふんふーん♪」


 ピンクのランドセルを背負ったあおい髪の少女が、ハミングしながら歩いてきた。

 何かいいことがあったんだろうな……って、これは。

 ――魔力か?

 というのも紫電とどこか同じ、波動のようなものを感じたんだ。


「ね、ねえ!」


 すれ違う瞬間、すかさず声をかける。


「なーに?」


 碧い髪の少女はこちらを振り返った。綺麗なミディアムストレートの髪。長い手足に、160センチいっているんじゃないかという程の高い身長。ランドセルを背負っているのが不思議に思えるぐらいだ。僕よりも紫電よりもずっと高い。何より……胸。そう、胸だよ! 小学生とは思えないぐらい突き出ているんだ。きーっ! 呪ってやるう!

 それに加えて、アクアマリンのペンダントをしていた。……多分これはガラスか何かで作られているんだろうな。


「どうしたの英星? この子に用事?」

「え……あ、うん。少し」

「……待って! ボクも用事がある」


 お、紫電もこの子の魔力に気づいたか。だんだんえてきたな!


「スマホスマホ」


 そう言うと紫電はおもむろに碧い髪の子の正面に回り込み、はーい笑って、とスマホカメラのシャッターを切りだした。碧い髪の子もピースサインで応じる。


「……紫電くん何やってるんだい?」

「小学生ボンキュッボン萌え~。これは写真撮っとかなきゃ。しかも可愛いって最強!」


 ――――紫電のスマホにはアルバムアプリの画像消去の沙汰が下った。他の画像も全消去だ!


「ああっ! 何するのお!」

「何するのお、じゃねえこのナチュラルすけべ! 人を堂々と撮る奴があるか! 時代を考えろ時代をッ!」

「けち」

「君も君だよ? 個人情報が思いっきり搾取されてんのに嬉しそうにピースしないの」

「えへへ、後で訴えようかなーってね。ポーズさせられて写真まで撮られましたーって。慰謝料たんまりーっ!」


 ミラクルスーパーヘビーワードに、紫電が凍った。


「ウソだよ~! 本気にするなんてカワイイ!」

「え、ホ……ホント?」


 紫電のバカ! なに照れてんだ!

 まあこの碧い髪の子はかなりの陽キャなんだろう。

 その陽キャに紫電が訊く。


「ところでさあ、何かいいことあったの? ハミングしてたけど」

「今日ね、学校を仮病で早退できたの! だからゴッキゲーン!」

「うーん、学校の先生には明日正直に言おうね……」

「それと通りすがりの人に本もらったんだ!」

「へえー、本を?」


 紫電と陽キャは取り留めのないことばかりを話す。

 早くキルンベルガーを倒さにゃならんのにこいつら――――ッ!


「ねーえ? 僕ともお話しないー?」

「いいわよー? で、何話すの?」


 業を煮やして会話に割って入ると、陽キャはしれっと答えた。


「……ここじゃ目立つから……ちょっとこっち来て?」


 ……いよいよ陽キャの中に眠る魔力の存在を話す。

 紫電みたいにすんなり受け入れてくれるといいんだけど――――。



気になるキャラが登場!


次回もお楽しみに!

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