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川上英星は穴だらけ!  作者: タテワキ
《第2章》 追放、そして……
18/135

まさかの豹変!   ★

山で腹を壊すとはついてない英星たち。

山頂に別れを告げ、下山し始めるが……?

 濡れた服を着替えてから、僕らが下山を始めて30分。


「僕……女神なのに……女神なのにぃ……!」

英星えいせいさっきから何かブツブツ言ってるけどどうしたの?」

「わっ! びっくりした! い、いや、あの。ほら……! 僕って神様じゃない?」

「うん」

「なのに……山の中で……山の中でぇ…………!」

「山の中で……?」

「それぐらい察してよ!!」

「ぷぷーっ! これは後世までの語り草! 神様が山の中で野グげはっ!」


 デリカシーの欠片かけらもない下品な鳥には鉄拳制裁。僕だって乙女だ。


「しかも葉っぱで……葉っぱでぇ……!」

「葉っぱ? 葉っぱがどうかした?」

「だから察してよ!! あんただって葉っぱで拭いたクセにッ!」

「マジで! ボクは茂みの奥にあった山小屋のトイレの紙使ったよ……? あ、そういうこと? もしかして英星外でしちゃったの!?」

「山小屋あるって早く言え――――――ッ!! 無駄に大恥かきまくりだろ!」

「ぷぷぷーっ! これは語り草通り越してもはや伝説! 【悲報】神様、野に帰る!」


 いつの間に息を吹き返した! 愚かな兄よ!

 僕の裏拳が不遜ふそんな兄のあごを砕いた。これでしばらく喋れまい。


「ごめん、気が回らなくて……。でも使ったトイレットペーパーはちゃんと中身が見えないレジ袋に入れて持ち帰ってるから心配しないで! ほら!」


 見せるな見せるなそんなものを! 袋とはいえ誰かモザイクかけてくれ。


「英星はそのまま放置してきたの?」


 紫電しでんがにっこり笑いかける。


かないでよッ!!」

「ぷぷぷぷーっ! 山に天然の肥料を放置してきたのか! 父様とうさまが泣いて喜ぶな! 『おお、英星よ、今頃ハエが湧いておるだろうのお!』」


 僕は色んな感情が渦巻いて顔から烈火が出そうだ。

 とにかくこの男2人は配慮がなってなさすぎる。


「……ふう。よかった!」

「どうしたのよ。そんなホッとしたような溜息ためいきついて」

「あ、いや。つくづく英星が女の子じゃなくてよかったなって。もし女の子だったら山でウン……、いや用を足すなんてトラウマものだもん」


 こいつ今スゴいパワーワードを言いかけなかったか。

 かわいい顔してこの野郎。


「あのねえ紫電。僕実は」

「女の子の英星なんて想像つかないよ」


 女の子なんだよ、と言葉を続けられなかった。

 紫電は、そんな僕の感情なんて微塵も知りません、といった無邪気な笑みを向けてくる。

 無邪気さは時に神をも傷つけるんだな。


「……で? ボクたちは今どこに向かってるの?」

「あ、決めてなかった」


 紫電が景気よく顔から地面に突っ伏す。


「ダメじゃないかーっ! ちゃんと計画立てなきゃ!」

「計画なんて僕が立てられるわけないでしょ? どう進んでいいかも解らないのに」

「馬鹿だなー。だから計画立てるんでしょ?」

「…………あん?」



「え?」

「紫電、今なんと申した?」

「馬鹿だなーって、ひゃうっ?」


 英星がボクの両頬をつまんだ。情け容赦は皆無で、ぎりぎりと左右に広げられていく。

 ――こ、子供の力じゃない!


「い、いひゃいいひゃい! ひぎれる――――ッ!」


 ボクの両足が浮く。

 いつもはエメラルドグリーンの英星の瞳が、真っ赤に染まっていた。

 口の中には鋭い牙まで生えてくる始末。ナニコレ映画?


「どこまで引っ張ったら引きちぎれるのかなあ……?」

「ふぇ? ふぇえぇえぇええ――――っ!?」

「紫電! 英星のこめかみを両方押せ! 殺されるぞ!」


 雷星らいせいが叫んだ。真面目な雷星ってかなりレアだよね。

 ……そんなことを考えている場合でもないか。


「紫電。下等生物の分際でこの私を侮辱しよって……! 貴様の魂、冥土の彼方へと献呈けんていしてくれる」

「ひいいいいいいいいいい!!」

「いいから! こめかみを押せ! 2、3秒間!」


 雷星に怒鳴られるままに英星のこめかみを必死で押し続けると。


「うっ!」


 英星は糸が切られた操り人形のように、その場に力なく倒れ込んだ。

 昨夜に続き死にかけていたボクも、英星の眼前に沈む。

 ――少しちびっちゃった。


「いひゃい……」

「よく無事だったな」

「どこが無事なんだよ! さっきの英星なに!?」

「実はな……英星は頭が悪いことを相当気にしてて、『馬鹿』の2文字にえげつない反応示すんだよ。自分が言われたと判断したら最後、体内に流れる殺戮さつりくの血が呼び覚まされ、発言者を殺し尽くすまで怒りが収まらない。こめかみのツボを押せば正気に戻るんだ」

「そんな大切なインフォがあるんだったら早く言ってよ!」

「すまん。英星に『馬鹿』って言う勇気のある奴がもう神界にいなくて、最近全く殺戮モードになってなかったから忘れとったわ。昨夜のデューク戦で殺戮モード化させときゃよかったな」

「でもそれ、攻撃のターゲットは発言者だけなんでしょ?」

「……それもそうか」



「はにゃあ?」


 あれー? 僕はどうしたんだ。

 ――少し意識が飛んでいたような。

 視界がぼやける……ん?

 あ! お正月でもないのにお餅がある! それも2つも! でかーい!


「朝から何も食べてなかったからさ、お腹空いてたんだー。いただきまーす!」

「ぎゃっ!」


 ん? 餅が喋った?


「それは紫電の頬だ」

「え?」


 視界が回復してから確認すると、それは紫電の頬に相違なかった。

 慌てて吐き出すが、風船のように腫れあがった頬に僕の歯形が残っている。


「うううう……ぐすん」


 紫電がまたベソかいているし……でも人間の頬ってこんなところまででかくなるんだなあ。

 まるでヒマワリの種を口いっぱいに頬張ったハムスターのよう。

 これが限界だろうか。もう少し大きくなるかな?

 ――やめとくか。うん、やめとこう。



英星の恐ろしい一面!


次回もお楽しみに!

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