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川上英星は穴だらけ!  作者: タテワキ
《第2章》 追放、そして……
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英星らしい即決!

何やら話し合う英星たち。

英星は頭を使えるのか?

「……キルンベルガーが!?」

「誰その人偉いの?」

紫電しでんお前なあ、『なにそれおいしいの?』みたく言うなよ……」

「まあまあ。アクセル・キルンベルガーは死神族の王。かつて神界を壊滅寸前にまで追い詰めた騒乱を起こした張本人よ。お兄ちゃん、それで?」

「確かにそのキルンベルガーが復活したという噂を聞いた辺りから、死神族が出た、っていう人間界の警備担当の報告がちらほら出始めて、我々神族が討伐に駆り出されるようになったんだ。私は神界で事務してたんだけど」

「でも……噂でしょ?」

「それがな、たかが噂と切って捨てるのもどうかと思う。神界じゃなくて人間界を狙ってるのが不可解だが、奴らにとって敵はどちらでもいいのかもしれん」

「それ何年前の噂?」

「私が聞いたのは3か月前だが、噂自体はかなり前からあったらしい」

「へえー、神族って人間界にもいるの? ほら、報告って言ってたけど」

「うん。その辺の空を監視員が飛んでるのよ。人間界に介入することは滅多にないけど」

「ロマンチック――――っ!」


 瞳を輝かせてのロマンチック発言に驚きながら、僕はこの先のことを考えていた。

 これからどうする?

 神界への帰り道のゲートも閉じられたし……行き当たりばったりで進んできたけど、う~ん……。


「そのキルンベルガーさんを倒しに行こうよ」

「……はあ!?」


 僕とお兄ちゃんは、ほぼ同時に胡乱うろんっ気全開の返事をしていた。


「だってそうすれば英星えいせい目立つよ! きっと神界へのゲートも開けてくれるって! その辺の空を神族がふーよふよふーよふよ風船みたいに飛んでるんなら尚更! 『あ、神族が地上にいるのに取り残しとったわ~、てへっ☆』みたいな感じで!」


 ――色々突っ込みたいところがあったが、面倒臭そうだったのでやめといた。

 しかし紫電はポジティブだなあ。

 でも、もし……もし、キルンベルガーを倒せたら……。お兄ちゃんもいるし、少しはまともに戦えるかな?

 …………よし!


「目指すはキルンベルガーの首ただ1つ!」

「お――――――――っ!!」

「お、おいお前ら! キルンベルガーがどれだけ強いか知らないだろう! 伝承によると……!」

「大丈夫! いきなりそんな大ボスが出てくるわけないし。それに旅をする間にゲートがまた開くかも知れないじゃない? 紫電みたいにスペルの素養がある仲間も増えるかも! どのみちキルンベルガーを倒さないと平和にならないんでしょ?」

「そんなにうまく、」

「いくいく! 絶対うまくいく!」


 お兄ちゃんは、その自信はどこから湧いてくるんだあ~、と妄言もうげんを吐いていたが、僕は本気の本気だった。

 神界に帰るには旅を続け、死神族を倒していくしか考えつかなかったからだ。


「まあ……旅をしてれば私が元の姿に戻る薬が見つからんとも限らんか……」

「そーそー!」

「……ふぁ……ねむ…………」

「あら紫電。もう寝る?」

「うん……だって夜の12時過ぎてるんだよ?」


 紫電はそう言うと、スマホの時刻を見せてきた。ホントだ。時が経つのはあっという間だ。

 今日も色んなことがあったなあ。

 さて……問題が1つ。

 毛布が1枚しかないんだよね。

 紫電は死にかけたし、傷は塞がっても出血の痕が色濃く残っている。消耗しているだろうからここは紫電に毛布を……。

 すると紫電は毛布を広げ、


「はい、英星。一緒に入ろう」


 と自らはその片方にくるまり、もう片方のスペースを差し出してきた。


「え、えええ、え?」

「い、嫌だった……?」

「め、滅相もないですうううぅ! 入らせて頂きますうううぅぅ!」

「コラコラ紫電、お前! 2日連続で私の妹に手を出す気か!」

「え? 弟でしょ?」

「そうだった! 弟!」

「昨日の夜だって英星とは一緒に寝たよ?」

「あんまり一緒に寝たとか言わんでくれ」

「なんで?」

「なんででも! この世には不文律というものがあるのだよ」

「もう! お兄ちゃんったら! 僕なら大丈夫だってば。紫電が僕を襲ったりするわけないでしょ? むしろ僕は襲う側だし」

「お前まで襲うとかいう言葉を遣うなあッ! あ~いかん! 変な想像が……!」


 ――もうその辺の虫は寝ている時間だ。安眠妨害で訴えられないか心配だよ。


「じゃ、英星一緒に寝よ!」

「はーい! じゃ、お兄ちゃんは1人寂しくおやすみなさーい!」

「うう……最愛の弟を返せえ……!」


 まだなんか言っているけど、無視無視!

 紫電が開けてくれているもう半分に包まる。顔を見ると、もう既にウトウトしていた。まぶたが半分しか開いていない。

 紫電の眠たそうな顔……カワイイなあ。

 間もなく紫電は眠りに落ち、すうすうと無防備な寝息をたて始めた。

 よし、今なら紫電は無抵抗! さっそく襲ってやろ……う…………?

 ――あれ? なんか……僕も眠たい……続きは……また……今度…………。



―――



 どれぐらい寝ただろうか。

 僕は紫電のうなされる声で目を覚ました。スマホの時刻を見ると、4時を回っている。


「パパぁ……待ってよパパぁ……! 独りに……しないで……よぉ…………!」


 ――――あの糞親父の夢……か。

 ああ……紫電も帰る所が無くなっちゃったのに、ずっと励ましてくれていたんだね……。

 僕、自分が帰ることしか考えてなかったな……。


「大丈夫だよ、紫電」


 語りかけて、額の汗を優しく拭う。

 春の肌寒い夜が明けようとしていた。



心優しい英星。


次回もお楽しみに!

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