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川上英星は穴だらけ!  作者: タテワキ
《第2章》 追放、そして……
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死を司る王

今回はお兄ちゃん成分が多めらしい……?

 僕は紫電しでんに話した。ソラが実は雷星らいせいお兄ちゃんだったこと。

 そのお兄ちゃんがデューク・フィレゾーを丁か半かで何とか追い払ったこと。

 そして、紫電の大怪我もスペルで治してくれたこと――――――――。


「…………てなことが紫電が死にかけてた間に起こったの。解った?」

「いてててて……さっき星を通り越して銀河が見えたよ……」

「こらー! 先生の話はちゃんと聴く!」

「あてっ!」


 紫電に英星えいせい先生の投げたチョークが命中し、のけ反る。これを起点に連続コンボに繋いでやろうか。


「英星! いつの間に学校の教師の職を得てるんだよ! てか、ここどこの学校?」

「焦げて丸禿まるはげの森小学校」

「……うーん、もっとマシな名前を付けてやろうよ。あれ? ひょっとして英星、この森のこと……」

「うふふ、吹っ切れちゃった」

「………………」


 お兄ちゃんは僕を瞬き1つせずにじっと凝視する。

 うん……そうなんだよね。ホントは想い出の森がこんなにズタボロになって、まだ結構引きずっているんだよ……。

 お兄ちゃんにはすぐバレる。生まれた頃から付き合いが長いからなあ。

 ――ま、紫電にはバレなかっただろう。


「……英星、悲しい時は無理しないで。大丈夫だよ。ボクも想い出の森がこんなになってまだ悲しいし。悲しい時は無理しない。……約束ね!」


 ……まるで爆弾でも爆発したかのように。「ぼんっ!」と音を立ててときめきが一気に沸点に達した。

 僕は頬、耳、首……全身を真っ赤に染めて、目をゆっくりと閉じる。

 一面に広がるコスモスのお花畑の中、僕と紫電が笑いながら追いかけっこしている。


    待ってよー英星ーっ!

    あはははっ! 紫電! こっちにいらっしゃい! きゃっ!

    英星っ! 危ない!

    あ……ありがとう紫電……つまづいちゃった。

    いいんだよ英星。ボクは……英星、君が欲しい。

    ああ……紫電……ずっとその言葉を待ってたよお…………。


「ぶっ!!」

「わああっ! 英星が鼻血を!」

「マセてんなこの神は……」

「え、英星どうしたの? 大丈夫?」

「紫電~、こんな所で告白なんてえ~……大胆なんだからあ~……」

「英星。お前血まみれだぞ」

「こ、こくはく……? 英星、ボクたち男同士だよ? ねえ雷星どうしよう! 英星がおかしくなっちゃった!」

「こいつはもとから色々おかしいんだよ」

「だ、だめえ……僕らまだ子供だよお……紫電……」

「英星? 目を覚まして英星!」

「し、紫電! こんな所で! ぼ、僕まだ心の準備が……! あんっ! 何するの!」

「しょうがないな……。紫電、お前の木刀貸せ」

「い、いいけど……?」


 木魚を叩いたような音と、後頭部に走る激痛で僕は我に返った。


「あいったぁ――――――ッ! なんてことすんの馬鹿兄貴!」


 なんか遠い世界で夢のような気分に浸っていた気がする。


「大丈夫……英星?」

「いたい……いたいよお紫電……お兄ちゃんがいじめるよお……」

「安心しろ。お前の頭は頑丈にできとる。ちょっとやそっとでは壊れん!」

「それどういう意味ー? って、あれ? なんで僕こんなに鼻血出てるの?」

「いやいやいや! 本当に覚えてないの? 英星……」


 紫電が半ば呆れ顔で尋ねる。


「うん。ま、まさか死神族がまだどこかに潜んでて、そいつらの攻撃かも!」

「じゃあそういうことにしといてやるよ」


 死神族に身構える僕に、お兄ちゃんは面倒臭そうに溜息ためいきをついた。



―――



 ……気を取り直して。


「ねえ、お兄ちゃんはなんで僕の使い魔に化けようと思ったの?」


 鼻にティッシュペーパーを詰めてお兄ちゃんにく。


「そりゃあ、お前が心配だからに決まってるだろう。最愛のいもう……弟が人間界をたった1人で見学するんだ。竜化の秘薬を飲んで、使い魔に志願した」

「へえー、竜化の秘薬ねえ。あれ結構いいお値段したような」

「そう。竜化すると声も変化するんだよ。英星も気付かなかったようだな」

「お兄ちゃん」

「なんだい?」

「今しがた僕の疑問が華麗にスルーされたけど、以前僕の部屋の貯金箱が勝手に割られてたんだよね。で、中身が竜化の秘薬分ぐらい無くなっちゃってた」

「ありゃりゃ……そんなことが」

「その犯人が今すごく近くにいる気がするんだ」

「はっはっは。気のせいだろ」

「ひょっとすると目の前かも」

「明日も早いんだ。早く寝るぞ」

「この泥棒鳥――――――――ッ!」

「ギャ――――――――――ッ!!」

「英星! ストップストップ――――――ッ!」


 紫電が僕の腕を押さえて《ブラッディキャノン》の発動をなんとか止めたおかげで、僕は実兄を手にかけずにすんだ。


「だってあれ高いんだもん! 私の安月給じゃ家賃食費、それから光熱費で全部無くなるんだぜ!」

「知るかっ! 日頃から散財しすぎなんだよっ! てか、あのデススライム戦ではどうして逃げたの! あれぐらいお兄ちゃんなら……!」

「初めて見る死神族にビビったの! さっきはお前の危機でなんとか勇気を振り絞った」

「シスコ……じゃない、ブラコンかよ……」

「しかもだな……」

「えっ! まだなんかやらかしたの?」

「元の姿に戻る薬買い忘れた」

「………………愚か者」

「まあ神界に帰るまではこの姿だな! でも、死神族に関する少し気になる情報も仕入れて来たんだぞ? 死神族が多すぎると思わんか? 最近」


 確かにそれは僕も気になるところだった。人間界がこんなに物騒だったなんて聞いてない。デススライムといい、ヌン・ヌヌヌンの間抜けといい、存在自体がおかしすぎる。デューク・フィレゾーきゅんなんて、冒険序盤でラスボスが出てきたような場違いな強さだったし。


「いいか? これは私がある使い魔から聞いた話なんだが……死神族の王、アクセル・キルンベルガーが復活したのを見た奴がいるらしいんだ」



またスゴそうな名前が出てきた!


次回もお楽しみに!

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